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第12章 舞台へ立つために
第157話 思い出の品
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俺とマカロンとリョウは三人でアクセサリーの店に入っていた。
店に入る前に遠くで煙が上がっているのが見えたが、火の気はないみたいだし、多分大丈夫だろう。
「あ! この月の髪飾りとか可愛いですね。リョウさんに似合いそうですよ」
「ふむ。ボクはこういう物には疎いのだが、マカロンにはこっちの花の髪飾りが似合いそうだね」
そして現在、マカロンとリョウがアクセサリーをお互いに試着しながら選んでいる。
本当に仲良くなったな、この二人。
「ゼロラさんはどう思いますか?」
傍で二人を見ていた俺にマカロンが尋ねてきた。俺に聞かれてもよく分からないのだが……?
「ゼロラ殿。こういう時は女性にプレゼントを贈るのが紳士の嗜みだそうだよ」
リョウも俺におねだりをしてくる。もうこれデートじゃねえか。男一人に女二人だけど……。
「と言ってもな~……。俺だってこういう物には疎いんだが――」
俺は適当に店内を物色してみる。
マカロンとリョウに似合いそうなものか……。そう考えて探していると、俺の目に二色のブローチが飛び込んできた。
鮮やかな緑と赤の宝石があしらわれたブローチ。マカロンとリョウのそれぞれの瞳の色にマッチしてるし、これならお揃いで似合うかもしれない。
「お目が高いですね、お客様。このブローチは当店の人気商品です。魔力を灯すことができる石を加工した物になります」
俺がブローチを見ていると店員がやってきて商品のことを説明してくれた。
「いくらするんだ?」
「少々お値段が張りまして――こんなものでしょうか?」
店員が提示した値段は結構高かった。ガルペラから給金を貰っているとはいえ、今の俺の懐事情では少々厳しい。
「ゼ、ゼロラさん。無理に高いものを買わなくてもいいんですよ?」
「そ、そうだよ。ボク達別にゼロラ殿にたかりたいわけじゃないからね?」
値段を見たマカロンとリョウは不安そうに俺を見る。
……だが、なんだろうな。俺はこの二人ならこのブローチが似合うと思ったからか、買ってやりたくなった。
「――二つくれ。緑と赤のやつを一つずつだ」
「かしこまりました。お買い上げ、ありがとうございます」
俺はブローチを買って緑色をマカロンに、赤色をリョウにそれぞれプレゼントした。
店を出ると二人は早速プレゼントしたブローチを首にかけてくれた。うむ。二人ともよく似合ってる。
「はわ~……! ゼ、ゼロラさん! ありがとうございます!」
「本当に買ってくれるとはね……。ゼロラ殿も意外と女心が分かるようだ。でも感謝するよ」
『意外と』で悪かったな。だが二人が喜んでくれてよかった。
「思えばゼロラさんからこういった形あるものをプレゼントしてもらったのって初めてですね」
そういえばマカロンやリョウとも二年の付き合いだが、ちゃんとしたプレゼントって初めてしたな。
そう思うとなんだかこっぱずかしい。
「ゼロラさんとの思い出の品……大切にします!」
俺から受け取ったブローチを握りしめてマカロンが満面の笑みを俺に向けてくる。
優しくて暖かい魅力的な笑顔。これで魅了されない男などいないだろう。
――かくいう俺もそうだ。
「ボクにもありがとう。本当にうれしいよ。大切にするよ」
リョウもブローチを掲げながら穏やかな笑みを浮かべている。
いたずらっぽいがどこか安心する笑顔。男を惑わす小悪魔ってのはこういうことを言うのだろう。
――現に俺も惑わされている。
俺が二人にこんな気持ちを抱く日が来るとは思ってもいなかった。
それでも今の俺にはどちらかを選ぶなんてことはできない。こんな時まで俺は優柔不断だ。
「ゼロラさん……"答え"はまだ出さなくていいです」
そんな俺の気持ちを察したのか、マカロンが口を開く。
「ボク達は正々堂々とゼロラ殿に思いを伝えると決めている。ゼロラ殿には中途半端な"答え"を出してほしくないんだ」
リョウもマカロンに合わせるように口を開く。
俺は幸せ者だ。
こんなにいい女が二人も俺のことを慕ってくれて、優柔不断な俺の答えを待ってくれている。いつか"答え"を出せる日が来たら、その時はしっかりと二人に伝えよう。
「……そろそろ時間のようだね。ボクは魔幻塔に帰らないと」
リョウは踵を返しして俺達から離れていった。
こいつは今、魔幻塔で"囚われの身"と言ってもいい。次にいつ会えるかわからないリョウとの別れが名残惜しい。
「ボクには君から貰ったブローチがある。距離は離れていても、これがあればボクは寂しくないさ」
そう言いながらもどこか不安げなリョウの表情。
「リョウさん……また、必ず会いましょう」
「ああ、必ずだ。ボクも意地でも会いに行くからね」
それだけ言い残し、リョウは俺達のもとから去っていった――
店に入る前に遠くで煙が上がっているのが見えたが、火の気はないみたいだし、多分大丈夫だろう。
「あ! この月の髪飾りとか可愛いですね。リョウさんに似合いそうですよ」
「ふむ。ボクはこういう物には疎いのだが、マカロンにはこっちの花の髪飾りが似合いそうだね」
そして現在、マカロンとリョウがアクセサリーをお互いに試着しながら選んでいる。
本当に仲良くなったな、この二人。
「ゼロラさんはどう思いますか?」
傍で二人を見ていた俺にマカロンが尋ねてきた。俺に聞かれてもよく分からないのだが……?
