せめて夢の中は君と幸せになりたい

Ringo

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新season前にざまぁ(読み飛ばしても無問題)

sideトレーシア -ざまぁ 1/4-

※トレーシアのざまぁです。

※ホラー夫人と有難い愛称も頂くほどの人物であり、反省??これっぽっちも致しません。だって悪いことしたと思ってないから。

※お読み頂かなくとも、繋がります。

※ホラー夫人なんてやっちまいな!!と言う方のみ、スクロールしてください。





─────────────────────






私は誰からも愛されるお姫様。

みんなが私と一緒にいたくて競い合うの。






******






「いやぁぁぁぁぁ!!」


もう何度目なのか…何日目なのか分からない。

黴臭く湿った部屋の中、しなる音と共に鞭が容赦なく振り下ろされる。

もう傷のない箇所を探す方が困難なほどに痛めつけられ、その傷は治療などされない。

まるで切り裂かれるような鞭打つ痛みから解放されれば、そのあとに待つのは焼けるような痛みと苦しみ。

鞭打たれる時に気を失うことは許されず、少しでも目を瞑れば熱した鉄棒を押し付けられる。

どうして…どうして……

私はただ、愛するバルト様と結ばれたくて…結ばれるはずだったのに…それなのに……


「いぎゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」


「今日はここまでにしておくか」
「そうだな、殺すなと言われているし」


全身が焼ききれるように痛いのに…ズルズルと引きずられて、放り投げるようにして牢に戻らされると、私はそのまま倒れこんだ。


「次は三日後だ、死ぬなよ」


鞭打っていた男達は乾いた感情のない声でそれだけを言うと去っていったけれど、その言葉が正しくないと言うことを私は知っている。

日に何度も打たれる事もあれば、一日二日と間が空くこともあって…まるで男達の気紛れで決められているようだ。

助けて…


「……バ…ト…さま……」

「へぇ…まだ諦めてないんだ?」


突如聞こえてきた声に、痛みで動かない体はそのまま視線だけをのろのろと向けると…そこにいたのは…かつて私の心を占めていた人。


「あ……あ…」

「叫びすぎて枯れちゃった?」

「ジェ────」

「気安く俺の名前を呼ぶなと言ったよな?」


氷のように冷たい瞳が向けられて、急に寒気がして体が震えた。

助けに来てくれたんじゃないの?

やっぱり私のことを愛しているから……


「言っておくが、お前を助けに来たなど勘違いを起こすなよ?お前など、さっさと死ねばいいとしか思っていない」

「そん…な………」

「俺はいっそのこと首を刎ねてしまいたいんだけど、我が愛しの妻プリシラが、そんな生ぬるい刑罰では納得してくれなくてね」


その名前にカッとなった。

私の愛する人を奪った憎き女…王女の肩書きと権力を使って、ジェイド様を縛り付けて無理やり結婚した稀代の悪女。

私を癒し愛してくれたバルト様と引き裂いた、魔女のような醜女。


「お前が好き勝手やれていたのは、王弟殿下が後ろ楯になっていたからだ。その後ろ楯を失ってもなお、お前は愚かな思い込みの妄執、妄言を繰り返した」


……なんのこと…妄執…?……妄言……?…


「お前を愛していた者など誰一人いなかったと言うのに…目が合えば愛を囁かれたと言い、社交辞令の笑みを向けられれば求婚されたと言う。そしてそんなお前の妄言の後始末をしていたのが王弟で…口を噤めと圧力をかけた」


何を言っているのか分からない。

私はそんな勘違いなんてしていない…多くの男性が私を求めて…私を愛してると求めて……


「実際にお前に愛を囁いたのは、都合よく若い女を抱きたいと望んだ者だけだろう。その証拠に、寝台の上以外で囁かれたことはあるか?その相手がお前をエスコートしてくれたか?」

「そん……な…こと……」

「お前に贈り物をしてくれたか?傾いた実家の援助をしようと申し出てくれたか?」


そんなものなくたって……みんな私を……


「常に他人のものを欲しがり、体を重ねることで優位に立ったつもりになって気分はよかったか?」


私を求め欲しがったのは、私の方を愛していたからよ…傍に置いている女なんかより…私を……


「そんな中でも、お前が起こす面倒ごとに頭を下げてくれていた者がいたはずなのにな。その者だけを愛し、その者との未来だけを願えば良かったものを…お前ほど酷い女は見たことがない」


なんのこと…

私はただバルト様の…彼の子供が欲しくて…

彼の妻になりたかっただけよ……


「わた…しは……バルトさま…と……」

「彼がお前を愛するわけないだろう?誰よりも夫人を愛している。俺がプリシラを愛するように」

「そんな…こと……」

「王弟はさぞ楽しかったのだろうな。娘ほどに年の離れた女の体を自分好みに仕立てあげ、本能のままに男を追い求めるお前を煽り続け、問題が明るみになれば権力を使い捩じ伏せる。男を篭絡する為に経験が必要だからと何度も体を重ね、勉強になるからと年かさの男の相手もさせ…その見返りに美味しい思いをしていたのだから」


そんなの…親しくなる為には…体を重ねて深い関係になるのが一番効率的に決まってるじゃない…

体を許して何がいけないのよ…


「お前が俺に纏わりついた時、プリシラに捨てられてしまうんじゃないかと焦りもした。まぁ、俺にそんな気もつもりもないと信じてくれていたから問題はなかったが。俺は昔からプリシラだけを愛していたんだ。漸く結婚まで結びつけたのに…それを台無しにされていたら、俺がその場でお前を殺していただろうよ」


そんなの知らない…

だってジェイド様とあの女は政略結婚で……


「プリシラと結婚する為に、俺がどれだけの努力を積み重ねてきたと思う?本当に愛する女の為なら、男はどんな困難にも立ち向かうんだ。お前の為にそうしてくれた奴などいないだろうがな」


私の為の努力……


「お前が愛し合っていると妄言を吐くモリス子爵も、夫人を守るために、夫人との未来のために出来うる限りの努力をして…結果、お前は牢の中というわけだ」

「彼は…わたしの……」

「あぁ、そうそう。今回の件に加えてお前の夫殺しの件も解決に導いたとして、モリス子爵は近く伯爵となる。モリス子爵夫人は、伯爵夫人だ」


あの女っ……平民のくせにどこまで…


「ひとつ、希望を与えてやろう」

「な…に……」

「お前の鞭打ちは残り160回だから、恐らく三日とかからず終わるはずだ。その後、最後に毒杯を呷っておしまいだ」

「ど……く…」

「新しい毒杯が開発されたそうで、その効果と反応を見たいらしい。よかったな、最後の最後で人様の役に立てるぞ」


そこで見せた優美な笑みに、思わず心がときめいたのに…その笑みはすぐに封じられ、代わりに見せてくれたのは冷徹なもの……


「ところで……お前を鞭打つ役目を担っているのは、かつてお前のせいで心を壊された令嬢を婚約者に持っていた者達だが、気付いていたか?」

「……え……………」

「彼らは婚約者を深く愛していた。だが、お前の妄執に抵抗し続けるも振り回され…挙げ句、妄言により心を乱し壊された令嬢に婚約解消をされた者達だ。彼らは未だ誰とも結婚していないが、令嬢達の中には別の男の元へ嫁いだ者もいるし、立ち直れず修道院に入った者もいる」

「…なん…はなしを……」

「深く愛していたからこそ、自分の手で幸せに出来なかったこと…守りきれなかったことを悔いているし、強い想いが未だあるからこそ、自分ではない男の元へ嫁いだ事に苦しんでもいる。それでも彼らは言うんだ…『生きてくれている』と」


