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第2章 動く運命の前兆
第11話 依頼主の元へ
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俺達三人は馬車を降りてセンビレッジの街中を歩いていた。ここセンビレッジはルクガイア王国内の流通の拠点であり、今最も栄えている街ともいえる。北のテコロン鉱山から希少な鉱石が運ばれ、南の港町ウォウサカは新鮮な魚や海外からの品々が運ばれており、市場はかなりの賑わいを見せている。
「それじゃあ私は買い物がありますので、ここで失礼します。あ! ゼロラさん! ちゃんとお弁当は食べてくださいね?」
「分かってるっての」
「ではボクも別行動といこうかな。折角センビレッジまで来たんだ。かわいい少年少女をナンパしてくるとしよう」
「いつもとやってることが変わらねえじゃねえか」
ある程度歩いたところで俺達三人はそれぞれ別行動をとることにする。俺も依頼主の屋敷に一人向かうことにした。
■
「何者だ? ここはルクガイア王国貴族、ドーマン男爵のお屋敷であるぞ」
「俺はゼロラってもんだ。ギルドマスターのイトーって男から話は聞いてるだろ? 依頼の打ち合わせに来た」
ドーマン男爵邸。センビレッジの片隅にある貴族の屋敷だ。センビレッジの統治を任されている貴族は別にいるのだが、ドーマン男爵はここに屋敷を構えて動こうとしないらしい。貴族社会のことはよく分からないが、統治権争いでもしているのだろう。
「ドーマン男爵の確認が取れました。どうぞ中へお入りください」
俺は衛兵に案内されて屋敷の中の応接室で待つように言われる。しばらくすると小太りで気に食わない目つきをした中年の男が応接室へ入ってきた。
「貴様がゼロラか。フン、汚れ仕事が似合いそうな低俗な男だ」
「ご評価いただき光栄だね。あんたがドーマン男爵だな?」
「いかにも。口も悪い男だ」
どうにも俺に依頼をしてくる貴族は嫌な奴が多い。貴族が全員こんな奴らばかりだとは思いたくないが、この国の将来が不安になってくる。
「それで依頼の内容だが、この街の酒場の用心棒を倒してほしいんだったな?」
「ああ、そうだ。ここセンビレッジでも一番大きな酒場なのだが、元々はわしの店だったのだ。それだというのにセンビレッジを治めておるガルペラ侯爵は『全ての住人に等しく自由な商売の機会を与えるため』などとほざいて、わしに店の所有権を認めぬのだ」
俺も耳にしたことがある。元々センビレッジの店の所有権は貴族が持っていた。だが貴族が無駄な口出しをするせいで経営に難航する店も多かったらしい。しかし二年前新たにセンビレッジの統治を任された貴族、ガルペラ侯爵は市場に貴族が直接介入できない制度を作り、そのおかげでセンビレッジは繁栄するようになったらしい。
「要するにあんたはガルペラ侯爵様のやり方が気に入らねえってことかい? 貴族の皆さんは足の引っ張り合いが好きなようで……」
「口を慎め! ドーマン男爵の前であるぞ!」
俺の挑発に対してドーマン男爵の従者が声を荒げる。
「かまわん。このぐらいのチンピラだからこそ、こういう仕事も頼めるというものだ」
ドーマン男爵は従者をなだめながら俺に対して挑発で返してくる。慣れたとはいえ、腹が立つものだ。
「だがよ、店の用心棒を倒すぐらいなら俺なんかに頼まずとも男爵様の部下でなんとかなりそうなもんだが?」
「そうは行かぬからお主に頼んだのだ。店の用心棒として雇われているのは"ギャングレオ盗賊団"の人間だ」
"ギャングレオ盗賊団"…… その名前をよく聞くようになったのは一年ほど前からか。これまでバラバラだった盗賊団を一つの組織としてまとめ上げ、王都やセンビレッジ近郊を狙って盗みを働く一大盗賊団だ。
「なんでギャングレオ盗賊団が用心棒なんてしてるんだ? それに身元が分かってるんだったらガルペラ侯爵に頼んで追い出してもらえばいいじゃねえか?」
「用心棒をしてる理由は知らぬわ。それにガルペラの奴に頼むのなんぞ御免被る」
おいおい、仮にも男爵が貴族として上位の侯爵を呼び捨てにするものか?