「ゼロラ殿。こういう時は女性にプレゼントを贈るのが紳士の嗜みだそうだよ」
リョウも俺におねだりをしてくる。もうこれデートじゃねえか。男一人に女二人だけど……。
「と言ってもな~……。俺だってこういう物には疎いんだが――」
俺は適当に店内を物色してみる。
マカロンとリョウに似合いそうなものか……。そう考えて探していると、俺の目に二色のブローチが飛び込んできた。
鮮やかな緑と赤の宝石があしらわれたブローチ。マカロンとリョウのそれぞれの瞳の色にマッチしてるし、これならお揃いで似合うかもしれない。
「お目が高いですね、お客様。このブローチは当店の人気商品です。魔力を灯すことができる石を加工した物になります」
俺がブローチを見ていると店員がやってきて商品のことを説明してくれた。
「いくらするんだ?」
「少々お値段が張りまして――こんなものでしょうか?」
店員が提示した値段は結構高かった。ガルペラから給金を貰っているとはいえ、今の俺の懐事情では少々厳しい。
「ゼ、ゼロラさん。無理に高いものを買わなくてもいいんですよ?」
「そ、そうだよ。ボク達別にゼロラ殿にたかりたいわけじゃないからね?」
値段を見たマカロンとリョウは不安そうに俺を見る。
……だが、なんだろうな。俺はこの二人ならこのブローチが似合うと思ったからか、買ってやりたくなった。
「――二つくれ。緑と赤のやつを一つずつだ」
「かしこまりました。お買い上げ、ありがとうございます」
俺はブローチを買って緑色をマカロンに、赤色をリョウにそれぞれプレゼントした。
店を出ると二人は早速プレゼントしたブローチを首にかけてくれた。うむ。二人ともよく似合ってる。
「はわ~……! ゼ、ゼロラさん! ありがとうございます!」
「本当に買ってくれるとはね……。ゼロラ殿も意外と女心が分かるようだ。でも感謝するよ」
『意外と』で悪かったな。だが二人が喜んでくれてよかった。
「思えばゼロラさんからこういった形あるものをプレゼントしてもらったのって初めてですね」
そういえばマカロンやリョウとも二年の付き合いだが、ちゃんとしたプレゼントって初めてしたな。
そう思うとなんだかこっぱずかしい。
「ゼロラさんとの思い出の品……大切にします!」
俺から受け取ったブローチを握りしめてマカロンが満面の笑みを俺に向けてくる。
優しくて暖かい魅力的な笑顔。これで魅了されない男などいないだろう。
――かくいう俺もそうだ。
「ボクにもありがとう。本当にうれしいよ。大切にするよ」
リョウもブローチを掲げながら穏やかな笑みを浮かべている。
いたずらっぽいがどこか安心する笑顔。男を惑わす小悪魔ってのはこういうことを言うのだろう。
――現に俺も惑わされている。
俺が二人にこんな気持ちを抱く日が来るとは思ってもいなかった。
それでも今の俺にはどちらかを選ぶなんてことはできない。こんな時まで俺は優柔不断だ。
「ゼロラさん……"答え"はまだ出さなくていいです」
そんな俺の気持ちを察したのか、マカロンが口を開く。
「ボク達は正々堂々とゼロラ殿に思いを伝えると決めている。ゼロラ殿には中途半端な"答え"を出してほしくないんだ」
リョウもマカロンに合わせるように口を開く。
俺は幸せ者だ。
こんなにいい女が二人も俺のことを慕ってくれて、優柔不断な俺の答えを待ってくれている。いつか"答え"を出せる日が来たら、その時はしっかりと二人に伝えよう。
「……そろそろ時間のようだね。ボクは魔幻塔に帰らないと」
リョウは踵を返しして俺達から離れていった。
こいつは今、魔幻塔で"囚われの身"と言ってもいい。次にいつ会えるかわからないリョウとの別れが名残惜しい。
「ボクには君から貰ったブローチがある。距離は離れていても、これがあればボクは寂しくないさ」
そう言いながらもどこか不安げなリョウの表情。
「リョウさん……また、必ず会いましょう」
「ああ、必ずだ。ボクも意地でも会いに行くからね」
それだけ言い残し、リョウは俺達のもとから去っていった――
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