記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
286 / 476
第20章 獅子は吠え、虎は猛る

第286話 決戦・【虎殺しの暴虎】④

しおりを挟む
「ゼ、ゼロラぁ……!」
「ここで決着をつけるぞ……サイバラ……!」

 ガルペラ侯爵邸の裏庭で再びサイバラとゼロラが睨み合う。
 お互いに蓄積したダメージから体は限界を迎えようとしていた。

「終わってたまるかぁ……! このオレがぁ……!!」

 だがサイバラの方がダメージは大きく、まともに構えをとれる状況ではなくなっていた。
 それでも必死に力を振り絞り、サイバラはゼロラへと再び殴り掛かる。

「どうやらそっちの方が限界みたいだな……」

 ゼロラへと殴り掛かったサイバラだったが、すでにその拳に最初のような勢いはない。
 ゼロラはそれを軽々と躱す――





「舐めんじゃねぇ……! オレの"切り札"の存在を忘れたのかぁ……? ゼロラぁああ!!」

 ゼロラに攻撃を回避されたサイバラだったが、その狙いは"最初からゼロラでは"なかった。



 サイバラが狙っていたのは、裏庭に設置されていた"配電盤"だった。

「ッ!!? まさかまた――」
「シャァァアア――ウゥゥウルァァアアア!!!」

 サイバラは配電盤に己の拳を突っ込む。
 そして、そこから電力を自らの体内へと吸収していく。

 屋敷の照明がどんどんと落ちていく。
 それに反してサイバラの体を走る稲光が激しさを増す。
 サイバラの体にはガルペラ侯爵邸全ての電力が蓄えられた――

「決着つけてやるよぉ……! 勝つのはオレだがなぁああ!! ゼロラぁあああ!!!」

 電力のチャージを終えたサイバラはその両眼を見開き、血走らせながらゆっくりゼロラへと近づいていく。
 とっくにまともに戦える体ではなくなっているサイバラだが、それでも無茶を通り越した手段を用いて戦いを続行する。

 すでにサイバラの頭に、この戦いの後の話などなくなっていた。
 とるべき行動はただ一つ――
 目の前にいる【零の修羅】、ゼロラという自らと同格の男を倒すことだけ――

「シャラァアア!!」

 サイバラは再びパンチのラッシュでゼロラを襲う。

「は、速い!?」

 それに応戦するゼロラだったが、サイバラのラッシュスピードはこれまでよりもさらに上がっている。
 <電撃肉体強化魔法>のオーバーチャージ――
 それによって強化されたサイバラの猛攻がゼロラを圧倒する。

「野郎ぉおお!!」
「シャラァアア!!」

 ゼロラもなんとか攻勢に打って出るが、サイバラの方が勢いは上回っていた。
 ここに来て戦局は再度サイバラの優勢となる。

 ドギャァアアン―― バギャァアアン――

 二人の攻撃が激しくぶつかり合う。
 だがその威力も速さもサイバラの方が上。
 ゼロラはサイバラの猛攻をなんとか凌いでいる状況だった――



 ――さらにサイバラは次の一手へと移る。

「ルァアアッ!!」
「ッ!? 足払い!?」

 これまで手を使った攻撃が中心だったサイバラだが、ここにきて不意打ちの足払いを仕掛ける。
 反応できなかったゼロラはそのまま地面へと倒れ込む――

「終わらせてやるよぉ――ゼロラぁああ!!」

 地面へと倒れていくゼロラの足をサイバラは掴みとる。
 そしてゼロラの体を自らの頭上高くへと放り投げる――

「馬鹿な!? 片手で俺をこの高さまで!?」

 戦場が裏庭に移ったことで、ゼロラの体は天高くへと舞いあげられる。
 この屋外というフィールドが、サイバラの"正真正銘の必殺技"を使わせる絶好の機会を与えた――

「死に晒せぇええ!! <暴虎・落雷>!!!」

 自らの頭上に落ちてくるゼロラに対し、サイバラを大きく拳を振り上げる――



 ボゴォオンッ!!!



「ゴハァア……!!??」

 落下したゼロラの腹にサイバラが振り上げた拳が突き刺さる――
 その瞬間ゼロラの全身を走る落雷のような衝撃――
 ゼロラの口から大量の血が飛び散る。

 全身から力の抜けたゼロラの体をサイバラは地面へと投げ捨てる。

「ゴフッ……ゲホッ……! ハァ……ハァ……」
「どうしたぁあ!? これで終わりかぁあ!? 【零の修羅】も【虎殺しの暴虎】には勝てねえってぇのかぁ!? ゼロラぁああ!!」

 倒れたゼロラに対してサイバラが声を張り上げる。
 全身に稲光を走らせ、<黄色のオーラ>を滾らせながら、サイバラはゼロラを挑発する。



 サイバラもゼロラがまだ終わったとは思っていない。
 ゼロラの体に纏われている<灰色のオーラ>はまだ消えていない。

「ウググッ……! オォオオオ!!!」

 ゼロラは気力を振り絞って立ち上がる。
 そして気合いを入れなおし――<灰色のオーラ>をさらに大きく滾らせる。

「まだ終わらねえよ……! 俺の全身全霊はこんなもんじゃねえぞ――サイバラァアア!!」

 その言葉通りに全身全霊の気合いを入れてゼロラはサイバラへと構えなおす。

「そうこねぇとなぁ……! オレを止められるもんなら――止めてみやがれぇええ!!」

 サイバラを地面を力強く蹴り飛ばし、ゼロラへと突進する。
 <電撃肉体強化魔法>によるパワーとスピード――
 その猛威を右手の拳に乗せてゼロラへと迫る。



「ドラァアア!!」
「ドゥアァア!? アァ……ガハァ……!」

 そこへゼロラは腰を落として正拳突きでカウンターを放つ。
 慣れないスピード勝負を仕掛けたためか、サイバラはゼロラの動きに反応できなかった。



 それだけでなく――

「オェエゲェ……! ゼ……ゼロ……ラぁ……!」

 サイバラはゼロラのカウンターを受けてこれまで以上に苦しんでいる。
 口から血を溢れさせ、まともに呼吸もできていない。



 外部から電力を取り入れた、<電撃肉体強化魔法>のオーバーチャージ。
 それによりサイバラは筋力だけでなく、神経そのものも強化していた。
 "反射神経"を強化することでサイバラのスピードは大幅に上がったが、同時に副作用も発生していた――

 ――サイバラの"痛覚神経"も同じように強化されていた。
 オーバーチャージで戦闘を続行することこそ可能になったが、そのせいでサイバラ自慢の打たれ強さは失われてしまった。

「ハァ……ハァ……! そろそろみてえだな……!」
「ゼェ……ゼェ……! オレが勝つんだぁ……!」

 ゼロラもサイバラもお互いの限界を感じ始めていた。
 お互いに死力を尽くしたこの決戦――

 その終焉が近づいていく――
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。 そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。 記憶を抱えたまま、幼い頃に――。 どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、 結末は変わらない。 何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。 それでも私は今日も微笑む。 過去を知るのは、私だけ。 もう一度、大切な人たちと過ごすために。 もう一度、恋をするために。 「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」 十一度目の人生。 これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。

処理中です...