記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

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最終章 それが俺達の絆

第448話 明暗夜光のルクガイア・急①

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「あー! 悪夢ちゃんだー!」
「『悪夢ちゃん』言うナ! ……イヤ、今はソレドコロではナイナ」

 今尚魔法の檻に捕らえられたミライから、『悪夢ちゃん』と呼称されたもう一人のミライ――
 ミライがラルフルから譲り受けて以来、ずっと被り続けていたその帽子にはいつの間にかミライの能力が染みこみ、<ミラークイーン>と同じような能力が宿っていた。

 "自らがいる場に、新たなミライを召還する"能力――

 その能力が現在のミライの窮地で発現し、【正義が生んだ怪物】とも称された、"最強のミライ"をここへと呼び寄せた。

「ミライ……。な、なんでお前が――」
「細かい事情ヲ話してイル時間はナイノダ、父ヨ。リフィーを倒せばコノ檻も破れるカト思ったガ……ソウモ行かないヨウダ」

 父ゼロラに説明する余裕もない状況を、"檻の外のミライ"は理解する。
 リフィーに攻撃を加えたことで効果を失うかと思われた、魔法の檻。
 だが今だに"本来のミライ"とリョウの二人は、檻の中に囚われている。

「ドウヤラ……コノ魔法の檻はリフィーだけでナク、レイキースの力もコモってイルようダナ……」
「つまりレイキースを倒さないと、二人を助け出せないってことか……」

 シシバとの決戦を中断されたゼロラだったが、愛娘の言葉に耳を傾け、冷静に状況を確認する。
 転落したリフィーと、今だに解放されない魔法の檻――
 何よりも優先すべきは、戦いの原因となっているこの状況であった。

 そしてそれは、シシバにとっても同じこと――

「……なあ、ゼロラはん。リフィーの奴、まだくたばってへんみたいやで」
「うぐぅ……! よ、よくもわたくしを……!」

 ミライの攻撃で倒れていたリフィーだったが、肩を押さえてよろめきながらも再び立ち上がる。
 自らに回復魔法をかけ、レイキースの操り人形となりながらも、目を見開いて敵意をむき出しにする。

 リフィー自身の意識はないが、その行動に迷いはない。
 元々ゼロラ達のことを障害としかとらえていなかったリフィーは、迷わず自らの力で立ち向かうように作戦を変える。

「こ……殺してあげるわ……! 賢者であるわたくしの魔法でぇえ!!」

 リフィーは両手を頭上にかざし、極大雷魔法をその間に作り出す。
 邪魔をされた怒りに身を任せ、その雷をゼロラ達に放とうとする――

「下がってイテクレ。ワタシの力で、ナントカしてミセル」
「娘のお前が頼りなのも気が引けるが……」
「せやかて、今はこの白いお嬢ちゃんに任せるしかないやろ」

 ミライ一人が前に立ち、魔法で防御する準備をとる。
 ゼロラとシシバではリフィーの魔法に対抗しきれない。
 今この場にいる戦力で立ち向かえるのは、ミライだけ――





 ――そう思っていた。



「死になさい!!」


 ――バッ!


 リフィーの両手から雷が放たれる直前、ミライのさらに前に何者かが躍り出た。


 バチバチバチィイイ!!


「そ、そんな!? わたくしの極大雷魔法を受けきった……!?」

 その何者かに全ての雷が集中するが、立ったまま完全に耐えきる。
 ゼロラ達三人を守るように現れたその人物は、俯いていた顔を上げながら声を発した――





「あぁ……多少は痒かったなぁ……。どの道、オレには効かねぇんだけどなぁ……!」
「サ、サイバラ!? お前、駆け付けてくれたんか!?」

 ゼロラ達の助けに入ったのはサイバラだった。
 コゴーダから報告を受け、いち早くこの場へと駆け付けたのだ。

「サイバラ……お前、以前にリフィーの雷魔法を食らった時は、黒焦げになってなかったか?」
「ああ、あれッスか? あれは演技ッスよ。当時のオレには、ルクガイア暗部としての立場もあったッスから」
「中々食えへん演技派やな~。せやけど……助かったで~! キシシシ!」
「思ったヨリも雷の本数ガ多かったナ……。助カッタ」

 サイバラの救援に、ゼロラ達も湧き上がる。
 心強い味方の参戦が、皆を勇気づけていた。

「ま、まだよ! わたくしには味方もいますわ! 出てきなさい!」

 そんなサイバラの邪魔を見ても、リフィーはまだ諦めない。
 <ライトブレーウォ>で洗脳した王国騎士団を呼び出し、自らに加勢させようとした――





「その『味方』ってのは、このおかしくなった王国騎士団のことか? 邪魔だから、とりあえず全員の両手両足の関節を外しておいたぞ」
「あ、あなたは……ジフウ隊長!?」

 ――そんな頼みの王国騎士団も、サイバラと同じようにやってきたジフウによって倒されていた。
 物陰に潜ませていたのだが、すでに全員ジフウによって戦闘不能になるまで叩きのめされてしまった。

「ジフウ!? お前も来てくれたのか!」
「今も胃はキリキリ痛むがな。この事態に、俺も寝てるわけにはいかねえよ」
「キシシシ! 病み上がりきってへんとこ、感謝するで~! ジフウの兄貴!」
「コレで戦況はコチラの有利ダナ……賢者リフィー!」

 もう一人のミライとサイバラに続き、ジフウの加勢。
 リフィーは人質からも引き離され、戦力となるのは自身のみ――



 ――戦況は明確に、リフィーの不利となっていた。



「こ、こんなことが……!? このままでは――」
『おい、リフィー。何をしている? 僕の計画を台無しにするつもりか?』
「レ、レイキース様!?」

 焦燥するリフィーの脳内に、リンクさせていたレイキースの声が響いた。
 リフィーが追い込まれたことを理解し、静かな怒りを込めた口調でレイキースが語り掛けてきた。

『お前がそんな奴ら相手に、臆する必要があるのか?』
「で、ですが……加勢も加わり、わたくし一人の力ではどうにも――」
『だったら、"アレ"を使え』

 リフィーが完全に怖気づいていることを感じ取ったレイキースは、次なる作戦をリフィーへ伝えようとした。

 その作戦は、仲間であるはずのリフィーのことすら考えない、レイキースのあまりに独善的な命令――





『ジャコウから奪った薬……お前にも渡したはずだ。あれを使え』
「……かしこまりました。レイキース様」





 脳内でレイキースの言葉を聞き、リフィーは懐から一本の注射を取り出した。
 それはかつてボーネス公爵が異形の怪物となった、禁断の薬――

 ただレイキースの命令に従う傀儡であるリフィーは、迷わずその注射を自らの腕に突き刺した――
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