記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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第27章 追憶の番人『殿』

第401話 対決・ルクガイア王国王子①

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「ゼロラ殿。準備はよろしいかな……!」
「本当にやるんだな……」

 俺はロギウスに連れられ、王宮の屋上で互いに戦いの構えをとっている。

 先程ロギウスも言っていたが、この屋上は由緒正しい決闘場らしい。
 十分な広さがあり、余計なものは何もない。
 確かに一対一での決闘を行うならば、もってこいの場所だろう。



 ただ、今回俺とロギウスが決闘することになった理由――

 『どちらがリョウの夫に相応しいか?』

 それをこんな由緒ある場所で決闘して決めるのは、王族としてどうなのだろうか……?



「余計な考えは捨てていただきたい。僕は全力であなたを倒す。そして――リョウ大神官と結婚する!!」

 ロギウスは抜いた刀の切っ先を、こちらに向けるように構えている。
 先代勇者であるユメや、ロギウスの師匠でもあるイトーさんと同じ剣術流派――<理刀流>。
 ユメやイトーさんと同じ構えだが、おそらくロギウスの<理刀流>は二人には及ばない。
 これまでの戦い方を見ていて、ロギウスには魔法もあるが、それでも二人ほどの脅威は感じない。
 おそらくそのことは、ロギウス自身も理解しているだろう。

 それでも、ロギウスの目は真剣そのものだ。
 気持ちが先走って暴走した結果だが、なんとしても俺を倒し、リョウと結ばれたい気持ちが伝わってくる。



 もう少し話を聞いてほしかったが、どうやらそうもいかないらしい。
 俺もロギウスの気持ちに、応える必要があるな――

「……分かった、ロギウス。俺も誠心誠意、お前の気持ちに応える。どんな結果になっても、恨まないでくれよ?」
「無論、覚悟の上だ。……さあ、行くぞ!! ゼロラ殿ぉお!!」

 ロギウスは<理刀流>の構えのまま、俺へと一気に突進してきた。
 そこから放たれるのは、イトーさんと同じ<三段突き>。
 イトーさんと違い、ロギウスの動きには若さゆえの勢いがある。



 だが、それでもイトーさんには及ばない――

「甘いぞ! ロギウス!」
「くうぅ!?」

 俺はロギウスの刀を片手で掴んで押さえ込む。
 ロギウスの技はイトーさんと比べると、はるかに荒削りだ。
 勢いから来る速さは上だが、それもユメには遠く及ばない。

「フゥウン!」


 ガキンッ!


 そんなロギウスの刀を、俺はもう片方の手で弾き飛ばす。

 短時間だったが、これで決着が――



「まだだ!」


 カッ!!


「うぐぅ!? 魔法の光!? 目くらましか!?」

 刀を弾かれたロギウスは、即座に空いた手で魔法を使い、俺の顔へ目くらましを仕掛けてきた。
 俺の視界が一瞬眩み、その隙にロギウスは再度刀を手に取る。

「まだ諦めないのか、ロギウス……」
「ああ、まだ諦めないね。これは僕にとって、大事な決闘だ……!」

 ロギウスは強い決意を感じさせる瞳で、俺を睨んでくる。
 元々はリョウを賭けたロギウスの暴走からの決闘だが、それでもロギウスが本気なことに変わりはない。

 これほどまでにリョウのことを慕ってくれているのなら、俺はわざと負けてもいいだろう。



 だが――



「ゼロラ殿。僕に"わざと負ける"なんて考えは、遠慮願いたい。僕は正々堂々とした勝負の果てに、リョウ大神官の心を射止めたい。そうでなければ――男じゃない!!」

 そんなことはロギウス自身が認めてくれない。
 普段は冷静だが腹黒かったり、妙にこだわりが強かったりするが、こんな熱い一面も持ってたんだな。

 こういう熱い男は嫌いじゃない。
 だが、このまま勝負を続けても、ロギウスが勝つことはないだろう。
 この様子だと、ロギウスは俺にちゃんと勝たない限り、納得してくれない。

 さて、どうしたものか――

「考え事は後で願うよ。僕はとにかく、あなたを倒す! あなたを越えなければ、リョウ大神官に相応しい男にはなれない……!」

 ロギウスは再び<理刀流>の構えをとる。
 今のロギウスの目に映っているのは、この俺の姿だけだ。
 この決闘場である屋上からの風景も、ロギウスの目には映っていない。

 それほどまでに、俺を倒すことに集中している。
 全ては意中の相手を射止めるために――

「……仕方ない。ひとまずは俺も全力でお前を倒しにかかる。後のことは関係なくな……!」
「僕の心情を汲みとってくれたこと、感謝するよ。さあ……いざ!!」

 ロギウスは腰を落とし、俺へ突進する構えをとった――





「待ってくれ! 二人とも!」

 ――そんな時、俺とロギウス以外の誰かの声が、屋上に響き渡った。
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