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第4章 王国の影
第35話 思い出の場所で
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ミリアさんがギャングレオ盗賊団に襲われた!?
その話を聞いて、いてもたってもいられなくなった自分はスタアラ魔法聖堂へ向かいました。
かなりの距離を走りましたが、不思議と疲れはありません。ゼロラさんと出会ってから続けていたトレーニングの成果でしょうか?
「なんだあの女の子!? メチャクチャ速いぞ!?」
通りすがりの冒険者さんがまた自分のことを女だと勘違いしたようですが、今はそれどころではありません!
とにかく一秒でも早くスタアラ魔法聖堂にたどり着かないと……!
■
「ハァ、ハァ! やっと着きました……!」
スタアラ魔法聖堂。自分が勇者様のパーティーに加わってからここに戻ってきたのはこれが初めてです。
自分は門番さんに近づきました。
「ラルフルじゃないか!? 久しぶりだなぁ! ずっと帰ってこないから心配してたんだぜ?」
門番さんは昔と同じように自分に接してくれました。
「お久しぶりです! ミリアさんはどこにいらっしゃるのですか!? 通してくれませんか!?」
「おいおい、そう慌てるなって。実はミリア様からラルフル宛に手紙を預かっていてな。お前なら読めばわかるって聞いてるんだが」
そう言って門番さんは手紙を渡してくれました。
字はミリアさんの物で間違いありません。手紙には『シアの洞穴で待つ』とだけ書かれていました。
「お前とミリア様にだけ分かる場所みたいだな」
「ええ……。でもなんでミリアさんはこんなところに呼び出して……」
「……お前は知らないかもしれないが、最近ここの大神官に就任したリョウ様って人がだな……」
察しました。
あの人が聖堂内にいてはゆっくり話もできません。
「と、とにかく自分はここに向かいます! ありがとうございました! また来ます!」
「おう。できればリョウ大神官がいない時に来た方がいいぞ」
門番さんと別れて自分はミリアさんが待つ場所へと走っていきました。
■
"シアの洞穴"。自分とミリアさんが幼いころから一緒に遊んだり魔法の修行をしていた秘密の場所です。
「ミリアさん!」
「やっときてくれたわね、ラルフル……って、なんでそんなに汗だくなのよ!?」
「ギャングレオ盗賊団に襲われたって聞いて急いできたんです! 大丈夫だったのですか!? 怪我はないのですか!?」
自分はミリアさんに大丈夫だったのかを近づいて確認しました。
「だ、大丈夫だから! ち、近いから!」
「え? あぁ!? す、すみません!」
気が付けば自分はミリアさんを抱きかかえてしまっていました。
なんという失態でしょうか。走って汗だくのままミリアさんに抱き着くなんて……。
「ア、アンタの行動は昔から逐一心臓に悪いのよ……」
「うぅ……。でもミリアさん。聖女の役職に就いたのに昔と変わってないですね」
自分が勇者パーティーに入る前のミリアさんは聖女とは呼ばれておらず、優しいけどあまり言葉遣いはよろしくありませんでした。
昨日会ったときは聖女用の修道服を着て髪も下ろしていましたが、今のミリアさんは自分が良く知る修道服とポニーテールに髪を結った姿でした。
「聖女なんてただの飾りよ。親しい人間の前でまで取り繕う必要なんてないわ」
「アハハハ……。本当に昔と変わりありませんね」
そんなミリアさんの姿がうれしかったです。自分が勇者パーティーを抜けた後にミリアさんが聖女と呼ばれるようになったのは風の噂で聞きましたが、そのせいで近寄りづらかったです。今や自分とミリアさんは住む世界が違うのだと思っていましたが、こうやって二人でいるとあの頃を思い出します。
「アンタのほうこそ変わってないわね。……ずっと連絡をよこさなかったのは許せないけど」
「そ、それはすみません……」
もっと早くにミリアさんに会っておくべきでした。ミリアさんと離れてからの約二年。自分はずっとミリアさんのことが気になっていました。こうやって何気ない会話をできてやっと不安も落ち着いてきました。
「ですがミリアさん。自分は、その……結構変わったと思います。魔力を失って……」
「そういうことを言ってるんじゃないわよ」
ミリアさんは顔を近づけてしっかり目を見ながら言いました。
「アンタは真っ直ぐに生きてる。昔と変わらずに。魔力も目的も失って自暴自棄になってないかと心配してたけど……アンタにそんな心配は杞憂だったみたいね」
ミリアさんは笑顔を浮かべ、瞳を潤ませながら語り掛けてくれました。
昔、自分が落ち込んでいた時と同じ、すごく心を落ち着かせてくれる語り掛け……。
「さて、それじゃあ色々教えてもらおうかしら。これまで何をしてたのか。ゼロラさんのことも含めてね」
自分とミリアさんは岩に腰掛けながら話を始めました。
その話を聞いて、いてもたってもいられなくなった自分はスタアラ魔法聖堂へ向かいました。
かなりの距離を走りましたが、不思議と疲れはありません。ゼロラさんと出会ってから続けていたトレーニングの成果でしょうか?
「なんだあの女の子!? メチャクチャ速いぞ!?」
通りすがりの冒険者さんがまた自分のことを女だと勘違いしたようですが、今はそれどころではありません!
とにかく一秒でも早くスタアラ魔法聖堂にたどり着かないと……!
■
「ハァ、ハァ! やっと着きました……!」
スタアラ魔法聖堂。自分が勇者様のパーティーに加わってからここに戻ってきたのはこれが初めてです。
自分は門番さんに近づきました。
「ラルフルじゃないか!? 久しぶりだなぁ! ずっと帰ってこないから心配してたんだぜ?」
門番さんは昔と同じように自分に接してくれました。
「お久しぶりです! ミリアさんはどこにいらっしゃるのですか!? 通してくれませんか!?」
「おいおい、そう慌てるなって。実はミリア様からラルフル宛に手紙を預かっていてな。お前なら読めばわかるって聞いてるんだが」
そう言って門番さんは手紙を渡してくれました。
字はミリアさんの物で間違いありません。手紙には『シアの洞穴で待つ』とだけ書かれていました。
「お前とミリア様にだけ分かる場所みたいだな」
「ええ……。でもなんでミリアさんはこんなところに呼び出して……」
「……お前は知らないかもしれないが、最近ここの大神官に就任したリョウ様って人がだな……」
察しました。
あの人が聖堂内にいてはゆっくり話もできません。
「と、とにかく自分はここに向かいます! ありがとうございました! また来ます!」
「おう。できればリョウ大神官がいない時に来た方がいいぞ」
門番さんと別れて自分はミリアさんが待つ場所へと走っていきました。
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"シアの洞穴"。自分とミリアさんが幼いころから一緒に遊んだり魔法の修行をしていた秘密の場所です。
「ミリアさん!」
「やっときてくれたわね、ラルフル……って、なんでそんなに汗だくなのよ!?」
「ギャングレオ盗賊団に襲われたって聞いて急いできたんです! 大丈夫だったのですか!? 怪我はないのですか!?」
自分はミリアさんに大丈夫だったのかを近づいて確認しました。
「だ、大丈夫だから! ち、近いから!」
「え? あぁ!? す、すみません!」
気が付けば自分はミリアさんを抱きかかえてしまっていました。
なんという失態でしょうか。走って汗だくのままミリアさんに抱き着くなんて……。
「ア、アンタの行動は昔から逐一心臓に悪いのよ……」
「うぅ……。でもミリアさん。聖女の役職に就いたのに昔と変わってないですね」
自分が勇者パーティーに入る前のミリアさんは聖女とは呼ばれておらず、優しいけどあまり言葉遣いはよろしくありませんでした。
昨日会ったときは聖女用の修道服を着て髪も下ろしていましたが、今のミリアさんは自分が良く知る修道服とポニーテールに髪を結った姿でした。
「聖女なんてただの飾りよ。親しい人間の前でまで取り繕う必要なんてないわ」
「アハハハ……。本当に昔と変わりありませんね」
そんなミリアさんの姿がうれしかったです。自分が勇者パーティーを抜けた後にミリアさんが聖女と呼ばれるようになったのは風の噂で聞きましたが、そのせいで近寄りづらかったです。今や自分とミリアさんは住む世界が違うのだと思っていましたが、こうやって二人でいるとあの頃を思い出します。
「アンタのほうこそ変わってないわね。……ずっと連絡をよこさなかったのは許せないけど」
「そ、それはすみません……」
もっと早くにミリアさんに会っておくべきでした。ミリアさんと離れてからの約二年。自分はずっとミリアさんのことが気になっていました。こうやって何気ない会話をできてやっと不安も落ち着いてきました。
「ですがミリアさん。自分は、その……結構変わったと思います。魔力を失って……」
「そういうことを言ってるんじゃないわよ」
ミリアさんは顔を近づけてしっかり目を見ながら言いました。
「アンタは真っ直ぐに生きてる。昔と変わらずに。魔力も目的も失って自暴自棄になってないかと心配してたけど……アンタにそんな心配は杞憂だったみたいね」
ミリアさんは笑顔を浮かべ、瞳を潤ませながら語り掛けてくれました。
昔、自分が落ち込んでいた時と同じ、すごく心を落ち着かせてくれる語り掛け……。
「さて、それじゃあ色々教えてもらおうかしら。これまで何をしてたのか。ゼロラさんのことも含めてね」
自分とミリアさんは岩に腰掛けながら話を始めました。
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