不意に…ひとりの男性の顔が浮かんだ……


「彼らは容赦などしない。お前に出来るのは、せめて彼らの鬱積した思いを晴らさせてやることだけだ。それも僅かにしか晴れないだろうがな」

「まっ……て…………」

「あぁ、そうそう。お前の子供は幾つかの国で戸籍を洗いながら養子へ出される。二度とこの国に戻ることはない」


言いたいことは言ったと最後に綺麗な笑みを浮かべて……振り向くことなく去っていった。






******






教えられたとして数えることなど出来なかった鞭打ちの終わりを告げられ、暫しの時を置いてゾロゾロと人がやってきて…何やら話をしている…


「これは今までのように徐々に意識を奪うようなタイプではなく、飲み干した途端に喉や内臓に焼けるような痛みを与え、同時に強烈な痒みを齎すようになっています」

「それはつまり…苦しいのね?」


聞いたことのある声に視線を動かせば、そこにはジェイド様に腰を抱かれた…魔女……


「痛くて痒いのに手も出せないなんて…なんて可哀想なのかしら」

「プリシラは優しいね」


私が痛みで動けないというのに…私のジェイド様を誑かすなんて……許せない…


「液薬が流れ通る箇所が焼かれ痒みを生み出したあとは、一刻ほどかけて内臓を腐らせ、やがてその毒は全身に浸透していきます」

「その際も痛くて痒いんですの?」

「そうなりますな…まぁ、その効果を今回で確認したいといったところです」


グイッと顔を持ち上げられ、細い吸い口を咥えさせられた瞬間……液体が流し込まれた


「…っ…が…ぁ゛っ……ぁ゛、、ぁ゛ぁ゛っ!」


喉が……液体が流れる場所が……


「ぁ゛、ぁ゛ぁ゛…っ、、ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


痛いっ……痛い……っ…


「間もなく強烈な痒みがくるはずです」


眼鏡をかけた男がそう言いながら、懐中時計を片手に何か書き込んでいて……


「ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!」


痒い!痒い痒い痒い痒い痒い!!!

中がっ……中が熱くて痒いのにっ……!!


「予定通りですね。今後、配合を調整して痛みと痒みの割合を変えてみます」


人が苦しんでいるのに、男は淡々と話しているだけで……その近くに…知らない男女がいて……


「この女は…死んだあとどうなるんですか…?」

「そうねぇ…実家はなくなってしまったし、一族も爵位を譲ったり返上して引き取りを拒否しているから……焼こうかしら」

「プリシラ、楽しそうだね」

「この女は人の命や未来を奪いすぎたのよ。それがひとりであろうと許されないのに、自分勝手に思うままに人を陥れてきた…その罪は重いわ」


焼く……?…焼くってなに……

私は伯爵令嬢だったのよ!

男爵夫人で…モリス子爵夫人になるのよ!!


「ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!」

「……まだ愚かなことを考えていそうだわ」

「死んでも懲りなさそうだね」


何故…何故、苦しむ私の前で…そんな風に腰を抱いて……頬に口付けなんて…


「触るな」


必死で伸ばした手は蹴り飛ばされ…初めて見る男女の四人は……どうして…まるで汚物でも見るような目で…私のことを……


「私達の事など覚えてもいないのだろう…だが私達はお前の事を忘れたことはなかった。お前のせいで……私達の息子や…レイシー嬢は……っ」

「あんたみたいな人間は…っ……地獄に落ちればいいのよ!二度と生まれてこないで!!」

「お前が死んで焼き尽くしたら…そのまま踏みつけてあとかたなく消してやる……っ…」

「あんたが…あんたさえいなければ!!」


…なに……なんのこと…


「間もなく、全身に毒が回り始める頃合いです」

「ぁ゛……ぁ゛ぁ゛……ぁ゛…………」


もう…分からない……

何がいけなかったの…

どうして…ジェイド様は……バルト様は…私を助けてくれないの……

私を愛していたじゃない……

私は…バルト様と結婚して…沢山子供を生んで…

たくさんの人に愛されて……求められるの…

私は……



私はみんなの………………








「──────死亡を確認致しました」

「そう…それじゃぁ、予定していた場所へ移送してちょうだい。そこで焼くわ」

「畏まりました」









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