舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第19章

第187話 混在する人工と屹立する自然

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 川に差しかかった。この川は月夜の自宅の傍からずっと続くものだ。傍というのは、何かと便利な言葉だが、やはり明確に定義されていない。使用する場面ごとに定義されることが想定されているからだろう。

 川は人工的に整地されてはいるが、申し訳程度の処置で、まだ、いわゆる「自然」の状態として残っているように見える。流れる水は綺麗だったし、所々で水面に表出した岩は規則的な断面を持っていなかった。向こう岸には竹や柳が立っている。その向こうには山が広がっていた。ただし、月夜の自宅の傍にある山に比べれば小規模だ。

 皿は川より一つ上の層に設けられた道の上に続いている。ただし、数が疎らになりつつあった。どうしてかは分からない。ルゥラの能力が限界に近づいたからだろうか。

「電線が通っていないな」

 フィルのコメントを受けて、月夜は顔を上に向ける。たしかに、川の付近には電線が巡っていなかった。もちろん電柱もない。しかし、それがどうしたというのだろうか。

「それがどうしたの?」月夜はその通りの質問をする。

「別にどうもしないが」フィルは言った。「単なる気づきにすぎない」

 皿は途中で道を逸れていた。どういうふうに逸れていたかというと、柵の向こう側に続くように逸れている。つまり、ここにきて、本来道でない場所を通るようになったということだ。何らかの意図が感じられるが、それがルゥラの意図なのか、それとももっと別の何かの意図なのかは分からない。

 ……もっと別の何か?

 何かとは何だ?

 自分が今抱いているこの違和感は、何だろう?

「おそらく、皿の配列の仕方が、ルゥラのそれとは違うことに起因するものだろう」月夜の腕の中で首をころころさせながら、フィルがコメントした。なお、彼はもう歩きたくないらしい。起きてすぐに歩いたことで、通常の五千倍ほど疲れたとのことだ。「お前は以前からそれに気がついていたが、自覚することがなかった。事象は確かに見えていて、それは情報として脳で処理されていたが、それだけでは意味がない。通常の脳の機能を超えた何かによって、それに確固たる意味が与えられなければ、それはその者にとって存在しないのと同じだ。どうやら、人はそういうシステムのもとに成り立っているらしい。勉強と同じだな」

「最後の、勉強と同じ、というのは、勉強と、何が、同じなの?」

「その、一連のプロセスが」

 月夜はフィルを抱き締める力を強めた。

「分かりにくい」
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