舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第17章

第161話 干渉??

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 あっという間に時間は過ぎなかった。

 暫く学校を休む日が続いた。ルゥラを家に一人で置いておけないと判断したからだ。しかし、ルゥラは月夜の判断が不満だったようで、最初の内は顔を合わせる度に文句を言われた。理屈を説明しても理解してもらえない。こういうとき、何も伝えられる術がないことを実感する。

 言葉は何も解決しないと言われるが、それも言葉であり、言葉がなければ、言葉は何も解決しないということさえ言えない。

 数日が経過すると、ルゥラの体調は良くなり、それと並行して文句も言わなくなった。体調が良くなることと、文句を言わなくなることが、相関関係にあるわけではないだろう。単純に両者とも時間が解決する類の問題というだけだ。

 まだルゥラが朝食を作る日常は戻ってきていない。代わりに月夜が何か食べ物を作る日々が続いていた。彼女はあまり料理をしないが、まったくできないわけではない。当然ルゥラには劣る。けれど、ルゥラは月夜が作った料理を毎回笑顔で食べてくれた。

「今日も美味しいよ、月夜」スプーンを掲げてルゥラがサインする。

「私が?」

「いや、この料理が」

 月夜の自室も大分片づいた。フィルが皿を食べてくれたからだ。しかし、自宅の周囲に散乱された皿はまだ片づいていない。部屋も床や壁に傷が付いたままだった。傷が付いていても大して問題にならないが、違和感があるといえばある。正常な部屋の姿が頭の中に理想像として居座っているからだろう。

「フィルも何か食べる?」月夜は彼に尋ねる。

「そうだな。皿のオーブン焼きとか、皿の卵綴じなんか食べてみたいな」

「じゃあ、私が作ってあげようか?」目をきらきら光らせてルゥラが言う。

「いや、結構」フィルは首を振った。

「何も食べない?」月夜が尋ねる。

「今はいらない」

 小夜はどうしているだろうか。最近彼女には会っていない。しかし会っていない状態が続くのが日常だ。会わないと少々恋しく感じられるが、それが物理世界に存在する人間の本来の姿だと思われる。

 ……いや、そんなことはないか。

 通信技術も物理の法則を利用している。

 では、会うのと、会わないのとの違いは、いったい何か?

 どこにいても、空気を媒介して繋がっているはずだ。

 会うことで何が変わるのだろう?

「ねえ、月夜。今日さ、ピクニックに行こうよ」唐突にルゥラが言った。

「ピクニック? どうして?」

「なんとなく」ルゥラは笑った。「いいお天気だから」
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