「それに用心棒の内の一人はギャングレオ盗賊団の幹部。あの【隻眼の凶鬼】直属の部下だ。ガルペラでは手に負えぬだろう」
【隻眼の凶鬼】か……。ギャングレオ盗賊団の頭領で、噂じゃかなり狂った人間で鬼のような強さを持っているらしい。魔王がいなくなったこの国において今現在最大の脅威はその【隻眼の凶鬼】だと言われている。
「なるほど。確かにギャングレオ盗賊団の幹部ともなれば、相当な腕利きなんだろうな。あんたらの部下じゃ無理なわけだ」
「ふん、勝手にほざけ」
ドーマン男爵はかなりご立腹のようだ。だがこちらも一応仕事だ。頼まれた以上は依頼をこなせねばなるまい。
「店の場所はこの地図に記してある。再度依頼を確認するが……」
「『この店の用心棒を倒せ』だろ? もう十分分かったよ。早速行ってくるから、報酬の準備をしておくんだな」
俺は依頼の内容を確認したら、早急に屋敷を後にした。
◇◇◇
「あのようなチンピラに任せて大丈夫なのですか?」
「かまわんさ。あのゼロラという男、腕は確かなようだ。上手くいけばガルペラの統治に穴を空けるのにも役立てられる」
ゼロラが去った後、ドーマン男爵と従者は今後について話し合っていた。
「所詮は使い捨てのチンピラ。失敗したならそれまで。成功したなら今度はガルペラに直接ぶつけて力づくでセンビレッジの統治権を奪う。そして最後にはわしの権力で処刑台に送ってくれるわ」
「なるほど。流石はドーマン男爵。チンピラの扱いにも慣れておりますね」
そしてドーマン男爵は一人いきり立つのであった。
「今に見ておれ、ガルペラの小娘よ! このわしこそがセンビレッジを統べるにふさわしいのだ!」
「それじゃあ私は買い物がありますので、ここで失礼します。あ! ゼロラさん! ちゃんとお弁当は食べてくださいね?」
「分かってるっての」
「ではボクも別行動といこうかな。折角センビレッジまで来たんだ。かわいい少年少女をナンパしてくるとしよう」
「いつもとやってることが変わらねえじゃねえか」
ある程度歩いたところで俺達三人はそれぞれ別行動をとることにする。俺も依頼主の屋敷に一人向かうことにした。
■
「何者だ? ここはルクガイア王国貴族、ドーマン男爵のお屋敷であるぞ」
「俺はゼロラってもんだ。ギルドマスターのイトーって男から話は聞いてるだろ? 依頼の打ち合わせに来た」
ドーマン男爵邸。センビレッジの片隅にある貴族の屋敷だ。センビレッジの統治を任されている貴族は別にいるのだが、ドーマン男爵はここに屋敷を構えて動こうとしないらしい。貴族社会のことはよく分からないが、統治権争いでもしているのだろう。
「ドーマン男爵の確認が取れました。どうぞ中へお入りください」
俺は衛兵に案内されて屋敷の中の応接室で待つように言われる。しばらくすると小太りで気に食わない目つきをした中年の男が応接室へ入ってきた。
「貴様がゼロラか。フン、汚れ仕事が似合いそうな低俗な男だ」
「ご評価いただき光栄だね。あんたがドーマン男爵だな?」
「いかにも。口も悪い男だ」
どうにも俺に依頼をしてくる貴族は嫌な奴が多い。貴族が全員こんな奴らばかりだとは思いたくないが、この国の将来が不安になってくる。
「それで依頼の内容だが、この街の酒場の用心棒を倒してほしいんだったな?」
「ああ、そうだ。ここセンビレッジでも一番大きな酒場なのだが、元々はわしの店だったのだ。それだというのにセンビレッジを治めておるガルペラ侯爵は『全ての住人に等しく自由な商売の機会を与えるため』などとほざいて、わしに店の所有権を認めぬのだ」
