記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第21章 開戦前日

第290話 反逆の暴虎

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「――とまあ、こんなことが王宮であったッスけど、これでよかったんスよね? ロギウス殿下」
「ああ、上出来だよ、サイバラ。流石はルクガイア暗部として、ギャングレオ盗賊団に潜り込んでただけのことはあるね」
「……今は"元"ルクガイア暗部ッスけどね。ついさっき辞表を叩きつけて来たんで」

 ギャングレオ盗賊団の暴走の翌日。
 俺達はギャングレオ盗賊団の仮説アジトに集まっていた。

 ギャングレオ城の崩壊、ガルペラ侯爵邸への襲撃事件。
 それらから目をくらますため、シシバが緊急時のために用意しておいたこの仮説アジトが、俺達改革派の臨時拠点となった。

 戦力的にはこちらの圧倒的不利となってしまった。
 そこでロギウスは、ある作戦をサイバラに実行させた。

『サイバラがギャングレオ盗賊団を裏切ったように見せかけ、王国騎士団を誘き出す』

 そのためにサイバラはルクガイア暗部構成員【虎殺しの暴虎】として、王宮へ報告に向かっていた。
 そしてそれらの思惑が国王等の俺達の意思を汲む人間には分かるように、サイバラはジフウへ"ルクガイア暗部への辞表"を手渡してきた。

 この戦いの最終目的は"改革の実現"――"貴族制度の撤廃"。
 国王もそれを望んでいる以上、事前に知らせておくべきだと俺達は考えた。

「一応聞いおくが……本当に暗部を辞めてよかったんだな? サイバラ」
「当然ッスよ。むしろ清々したぐらいッス」

 俺はサイバラの心境を確認したが、全く問題ないようだ。
 今のサイバラは二つの顔を持つこともない。
 "ギャングレオ盗賊団特攻隊長"という本来あるべき場所に戻ってきたためか、清々しい表情をしている。

 ……グラサン半裸のスタイルも元に戻ったけど。

「それにしてもお前って結構演技派なんやな~。口調もこれまでと変わっとるし」
「口調については、"オレがオレ自身を騙す"ためにやってたことッスからね。これが俺の本当の姿ッス」

 シシバに口調のことを聞かれたサイバラは、シレっと胸の内を曝け出す。
 全てを理解したうえで受け入れられたサイバラに、もう自らを偽る必要もなくなっていた。

 ……こいつも部下三人ほどではないが、本来は少し変わった喋り方をするんだな。

「バクト公爵とガルペラ侯爵も本当にスンマセン……。オレなんかのために、オレが過去に犯した罪にも対応を考えてくれて……」
「謝罪する気持ちがあるのならば、今後のためにももっと働け。貴様の力は俺も信用している」
「それにサイバラさんが犯した罪も、元々は相手の責任が大きいのです。悪いことには違いないのですけど、一方的に責められないのです」

 サイバラはバクトとガルペラに対して深々と頭を下げる。
 サイバラが犯した『貴族殺し』という大罪。
 だがそれも元はと言えば、今現在俺達が打ち倒そうとしている"貴族の傲慢"の一部だった。

 サイバラが犯した罪は、サイバラ自身が良く理解している。
 ただ、この改革が終わった後にその件でサイバラが過剰に罪に問われないよう、バクトとガルペラで手を打つようだ。

「せやけど、ホンマに大丈夫なんか? ギャングレオ盗賊団の戦力は昨日の騒動で半減してもうたで? ある程度この仮説アジトに武器も用意しといたが、これだけで王国騎士団の相手なんかできるんか?」
「むしろ"こんな状況"だからこそ、僕達の方から打って出る効果が大きいんだ。敵の王国騎士団は"自分達の思惑通り"にことが進んでいると思い込んでいる。そういう時こそ、奇襲というものは効果があるんだ」

 シシバは本来よりも大幅に低下した戦力を稀有するが、ロギウスには相応の策が用意されているようだ。

 ルクガイア王国王子、ロギウス。
 この国の上層部の人間に詳しいだからこそ考えられる作戦が、その頭の中にあるようだ。
 この苦境を逆に利用し、逆転させる一手を――

「ロギウス、教えてくれ。お前が考えている、王国騎士団と戦うための策を……」
「……分かった。では、これから僕が考えている作戦を説明する。皆、心して聞いてほしい」

 ロギウスは作戦の概要を語り始めた――
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