記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第13章 王国が変わる日

第171話 王宮脱出戦・謎の仮面参戦

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 俺とロギウスは正面ロビーからの脱出を試みるため、進撃を続けていた。
 おそらくこの事態を見て突入してきたであろうギャングレオ盗賊団と合流できれば脱出できるはずだ。

「それにしても、ロギウスが使ってる剣術は何なんだ?」
「これは<理刀流>という剣術だ。先代勇者であるユメ様も使っていた剣術だ」

 <理刀流>? やはり見たことも聞いたこともない剣術だ。
 変わった構えと動きだが、その実、型に囚われずに攻防の隙が少ない。
 先代勇者も使っていたというのが気になるな……。

「僕の剣術についての話は後にしよう。それよりもお客さんだ」

 ロギウスが前方へと向き直したのを見て、俺も同じように前を見た。

「貴様ら~! さっきはよくもやってくれたな~! このわしを侮辱したこと、後悔するのじゃ!」

 王国騎士団軍師のジャコウか。さっき議場で気を失っていたが、戦線復帰したらしい。

 ――気を失ってただけにしては誰かに踏まれでもしたかのようにボロボロだが?

「ジャコウ殿。殿下が相手であれど、手加減は不要。その反逆者二人を捕らえるのだ!」

 さらに後ろからは俺との戦いから復帰したバルカウスが現れた。
 伊達に勇者パーティーの一員ではないようだ。タフさだけは一流だな。

「どうする? この二人なら倒すのは問題ないが?」
「いや、下手に時間を使いたくない。適当にやり過ごした後、脱出を優先しよう」

 ロギウスの提案はあくまで脱出優先。
 確かに一人ずつが相手ならケリをつけるのは難しくないが、二人で来られると時間がかかりそうだ。

「分かった。それじゃ――」



 ヒュゥウン!

 俺がロギウスの提案に賛同しようとしたその時、俺達の目の前に宙に浮く人影が突然現れた。



 後ろ姿だが見覚えのある紫の髪に白衣。普段と違ってマントを羽織っているが間違いない――リョウだ!

 そしてこちらを向きながら俺達に語り掛けてきた――



「君達、ここから脱出したいんだね? この"マスク・ザ・レインボー"が助けに入ってあげよう!」

 ――奇妙な仮面をつけて、自らを"マスク・ザ・レインボー"と名乗りながら。

「……いや、お前リョウだろ? 何やってんだ?」
「"リョウ"? 誰のことかな? ボクは"マスク・ザ・レインボー"。通りすがりの謎の仮面の魔法使いさ!」

 ……んなわけないだろ。
 "謎の仮面"をつけた"魔法使い"が、こんなに都合よく騒動の中を"通りすがる"わけないだろ。

「ん? 俺がリョウに買ってやったブローチを身に着けてるな?」

 俺はリョウの胸元にあるブローチを見て尋ねた。

「そりゃ、ボクにとってこのブローチは大事な宝物にしてお守りだからね。肌身離さず身に着けてるさ」
「俺はそれを"リョウに買ってやった"んだが?」
「あっ……」

 こいつ、ボロ出るの早すぎだろ。他の奴にバレないよう正体を隠してるつもりなんだろうが、そもそも全く隠せてないし。

「おのれ! リョウ大神官まで邪魔をするか!」
「リョウ大神官であれど、拙者達の邪魔をするなら容赦はせぬ!」

 ほら見ろ。ジャコウとバルカウスにはバレバレじゃないか。

「君達うるさいよ! ボクはリョウ大神官じゃないって言ってるじゃないか!」

 リョウは割り込んできた二人に怒ったようにそれぞれ魔法弾を放った。

「ゲビョォ!?」
「な、何を……!?」

 リョウに対してもっともなコメントを述べた二人だったが、理不尽にも吹き飛ばされてしまった。

「ボクの名前は"マスク・ザ・レインボー"だ! さあ! 今のうちに脱出するんだ!」

 リョウはあくまで自らを"マスク・ザ・レインボー"として押し通すつもりだ。
 ……もういいよ、それで。

「ゼロラ殿。何者かは分からないが、僕達に味方してくれるんだ。有難く手を貸してもらおうじゃないか」
「なあ、ロギウス。お前はリョウって大神官に会ったことないのか?」

 言った後に思ったのだが、ロギウスって確かこれまでずっと海外にいたんだっけか? 知らなくても無理ないか。



「リョウ大神官については聞いたことがある。だがリョウ大神官は"女性"だ。そこの仮面の魔法使いは自らを"ボク"と名乗っている。つまり、"男性"だ。少なくともリョウ大神官ではない」

 ……それは偏見だと思うぞ。
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