俺も耳にしたことがある。元々センビレッジの店の所有権は貴族が持っていた。だが貴族が無駄な口出しをするせいで経営に難航する店も多かったらしい。しかし二年前新たにセンビレッジの統治を任された貴族、ガルペラ侯爵は市場に貴族が直接介入できない制度を作り、そのおかげでセンビレッジは繁栄するようになったらしい。
「要するにあんたはガルペラ侯爵様のやり方が気に入らねえってことかい? 貴族の皆さんは足の引っ張り合いが好きなようで……」
「口を慎め! ドーマン男爵の前であるぞ!」
俺の挑発に対してドーマン男爵の従者が声を荒げる。
「かまわん。このぐらいのチンピラだからこそ、こういう仕事も頼めるというものだ」
ドーマン男爵は従者をなだめながら俺に対して挑発で返してくる。慣れたとはいえ、腹が立つものだ。
「だがよ、店の用心棒を倒すぐらいなら俺なんかに頼まずとも男爵様の部下でなんとかなりそうなもんだが?」
「そうは行かぬからお主に頼んだのだ。店の用心棒として雇われているのは"ギャングレオ盗賊団"の人間だ」
"ギャングレオ盗賊団"…… その名前をよく聞くようになったのは一年ほど前からか。これまでバラバラだった盗賊団を一つの組織としてまとめ上げ、王都やセンビレッジ近郊を狙って盗みを働く一大盗賊団だ。
「なんでギャングレオ盗賊団が用心棒なんてしてるんだ? それに身元が分かってるんだったらガルペラ侯爵に頼んで追い出してもらえばいいじゃねえか?」
「用心棒をしてる理由は知らぬわ。それにガルペラの奴に頼むのなんぞ御免被る」
おいおい、仮にも男爵が貴族として上位の侯爵を呼び捨てにするものか?
「それに用心棒の内の一人はギャングレオ盗賊団の幹部。あの【隻眼の凶鬼】直属の部下だ。ガルペラでは手に負えぬだろう」
【隻眼の凶鬼】か……。ギャングレオ盗賊団の頭領で、噂じゃかなり狂った人間で鬼のような強さを持っているらしい。魔王がいなくなったこの国において今現在最大の脅威はその【隻眼の凶鬼】だと言われている。
「なるほど。確かにギャングレオ盗賊団の幹部ともなれば、相当な腕利きなんだろうな。あんたらの部下じゃ無理なわけだ」
「ふん、勝手にほざけ」
ドーマン男爵はかなりご立腹のようだ。だがこちらも一応仕事だ。頼まれた以上は依頼をこなせねばなるまい。
「店の場所はこの地図に記してある。再度依頼を確認するが……」
「『この店の用心棒を倒せ』だろ? もう十分分かったよ。早速行ってくるから、報酬の準備をしておくんだな」
俺は依頼の内容を確認したら、早急に屋敷を後にした。
◇◇◇
「あのようなチンピラに任せて大丈夫なのですか?」
「かまわんさ。あのゼロラという男、腕は確かなようだ。上手くいけばガルペラの統治に穴を空けるのにも役立てられる」
ゼロラが去った後、ドーマン男爵と従者は今後について話し合っていた。
「所詮は使い捨てのチンピラ。失敗したならそれまで。成功したなら今度はガルペラに直接ぶつけて力づくでセンビレッジの統治権を奪う。そして最後にはわしの権力で処刑台に送ってくれるわ」
「なるほど。流石はドーマン男爵。チンピラの扱いにも慣れておりますね」
そしてドーマン男爵は一人いきり立つのであった。
「今に見ておれ、ガルペラの小娘よ! このわしこそがセンビレッジを統べるにふさわしいのだ!」
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