記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第14章 まどろむ世界のその先へ

第187話 失われた魔力の行方

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「そ、そんな……バルカウス様が……自分から魔力を奪って……?」

 可能性の話であるが、それはラルフルにとってあまりにショックな仮説だった。

「僕も長い間王都を離れていたから知らなかったけど、調べたところバルカウスは【伝説の魔王】討伐の際には魔法が使えるようになっていたそうだ。ラルフルが魔力を失う前――少なくとも、討伐に出発する前は確かに使えなかった」

 ロギウスが言っていた"時期がおかしい"という疑問。それはロギウスが出した仮説を裏付けるようなものだった。

「で、でも! 自分から魔力を奪ってそれをバルカウス様に移すことなんて――」
「賢者リフィー。あの女程の魔法の使い手なら、できるだろうな」

 現実を受け止められないラルフルに対して、バクトの発言が容赦なく突き刺さる。

「でも……でも……!」

 かつて自らが必死の努力で手に入れた魔力。その失われた魔力が今はバルカウスのもとにあるかもしれない。
 そんな話を聞いたラルフルの心境は俺では計り知れない。

「もしそうだったとしたら、バルカウスから奪った魔力を取り戻させてラルフルに戻すこともできるかもしれない。そうなったら敵の戦力低下、こちらの戦力向上。その二つを同時に狙うことができる」

 ロギウスの提案は合理的だ。
 だがそのためにはラルフルに、"魔力を失った過去"に立ち向かわせる必要がある。それはあまりに酷な話なのかもしれない。
 これまでの話を聞いて様々な感情が入り混じった表情をし、瞳を暗くさせるラルフルに、俺はなるべく優しく語りかけた。

「ラルフル。たとえ今の話が本当だったとしても、お前自身が変わる必要はない。お前は今まで通り、真っ直ぐで、優しく、そして芯の強さを持ったまま生きればいい。魔力が戻ったとしても、戻らなかったとしても……俺は"ラルフルという男"を信じている」
「ゼロラさん……」

 しばらく俯いて目を閉じていたラルフルだったが、胸に手を当て目を開けた時にはいつもの強い輝きを持った瞳のラルフルに戻っていた。

「……ロギウス殿下。バルカウス様とお会いする策はありますか?」

 決意を込めた声でラルフルはロギウスに問いかけた。

「バルカウスに手紙を出す。『ラルフルが魔力を失った洞窟で一人で来い』という内容で送り付ける。彼は本来武人肌だ。リフィーとの共謀でラルフルから魔力を奪ったことに後ろめたさがあるなら、この誘いに応じるはずだ」
「分かりました。まだ真実が決まったわけではありませんが……自分は今一度あの時のことについて、バルカウス様を問い詰めます!」

 ラルフルの決意の固さはその声と表情で確認できた。

「だがよ。仮にバルカウスがラルフルから魔力を奪っていたとしても、それをラルフルに戻す方法はあるのか?」
「うーむ……。僕もその方法までは分かっていなくて……。魔法に詳しい者、ミリア様辺りなら何か知っているかもしれないのですが……」

 イトーさんの疑問にロギウスも口を濁す。
 たとえ今までの話が真実だったとしても、魔力の戻し方が分からないと意味がない。
 魔法に詳しい者……。それも、賢者リフィーがかけたと思われる術に対抗できるほど詳しい人間か――



 ――一人だけ心当たりがあるな。

「バクト。シシバから魔幻塔についての話は聞いてるか?」
「リョウ大神官を連れ出すことか? そのことなら聞いている。シシバが言うには『難しいことじゃないから、いつでもできる』と言ってたが……貴様、まさか――」

 そうか。シシバの仕事の速さに感謝だな。
 そして俺の考えはバクトの言う『まさか』だ。

「俺は明日の朝、魔幻塔にリョウを迎えに行く。あいつなら、なんとかできるかもしれない」
「リョウ大神官……! 確かにあの人なら……!」

 リョウの魔法に関する腕と知識は折り紙付きだ。
 ラルフルにとっては苦手な相手かとも思ったが、決意を固めたこいつには些細な問題のようだ。

「……いいだろう。シシバには俺から連絡を入れて、明日の朝にリョウ大神官を連れ出せるようにしておく」
「じゃあ、バルカウスへの手紙は今のうちに出しておこう。僕とゼロラ殿がテコロン鉱山に出発するのも明日にするかい? やるなら早い方がいい」
「それは構わないが、俺も出発の前にリョウと会う時間だけは用意してくれ」
「分かってるよ」

 バクトとロギウスも俺の提案に同意してくれた。

 明日の朝、俺は魔幻塔へリョウを迎えに行った後、ロギウスと共にテコロン鉱山のフロストの元へ向かう。
 ラルフルはリョウと合流後、バルカウスに会いにかつて魔力を失った洞窟へ向かう。



 これからの戦いは熾烈を極めることになりそうだ――
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