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第2章 動く運命の前兆
第8話 灸を据えて
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「どっからでもかかってこい。世間知らずのガキどもが」
店の外に出た俺は難癖をつけてきた三人の冒険者を挑発し、先に手を出させるように仕向ける。
丁度いい機会だったので、この二年間で俺が身に着けた……いや、あるいは思い出した格闘術の試し打ちをすることにした。
「な、舐めやがってぇ! オラァアア!」
まず一人目が素手で殴りかかってきた。俺は両手の拳を顔のあたりまで上げて体の力を抜き、軽くステップを交えて難なく躱す。相手は続けざまにこちらの顔面狙いでパンチを何度も放ってくるが、俺は上体を後ろに下げたり屈ませたりしてすべて躱しきる。何度もパンチが空を切ることへの苛立ちと疲れが相手に見え始める。
「ん? どうした? 一発も当たってないし、俺はまだ一発も殴ってすらいないぜ?」
「ち、ちくしょお! なんなんだよ、このおっさん!?」
怒り任せに大きく振りかぶった拳を俺目がけて振り下ろしてくる。実に単調な攻撃だ。店では偉そうにしてたくせにまるで大したことがない。
「このスタイルでのウォーミングアップは終わりでいいか」
そう言って俺は相手のパンチを躱し際に左ボディブローを一撃打ち込む。たったの一撃だったが、食らった相手は地面に膝をつき、腹を抑えて悶えている。
「てめえは基礎からなってねえな。まずは身体を作り直すところから始めろ」
「な!? 一撃だと!? このクソおやじ! 何か細工したんじゃねえだろうな!?」
俺の前に二人目が講義をしながら躍り出る。
「別に大したことしてねえよ。ただ、こいつの肝臓を狙って殴ったからな。当分は息をするのも苦しいだろうよ」
「カ、カンゾウ? 訳わかんねえこと言ってんじゃねえぞ!」
いきり立った二人目は長棒を構えてこちらに襲い掛かってきた。
「棒術か。こっちもスタイルを変えてみるか」
俺は先程のスタイルを解き、今度は拳は下段で体をずっしりと軸がぶれないように重く構える。
「ウラァア!」
「フン!」
横薙ぎされた長棒が俺の身体にあたりかけるが、それを腕を使ってガードする。頭目がけての振り下ろし、脛への足払いと打ち込み方を何度も変えてくるが、それら全てを腕と脚で完全に防御する。
「くそ! さっきは避けてばっかりだったくせに!」
「棒術はガードの練習にちょうどいいと思ったんでな。まあ、この程度の威力じゃ直撃しても大して痛くねえだろうが」
俺のその一言に切れてしまったのか、大きく振りかぶって最大の一撃を放とうとする。だが――
「攻撃が大振りすぎる。小技も身につけておくんだな」
相手の一撃が放たれるよりも前に俺の右上段蹴りが顔面に放たれる。その一撃で気を失ったのか、地面へと倒れこんでしまった。
「さて、残りは一人……」
「く、くそがぁああ!!」
最後の一人がやけくそとばかりにナイフを構えて俺の方へ突進してきた。
「おい。刃物はさすがに危ねえだろうが」
俺は最後の一人が持ったナイフを叩き落し、相手を仰向けにして俺の肩の上へと持ち上げる。
「は、離せ……!」
「さすがにガチで殺しに来た相手に容赦はしねえぞ」
持ち上げた相手の首と脚にかけていた両腕を一気に下ろす。相手は弓ぞりの姿勢になり、そのまま泡を吹きながら白目を剥いてしまった。
「……ったく。手間とらせやがって。肩慣らしにもなりゃしねえ」
最近の冒険者は数ばかりで質も品も落ちてきているような気がする。あまりにあっけなくぶっ倒れた若い冒険者三人を尻目に俺はイトーさんの店へと戻ろうとした。
パチ、パチ、パチ
「ん?」
「いやー、中々見事じゃん! 力の差がありすぎて全部の実力は見れなかったみたいじゃんけど、良いもの見せてもらったじゃん!」
俺に向かって拍手しながら、「じゃんじゃん」うるさい若造が俺のほうに向かってきた。なんだこいつは? 俺とこの三人の喧嘩を見てやがったのか?
