161 / 255
第16章
第160話 跳獣
しおりを挟む
二人並んでドーナツを囓る。ドラマなどでそういうシーンがあるらしい。警察の上下関係にある二人が、捜査に行き詰まったとき立ちながら何かを食べるのだ。大抵の場合、人がいない海辺のことが多い。潮風に晒されることで干物となり、余計な考えを排除しようという魂胆かもしれない。
「ところでさ、月夜」ルゥラが声をかけてきた。
「何?」
「私、いつまでこの家にいていいの?」
ルゥラに問われ、そういえば具体的なことを話していなかったな、と月夜は気がついた。しかし、今さらどうこうしようという気も起らない。
「いつまででもいいけど」月夜は相応と思われる回答を口にした。
「でも、なんだか迷惑かけてる気がする」
「うちから出て行って、行く宛てはあるの?」
「うーん、今のところない」ルゥラはドーナツを食む。完全に飲み込まない内から言葉を話す。「下に川があるから、あそこでなら暮らせそう」
「ルゥラはご飯を食べる必要はないの?」
「必要? うーん、必要はないかもしれないけど……。でも、食べていいなら食べたいなあ。美味しいし」
「川で暮らす場合、何を食べるの?」
「もちろん、魚」
「食べられる種類がいるか分からない」
「うーん、魚なら何でも食べられると思うけど」ルゥラはジェスチャーを駆使して空中に魚の形を作る。「この前覗いたらね、こんなに大きなのが泳いでたんだ。あれを捕まえて食べたら、もうその日一日お腹いっぱいだよね」
「毎日魚だけ食べるの?」
「うーん……」ルゥラは黙り込んでしまう。「……たまには、ほかのものも食べたいかも」
「雑草にも、食べられるものがあるらしい」月夜は言った。「生で食べられるのかは分からないけど。お腹を壊してもいいなら、きっと食べられる」
「エビフライがいいな」
「エビフライ?」
「川の中にエビフライが泳いでいないかな?」
月夜はその様を想像する。冷静に考えてそれはないだろうと思った。
「泳いでいない」
「当たり前じゃん」ルゥラは笑い出す。「そのくらい、私にも分かるよ」
「じゃあ、どうして尋ねたの?」
「え、だって、月夜が面白がるかなと思って」
なるほど、今のは面白がるところだったのか、と月夜は納得した。面白いとは感じたが、面白がるところまで発展しなかった。
「面白がるというのは、どうやるの?」
「え? どうやるって……」
「お腹にポケットを作るとか?」
「は?」
「ところでさ、月夜」ルゥラが声をかけてきた。
「何?」
「私、いつまでこの家にいていいの?」
ルゥラに問われ、そういえば具体的なことを話していなかったな、と月夜は気がついた。しかし、今さらどうこうしようという気も起らない。
「いつまででもいいけど」月夜は相応と思われる回答を口にした。
「でも、なんだか迷惑かけてる気がする」
「うちから出て行って、行く宛てはあるの?」
「うーん、今のところない」ルゥラはドーナツを食む。完全に飲み込まない内から言葉を話す。「下に川があるから、あそこでなら暮らせそう」
「ルゥラはご飯を食べる必要はないの?」
「必要? うーん、必要はないかもしれないけど……。でも、食べていいなら食べたいなあ。美味しいし」
「川で暮らす場合、何を食べるの?」
「もちろん、魚」
「食べられる種類がいるか分からない」
「うーん、魚なら何でも食べられると思うけど」ルゥラはジェスチャーを駆使して空中に魚の形を作る。「この前覗いたらね、こんなに大きなのが泳いでたんだ。あれを捕まえて食べたら、もうその日一日お腹いっぱいだよね」
「毎日魚だけ食べるの?」
「うーん……」ルゥラは黙り込んでしまう。「……たまには、ほかのものも食べたいかも」
「雑草にも、食べられるものがあるらしい」月夜は言った。「生で食べられるのかは分からないけど。お腹を壊してもいいなら、きっと食べられる」
「エビフライがいいな」
「エビフライ?」
「川の中にエビフライが泳いでいないかな?」
月夜はその様を想像する。冷静に考えてそれはないだろうと思った。
「泳いでいない」
「当たり前じゃん」ルゥラは笑い出す。「そのくらい、私にも分かるよ」
「じゃあ、どうして尋ねたの?」
「え、だって、月夜が面白がるかなと思って」
なるほど、今のは面白がるところだったのか、と月夜は納得した。面白いとは感じたが、面白がるところまで発展しなかった。
「面白がるというのは、どうやるの?」
「え? どうやるって……」
「お腹にポケットを作るとか?」
「は?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる