記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第22章 改革の歌

第302話 改革の讃美歌

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「で、伝令! ジャコウ様! ルクガイア暗部のサイバラがギャングレオ盗賊団に寝返り、七番隊に攻撃を!」
「なんじゃと!? サイバラがわしらを裏切ったじゃと!?」
「さらに五番隊、六番隊もギャングレオ盗賊団本隊の襲撃に会い、苦戦中です!」

 サイバラの反逆。ギャングレオ盗賊団の想定外の準備。
 その報告は王国騎士団の総大将であるジャコウの耳にも入った。

「す、すぐに後詰の四番隊を出すのじゃ!」
「は、はい!」

 報告を聞いた王国騎士団軍師ジャコウはすぐさま四番隊を出撃させる。
 四番隊は騎馬兵を含む部隊でギャングレオ盗賊団本隊へと進軍を始めた。



 ――ここまでは改革派の軍師とも言えるロギウスの想定通りに動いていた。





「行くぞ、四番隊! すぐに先行した部隊の援護に――」
「あ、あれは!? スタアラ魔法聖堂か!?」

 ジャコウの指示で先行部隊の援護へと動いた、王国騎士団四番隊。
 だが、その経路にスタアラ魔法聖堂の衛兵隊が立ち塞がった。

「父さ――バクト公爵! お願いします!」
「フン。予定通りに来たか。貴様ら! 作戦通りに動け!」

 スタアラ魔法聖堂事実上の総大将であるミリアは、臨時で指揮を執るバクトに願い出た。
 その声を聴いたバクトは自らの護衛二人とスタアラ魔法聖堂衛兵隊に指示を出す。

「射撃開始」
「了解」

 バクトの護衛二人――ギャングレオ盗賊団精鋭護衛衆は、拳銃で騎馬兵を狙い始める。

「我らも続けぇえ!」
「騎馬兵だ! 騎馬兵をまず馬から落とすんだ!」

 スタアラ魔法聖堂の衛兵隊もそれに続く。

 狙いは騎馬兵。
 バクトの指示で動いた者達は、まず騎馬兵を馬から落とすことを画策する。
 精鋭護衛衆による射撃。衛兵隊による遠距離からの魔法攻撃。
 それらによって騎馬兵は馬から落ちていく――



「バクト様。四頭確保できました」
「よし、十分だ。早速繋げろ」

 そして騎馬兵から馬を奪ったバクトは、部下達にある準備をさせた。

 前日から用意しておいた二台の装甲車――
 その装甲車に馬を二頭ずつ繋げた。

「繋ぎ終わったな……。行け、貴様ら! 四番隊をなぎ倒せ!」
「御意」
「装甲車、出撃」

 バクトの合図で護衛二人は装甲車に繋げられた馬を走らせる。
 装甲車の中にはスタアラ魔法聖堂の衛兵が入り、用意された大量の弓矢を構える。

「発射! 弓矢発射! 四番隊目がけて撃ちまくれ!」
「ありったけ撃ち尽くすんだ! ミリア様とバクト公爵のためにも! 民のためにも!」

 四番隊の中央を二頭の馬を動力とした二台の装甲車が突破する。
 そしてその中から放たれる大量の弓矢――

「ぐ、ぐは!? なんだこの馬車は!?」
「か、固い!? こちらの攻撃が通用しない!?」

 装甲車から放たれた弓矢はどんどんと四番隊を打倒していく。
 四番隊も装甲車を止めようとするが、馬に引かれて縦横無尽に隊列を乱していき、さらには鉄の装甲で守られているために攻撃も通用しない。

「フン! たかだか王国騎士団の一個小隊如きが、このギャングレオ盗賊団元締めであるこの俺に、勝てると思うなぁああ!! 装甲車に続けぇええ!!」

 バクトは大声を上げて前線の部隊を叱咤激励する。
 スタアラ魔法聖堂の他の衛兵達も装甲車によってできた道を通り、四番隊との交戦を始める。

 バクトが打った一手により、戦局はスタアラ魔法聖堂の優勢となった――





「ひ、引き続き伝令! 先行部隊の援護に向かった四番隊ですが、スタアラ魔法聖堂の衛兵隊の妨害に会いました!」
「ば、馬鹿な!? スタアラ魔法聖堂までじゃと!?」
「スタアラ魔法聖堂の陣頭指揮はバクト公爵が執っている模様! 四番隊は劣勢です!」

 ジャコウの元に寄せられた更なる報告。
 簡単に勝てるはずだった戦いが、完全に裏返った戦局――
 自身の想定外の事態に、ジャコウは激しく焦り始めた。

「サ、サイバラめ~……! このわしを裏切りおって! わしへの忠誠はどうしたというのじゃ!?」
「……それは"虎"を"犬"と見間違えてたてめぇの責任だろうが? "虎"なんて"鬼"か"獅子"でもないと飼い慣らせねえよ」

 激昂するジャコウに、横で待機していた黒蛇部隊隊長のジフウは嫌味を述べる。
 こうなることが予想できていたジフウは、ジャコウに責任を押し付けるようにただ傍観しながら待機していた。

「お、おのれ~……! 仕方あるまい! 二番隊! 三番隊! 共に出撃するのじゃ! ギャングレオ盗賊団もスタアラ魔法聖堂も、まとめて始末するのじゃ!」

 この事態にジャコウは王国騎士団の二番隊と三番隊も出撃させる。
 本来想定したよりも過剰な戦力の動員だったが――

「ジャコウ。一番隊は出撃させないのか?」
「一番隊はわしの守りに必要じゃ! そもそも二番隊まで出した時点で、十分すぎる程じゃ!」

 ――ジフウの進言に耳を貸さず、ジャコウは一番隊を出そうとはしなかった。
 ジャコウは己の小心さ故に、とにかく自身の身を守ることを優先させた。



 ――これらも全て、ロギウスの計算の内であった。

「ジフウ! 貴様ら黒蛇部隊は王都正面の守りに入るのじゃ! 改革派の連中を王都に入れるでないぞ!」
「へいへい、分かったってーの。さて、俺も行くか」

 ジャコウはジフウ達黒蛇部隊を王都正面の守りへと配置させる。
 ジャコウはこの戦いでジフウ達黒蛇部隊の力を借りるわけにはいかない。

 ジャコウのバックにいるボーネス公爵。黒蛇部隊のバックにいる国王・ルクベール三世。
 自らが指揮する王国騎士団の力で勝利してこそ、ボーネス公爵の力が国王を上回ることの証明となるからだ。
 そのためにも黒蛇部隊には『王都正面の守り』という名目で待機させ、最前線に出られるわけにはいかなかった。

「ジフウ隊長。こんままジャコウさ言う通り動くけ、大丈夫ばいね?」

 王都正面へと向かう黒蛇部隊の中で、副隊長のポールが隊長のジフウに尋ねた。

「問題ないな。サイバラの反逆、ギャングレオ盗賊団の準備、スタアラ魔法聖堂の加入……。全ては描かれた上で動いているのだろうよ」

 ジフウはこれまでの流れが、全て計算されたものであることを理解していた。

「改革派にはロギウス殿下がいる。ジャコウの動きなんて、完全に読まれてるんだろうよ」
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