舞台装置は闇の中

羽上帆樽

文字の大きさ
207 / 255
第21章

第205話 蒼昼画

しおりを挟む
 昼休みになって、月夜は珍しく校舎の外に出た。校舎の外に出るというのは、アスファルトの地面を踏む状態になるということだ。渡り廊下も外気に晒されているが、それを校舎の外に出る、と表現できるかは怪しい。昼休み中に渡り廊下に向かうことは、今までに何度かあった。

 校舎を囲むようにして道が続いているから、なんとなくその道を歩く。昇降口を出て階段を下りると、前方に駐車スペースがあり、左手に小規模な池がある。池がある方から反時計回りに道を進んだ。

 正午を過ぎた頃だから、今は日差しがかなり強い。片手で庇を作って空を見上げると、視界が一気に白一色で覆われた。慌てて目を細める。暫くすると、その光にも慣れてきて、青と、光のものではない白のコントラストが、よく見えるようになった。

 暑さに身体が蒸発して、空まで届くのではないか、という気がしてくる。

 いや、それは気ではないか。

 そう思おうとして、そう思ったに違いない。

 風情が感じられる前提で詩を読むのと同じだろう。

 顔を前方に戻して再び歩き始める。左手に校舎の白い壁。前方に裏門の黒い柵。裏門の向こう側には電車の整備を行う施設があり、敷地内には線路が巡らされている。当然、その線路は道路を横断し、そのさらに向こう側にある本物の線路へと続いている。

 後ろから幾人の生徒が駆けてきて、声を上げながら月夜の傍を走り抜けていった。夏なのに、元気だな、と月夜は思う。冬でも同じことを思っただろうが。

 アスファルトの亀裂から、緑色の小さな芽が生えていた。月夜はその場にしゃがみ込み、生暖かい風に吹かれて揺れる双葉に手を触れる。まだ深みがかかった緑ではなく、黄色や白が混じった色をしていた。厚いために葉に通う脈は見えない。

 亀裂からその芽を抜いてしまいたい衝動に駆られたが、踏み留まった。踏み留まるために大した労力は必要ない。この種の衝動は度々生じるものだから慣れていた。自分以外の者にも生じるのか、確認したことはないが、ある程度根源的な感覚ではないかと月夜は考えている。

 ものを壊すことで得られるものがある。

 当然、壊す、の中には、殺す、も含まれる。

 生き物もものの内だ。

 もちろん、人間も。

 意図を持ってものを壊すのは人間だけだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...