舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第16章

第151話 メロディー

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 ソファにある皿を退かし、ルゥラをその上に寝かせる。毛布を取ってきて彼女の上にかけた。ルゥラは無表情で眠っている。生気をなくしたわけではないが、単に安らかに眠っているとも形容できそうになかった。

 ルゥラを襲ったルンルンという少女を、フィルは知っているようだ。彼によれば、ルンルンは物の怪に憑依し、その力を勝手に使ってしまうらしい。ルゥラの場合、皿を生み出すことができたから、街に皿が散乱されることになった。しかし、範囲は以前よりは広くない。以前は学校を中心としていたが、今回は月夜の自宅を中心にして、より狭い範囲に多量の皿が散乱された。効果が局所的なのは、ルゥラが自宅に留まっていたからだろう。

 フィルの話によれば、彼が小夜を庇って物の怪となった際、ルンルンと対面したことがあるらしい。彼女は常に物の怪を狙っている。その力を自分のために使おうとする。しかし、力を乱用することが、どのような形で彼女の利益になるのか定かではない。ただ単に暴れたいだけかもしれない。デマを拡散するのと同じような感情だろうか。

「最初に会ったときは、あいつが何者なのか知らなかった」ルゥラの傍に行儀良く座ったまま、フィルが言った。「あとであいつがそういう性質のものだと知った。俺が物の怪になったとき、あいつは俺に憑依しようとした。だが、どうやら上手くいかなかったみたいだ。俺がまだ不安定だったからだろう。今回の件が、彼女にとって何度目なのかは分からないが、ルゥラに対しては、ずっと機会を窺っていたんだろう」

「小夜も彼女を知っているの?」

「おそらく」フィルは小さく頷く。「あいつは物の怪が関する現象を察知できる。だが、すべてを把握することはできない。ルンルンは、いつもどこからともなく現れ、またどこかへと消えていく。小夜に分かるのはその予兆だけだ」

 解釈。

 理解。

 小夜が自分に忠告したのは、その予兆を察知していたからだろうか?

「ルゥラは、平気かな?」月夜は誰にともなく尋ねる。ここには自分のほかにフィルしかいないので、その問いは彼にしか伝わらない。

「平気ではないだろうが、平気だろう」

「きちんと、目を覚ましてくれるかな?」

「寝すぎると、目やにで目が開かなくなるかもな」
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