「俺もゼロラさんの実力は噂通りじゃん。マジでステゴロの実力がパネーじゃんよ」
「なんで俺の名前を知ってるんだ? ……あと、もうちょっと分かりやすい言葉で話してくれ」
「ああ、すまないじゃん。ゼロラさんのことはさっき酒場で店の人に聞いたじゃん」
ああ、イトーさんの店にいた客の一人か。あそこで俺の噂を聞いたってことか。
「じゃあなんで俺の喧嘩を盗み見るような真似をしてたんだ?」
「実は俺も武闘家の端くれじゃんよ。武術の知識に関しては結構自信があって、ゼロラさんの戦い方にも興味があったじゃんよ。実際、ゼロラさんの武術は俺が知る武術の中にあるものも多かったじゃんよ」
俺の技を知っている? 俺が使った武術の数々は元々俺の身体が覚えていたものがほとんどだ。もし、その武術のルーツが分かれば俺の記憶を取り戻すヒントになるかもしれない。
「なあ、あんた悪いんだが、俺の武術について知ってる話を教えてくれねえか?」
「お? そっちから食いついてくるじゃん? まあ俺もゼロラさんとは色々語りたかったじゃんよ」
好都合だ。向こうも話したいことがあったなら丁度会話の種にもなる。俺も知らない俺のことを理解できるこの上ないチャンスだ。
「ところであんた、名前はなんて言うんだ?」
「ああ、俺ね。俺は、オレジャン」
まずこの若造の言ってる言葉の意味が理解できなかった。
店の外に出た俺は難癖をつけてきた三人の冒険者を挑発し、先に手を出させるように仕向ける。
丁度いい機会だったので、この二年間で俺が身に着けた……いや、あるいは思い出した格闘術の試し打ちをすることにした。
「な、舐めやがってぇ! オラァアア!」
まず一人目が素手で殴りかかってきた。俺は両手の拳を顔のあたりまで上げて体の力を抜き、軽くステップを交えて難なく躱す。相手は続けざまにこちらの顔面狙いでパンチを何度も放ってくるが、俺は上体を後ろに下げたり屈ませたりしてすべて躱しきる。何度もパンチが空を切ることへの苛立ちと疲れが相手に見え始める。
「ん? どうした? 一発も当たってないし、俺はまだ一発も殴ってすらいないぜ?」
「ち、ちくしょお! なんなんだよ、このおっさん!?」
怒り任せに大きく振りかぶった拳を俺目がけて振り下ろしてくる。実に単調な攻撃だ。店では偉そうにしてたくせにまるで大したことがない。
「このスタイルでのウォーミングアップは終わりでいいか」
そう言って俺は相手のパンチを躱し際に左ボディブローを一撃打ち込む。たったの一撃だったが、食らった相手は地面に膝をつき、腹を抑えて悶えている。
「てめえは基礎からなってねえな。まずは身体を作り直すところから始めろ」
「な!? 一撃だと!? このクソおやじ! 何か細工したんじゃねえだろうな!?」
俺の前に二人目が講義をしながら躍り出る。
「別に大したことしてねえよ。ただ、こいつの肝臓を狙って殴ったからな。当分は息をするのも苦しいだろうよ」
「カ、カンゾウ? 訳わかんねえこと言ってんじゃねえぞ!」
いきり立った二人目は長棒を構えてこちらに襲い掛かってきた。
「棒術か。こっちもスタイルを変えてみるか」
俺は先程のスタイルを解き、今度は拳は下段で体をずっしりと軸がぶれないように重く構える。
「ウラァア!」
「フン!」
横薙ぎされた長棒が俺の身体にあたりかけるが、それを腕を使ってガードする。頭目がけての振り下ろし、脛への足払いと打ち込み方を何度も変えてくるが、それら全てを腕と脚で完全に防御する。
「くそ! さっきは避けてばっかりだったくせに!」
「棒術はガードの練習にちょうどいいと思ったんでな。まあ、この程度の威力じゃ直撃しても大して痛くねえだろうが」
俺のその一言に切れてしまったのか、大きく振りかぶって最大の一撃を放とうとする。だが――
「攻撃が大振りすぎる。小技も身につけておくんだな」
相手の一撃が放たれるよりも前に俺の右上段蹴りが顔面に放たれる。その一撃で気を失ったのか、地面へと倒れこんでしまった。
「さて、残りは一人……」
「く、くそがぁああ!!」
最後の一人がやけくそとばかりにナイフを構えて俺の方へ突進してきた。
「おい。刃物はさすがに危ねえだろうが」
俺は最後の一人が持ったナイフを叩き落し、相手を仰向けにして俺の肩の上へと持ち上げる。
「は、離せ……!」
「さすがにガチで殺しに来た相手に容赦はしねえぞ」
持ち上げた相手の首と脚にかけていた両腕を一気に下ろす。相手は弓ぞりの姿勢になり、そのまま泡を吹きながら白目を剥いてしまった。
「……ったく。手間とらせやがって。肩慣らしにもなりゃしねえ」
最近の冒険者は数ばかりで質も品も落ちてきているような気がする。あまりにあっけなくぶっ倒れた若い冒険者三人を尻目に俺はイトーさんの店へと戻ろうとした。
パチ、パチ、パチ
「ん?」
「いやー、中々見事じゃん! 力の差がありすぎて全部の実力は見れなかったみたいじゃんけど、良いもの見せてもらったじゃん!」
俺に向かって拍手しながら、「じゃんじゃん」うるさい若造が俺のほうに向かってきた。なんだこいつは? 俺とこの三人の喧嘩を見てやがったのか?
「俺もゼロラさんの実力は噂通りじゃん。マジでステゴロの実力がパネーじゃんよ」
「なんで俺の名前を知ってるんだ? ……あと、もうちょっと分かりやすい言葉で話してくれ」
「ああ、すまないじゃん。ゼロラさんのことはさっき酒場で店の人に聞いたじゃん」
ああ、イトーさんの店にいた客の一人か。あそこで俺の噂を聞いたってことか。
「じゃあなんで俺の喧嘩を盗み見るような真似をしてたんだ?」
「実は俺も武闘家の端くれじゃんよ。武術の知識に関しては結構自信があって、ゼロラさんの戦い方にも興味があったじゃんよ。実際、ゼロラさんの武術は俺が知る武術の中にあるものも多かったじゃんよ」
俺の技を知っている? 俺が使った武術の数々は元々俺の身体が覚えていたものがほとんどだ。もし、その武術のルーツが分かれば俺の記憶を取り戻すヒントになるかもしれない。
「なあ、あんた悪いんだが、俺の武術について知ってる話を教えてくれねえか?」
「お? そっちから食いついてくるじゃん? まあ俺もゼロラさんとは色々語りたかったじゃんよ」
好都合だ。向こうも話したいことがあったなら丁度会話の種にもなる。俺も知らない俺のことを理解できるこの上ないチャンスだ。
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まずこの若造の言ってる言葉の意味が理解できなかった。
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