142 / 476
第11章 騎士に巻き付く龍の尾の蛇
第143話 対決・国王直轄黒蛇部隊隊長③
しおりを挟む
<蛇の予告>。
ジフウがそう技名を叫ぶと右腕に風魔法が展開される。黒い風が渦巻くようにジフウの右腕に纏わりつく。
「"予告"なんてしていいのか?」
「生憎、この技は溜めが必要なんでな。どの道一緒だ。――自信がねえなら避けるんだな」
ジフウが俺に警告してきた。だがそれは挑発ではない……これは本当にヤバイ技だ!
「ダァウラァアア!!」
ジフウが右腕を一度後ろに下げて俺へと殴り掛かってくる! 本能的に危険を察知した俺はとにかく回避する!
ガァオオオン!!
「な、なんだ!? 何が起こった!?」
俺はジフウのパンチを躱せたが、そのままジフウは俺の背後の壁へと拳を叩きつけた。
――そして、ジフウが殴った壁は"抉られたように"大きな穴が開いていた。
「<黒蛇の右>。避けて正解だったな。拳の衝撃に風魔法の威力を相乗させ、対象を抉る右腕だ」
<黒蛇の右>。<蛇の予告>はあくまでこの技を放つための溜め段階に過ぎなかったのか……。
俺は再度壁の穴に目をやる。巨大な蛇が壁へと潜り込んだかのような大きく抉られた穴。あんなものを食らったら、たとえ<鉄の防御>で全力ガードしても防ぎきれないかもしれない。
"黒蛇"の名を冠する通り、黒蛇部隊隊長・ジフウの大技の一つか……!
「<蛇の予告>……!」
ジフウが横目で俺を見ながら再度<蛇の予告>で右腕に黒い風を纏わせる。このまま<黒蛇の右>が来るとマズい! なんとか溜めている段階で食い止めようと、俺はジフウに襲い掛かる――
ガシンッ!
「俺が溜め技の隙を許すとでも思ったか?」
「なっ……!?」
ジフウは俺の肩を左手で掴んで動きを止めてきた。
しまった! そもそもこいつは"対策も無しに隙を作る"ような奴じゃない!
「<黒蛇の右>ィ!!」
「チィ!」
ジフウの<黒蛇の右>が直撃する間際、俺は体をひねってギリギリで躱す!
ガァオオン……!
直撃こそは避けたが、風魔法によって攻撃範囲が拡大した<黒蛇の右>は俺の体を掠める。
「うぐぅ!? か、躱したのになんて威力だ……!」
それでもダメージはかなり大きい。思わず体を揺らめかせてしまう。
この技をまともに食らうわけにはいかない!
「ウハハハハ! さあ! 次はどうする!? どう打って出る!? ゼロラァ!!」
ジフウは高々と笑いながら俺を見やる。どうにも俺との戦いが楽しくて仕方なくなってきたようだ。
だがその興奮した様相とは裏腹に、ジフウは<蛇の予告>による溜めの最中にも迎え撃つ準備ができている。
シシバと違い、相手がどう動こうがしっかりとした対策を用意している。
それにおそらく――ジフウは<黒蛇の右>とは別の"もう一段上の技"をまだ温存している。
「無傷では勝てねえ……ってのは確かなようだ」
そう言いながら俺は右半身を前に出し、左腕を上に、右腕を下にして両腕が平行になるように構える。
「ほーう……。今度は何をするつもりだ?」
「シシバの真似事をしたんだ。今度はてめぇの真似事をしようと思ってな」
一か八かになるだろう。それでも今のジフウに対抗できる技はこれしかないと思った。
「気にはならねえか? 俺がてめぇの技を真似て見るのが?」
俺はあえてジフウを挑発する。さっきまでの膠着状態が続くよりは、ここで<黒蛇の右>を撃たせるほうがチャンスはある。
「ウハハハ……! いいだろう。その挑発……乗ってやるよ! <蛇の予告>!!」
俺の挑発に乗ったジフウは<蛇の予告>で黒い風を右腕に纏わせる! こちらから仕掛けたりはしない! 俺は<黒蛇の右>が来るのを待ち構える!
「行くぜ……。<黒蛇の右>ィ!!」
<蛇の予告>による溜めが終わったジフウは、俺目がけて<黒蛇の右>を放ってくる!
俺は一瞬を狙って覚悟を決める! そして<黒蛇の右>が俺に迫った瞬間――
ガァオン!! ガッ!
――俺は左手の掌底で<黒蛇の右>を弾いた!
顔面スレスレを通り、風圧によるダメージを受けるが、それに構わず次の行動へと移る!
ドボォオオ!!
「ウハァ……ガァ……!?」
左腕の肘打ちによるカウンター。それをジフウの腹のど真ん中に直撃させた。
ジフウと同じように、相手の攻撃を捌きながらのカウンター。効果は確かにあったようだ。
「ゲホッ、ゲホッ! ウハハハハ……。今のは効いたぜ……!」
俺もダメージは受けたが、ジフウはそれ以上に堪えている。
だがまだ終わらない。俺はジフウに、次の一手を打たせるためにこう言った。
「だったら次は"右手"なんて使わずに、素直に"左手"を使うんだな」
ジフウがそう技名を叫ぶと右腕に風魔法が展開される。黒い風が渦巻くようにジフウの右腕に纏わりつく。
「"予告"なんてしていいのか?」
「生憎、この技は溜めが必要なんでな。どの道一緒だ。――自信がねえなら避けるんだな」
ジフウが俺に警告してきた。だがそれは挑発ではない……これは本当にヤバイ技だ!
「ダァウラァアア!!」
ジフウが右腕を一度後ろに下げて俺へと殴り掛かってくる! 本能的に危険を察知した俺はとにかく回避する!
ガァオオオン!!
「な、なんだ!? 何が起こった!?」
俺はジフウのパンチを躱せたが、そのままジフウは俺の背後の壁へと拳を叩きつけた。
――そして、ジフウが殴った壁は"抉られたように"大きな穴が開いていた。
「<黒蛇の右>。避けて正解だったな。拳の衝撃に風魔法の威力を相乗させ、対象を抉る右腕だ」
<黒蛇の右>。<蛇の予告>はあくまでこの技を放つための溜め段階に過ぎなかったのか……。
俺は再度壁の穴に目をやる。巨大な蛇が壁へと潜り込んだかのような大きく抉られた穴。あんなものを食らったら、たとえ<鉄の防御>で全力ガードしても防ぎきれないかもしれない。
"黒蛇"の名を冠する通り、黒蛇部隊隊長・ジフウの大技の一つか……!
「<蛇の予告>……!」
ジフウが横目で俺を見ながら再度<蛇の予告>で右腕に黒い風を纏わせる。このまま<黒蛇の右>が来るとマズい! なんとか溜めている段階で食い止めようと、俺はジフウに襲い掛かる――
ガシンッ!
「俺が溜め技の隙を許すとでも思ったか?」
「なっ……!?」
ジフウは俺の肩を左手で掴んで動きを止めてきた。
しまった! そもそもこいつは"対策も無しに隙を作る"ような奴じゃない!
「<黒蛇の右>ィ!!」
「チィ!」
ジフウの<黒蛇の右>が直撃する間際、俺は体をひねってギリギリで躱す!
ガァオオン……!
直撃こそは避けたが、風魔法によって攻撃範囲が拡大した<黒蛇の右>は俺の体を掠める。
「うぐぅ!? か、躱したのになんて威力だ……!」
それでもダメージはかなり大きい。思わず体を揺らめかせてしまう。
この技をまともに食らうわけにはいかない!
「ウハハハハ! さあ! 次はどうする!? どう打って出る!? ゼロラァ!!」
ジフウは高々と笑いながら俺を見やる。どうにも俺との戦いが楽しくて仕方なくなってきたようだ。
だがその興奮した様相とは裏腹に、ジフウは<蛇の予告>による溜めの最中にも迎え撃つ準備ができている。
シシバと違い、相手がどう動こうがしっかりとした対策を用意している。
それにおそらく――ジフウは<黒蛇の右>とは別の"もう一段上の技"をまだ温存している。
「無傷では勝てねえ……ってのは確かなようだ」
そう言いながら俺は右半身を前に出し、左腕を上に、右腕を下にして両腕が平行になるように構える。
「ほーう……。今度は何をするつもりだ?」
「シシバの真似事をしたんだ。今度はてめぇの真似事をしようと思ってな」
一か八かになるだろう。それでも今のジフウに対抗できる技はこれしかないと思った。
「気にはならねえか? 俺がてめぇの技を真似て見るのが?」
俺はあえてジフウを挑発する。さっきまでの膠着状態が続くよりは、ここで<黒蛇の右>を撃たせるほうがチャンスはある。
「ウハハハ……! いいだろう。その挑発……乗ってやるよ! <蛇の予告>!!」
俺の挑発に乗ったジフウは<蛇の予告>で黒い風を右腕に纏わせる! こちらから仕掛けたりはしない! 俺は<黒蛇の右>が来るのを待ち構える!
「行くぜ……。<黒蛇の右>ィ!!」
<蛇の予告>による溜めが終わったジフウは、俺目がけて<黒蛇の右>を放ってくる!
俺は一瞬を狙って覚悟を決める! そして<黒蛇の右>が俺に迫った瞬間――
ガァオン!! ガッ!
――俺は左手の掌底で<黒蛇の右>を弾いた!
顔面スレスレを通り、風圧によるダメージを受けるが、それに構わず次の行動へと移る!
ドボォオオ!!
「ウハァ……ガァ……!?」
左腕の肘打ちによるカウンター。それをジフウの腹のど真ん中に直撃させた。
ジフウと同じように、相手の攻撃を捌きながらのカウンター。効果は確かにあったようだ。
「ゲホッ、ゲホッ! ウハハハハ……。今のは効いたぜ……!」
俺もダメージは受けたが、ジフウはそれ以上に堪えている。
だがまだ終わらない。俺はジフウに、次の一手を打たせるためにこう言った。
「だったら次は"右手"なんて使わずに、素直に"左手"を使うんだな」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
135
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる