457 / 476
最終章 それが俺達の絆
第457話 明暗夜光のルクガイア・飛④
しおりを挟む
「ハァ、ハァ……。もう少しだな……」
国王の私室を後にし、俺は一人で玉座の間へと向かう。
操っていた王国騎士団はリフィーの方に回していたためか、先へ進む障害などいなかった。
残るはこの扉の先――玉座の間。
レイキースはこの先で俺を待ち構えているのだろう。
魔法で傷を回復したとはいえ、連戦の疲弊は抜けきっていない。
この体でレイキースの相手をできるかは分からないが、それでもやるしかない。
もしかしたらラルフルとも戦わなければいけないが、とにかく優先すべきはレイキースだ。
レイキースさえ倒せば、全てが終わる。
「フゥ……よし!」
一息ついて呼吸を整えなおした俺は、意を決してその扉を開けた――
■
「……とうとうここまで来たか、ゼロラ。いや……【伝説の魔王】ジョウイン!」
「レイキース……!」
扉の先で奴は玉座の座って待っていた。
王都の人々を洗脳し、ミライとリョウを捕らえて人質とし、こうしてこの国を自らの色に染めようとしている、この騒動の元凶――
【栄光の勇者】――レイキース。
「おい。そこはお前が座っていい場所じゃないぞ。さっさと玉座からどけ」
「魔王が偉そうな口を叩くな。元よりこの国の王は無能だった。元々は貴族の言いなりで、今はこうして魔王を引き込むという、あまりに正義に反する行為の数々……。それならば、僕がこの玉座に座っていた方が余程相応しい」
俺の異議に対しても、レイキースは応じる姿勢を見せない。
自らを絶対とし、他の主義主張など認めない。
こんな奴がユメと同じ勇者なのかと思うと、吐き気さえ覚えてくる。
「レイキース。てめえは俺を倒すためだけに、ここまで人々を波乱に巻き込んだのか?」
「その通りだ。そもそもこの国の人間達の方がおかしいんだ。【伝説の魔王】だったお前を受け入れ、貴族の後ろ盾を失った僕が権力の座から落ちていく、改革という愚行……。それら全てを正当化していること自体、異常でしかない」
「そうやっててめえの考えに他の人々を巻き込んで、てめえ自身は満足か?」
「満足も何も、さっき言った通りに正しい姿に戻しているだけだ。これは勇者である僕に与えられた、責務というものだ」
なおも問いかける俺の言葉にも、レイキースはしっかりと聞く耳を持たない。
本当に何でこんな奴が、"勇者"になれたんだ……?
――いや、その疑問の答えはおそらく、レイキース自身が持っている。
「……レイキース。一つ俺の質問に答えろ」
「魔王が勇者である僕に質問だと? 身の程をわきまえろ。お前の話を聞く義理は――」
「だったら勝手に言わせてもらう。てめえの先代――【慈愛の勇者】ユメについてだ」
「……何が言いたい?」
俺がユメの名前を出すと、レイキースは険しい顔をしながら興味を示した。
ようやく俺の言葉に興味を持ったのが、この話とはな――
俺が【伝説の魔王】ジョウインとして死んだ時、レイキースは俺にこう語っていた――
『先代勇者ユメならば、魔王である貴様に与した罪で処刑された』
――だがこの話はルクガイア王国に伝わる伝承とは異なる。
もしレイキースが伝承を知っているならば、そんな話は出てこないはずだ。
伝承の内容はロギウスやバクトによって、こう変えられている――
『先代勇者ユメは魔王の伴侶となり、孤独の中で死んでいった』
――もちろんこの内容も事実ではない。
こうやって間違った伝承が伝えられたのも、"追憶の領域"を守る四人によって、ユメの名が後世に悪名として残らないように施された配慮だった。
むしろ事実という点で言えば、レイキースの言っていることの方が近い。
"人と魔の共存"というユメの思想を妬み、それを消し去るためにユメに刺客を差し向けた貴族――
その貴族自身はイトーさんによって倒されたが、下手人の正体は今でも分からない。
だが、"このこと"が事実ならば、全てに辻褄があってくる――
「先代勇者を……ユメを殺したのは、てめえだな? レイキース……!」
俺は考え付いた結論を、レイキースへと投げかけた。
その俺の言葉を聞いたレイキースは――
「……フン。魔王のくせに頭だけは回るようだ。お前の思っている通り……僕があの"裏切り者"を殺した」
――なんの感慨もなく、あっさりと肯定した。
俺の中で、どんどんと怒りがこみあげてくる。
今すぐにでもこいつを殴り飛ばしたい。
だが俺は真実を確かめるためにも、拳を握ってただ耐えた。
耐えて……レイキースの次の言葉を待った。
「どうせお前はここで死ぬんだ。冥土の土産に教えてやろう。お前が知りたがっている、"あの日"の真実を――」
国王の私室を後にし、俺は一人で玉座の間へと向かう。
操っていた王国騎士団はリフィーの方に回していたためか、先へ進む障害などいなかった。
残るはこの扉の先――玉座の間。
レイキースはこの先で俺を待ち構えているのだろう。
魔法で傷を回復したとはいえ、連戦の疲弊は抜けきっていない。
この体でレイキースの相手をできるかは分からないが、それでもやるしかない。
もしかしたらラルフルとも戦わなければいけないが、とにかく優先すべきはレイキースだ。
レイキースさえ倒せば、全てが終わる。
「フゥ……よし!」
一息ついて呼吸を整えなおした俺は、意を決してその扉を開けた――
■
「……とうとうここまで来たか、ゼロラ。いや……【伝説の魔王】ジョウイン!」
「レイキース……!」
扉の先で奴は玉座の座って待っていた。
王都の人々を洗脳し、ミライとリョウを捕らえて人質とし、こうしてこの国を自らの色に染めようとしている、この騒動の元凶――
【栄光の勇者】――レイキース。
「おい。そこはお前が座っていい場所じゃないぞ。さっさと玉座からどけ」
「魔王が偉そうな口を叩くな。元よりこの国の王は無能だった。元々は貴族の言いなりで、今はこうして魔王を引き込むという、あまりに正義に反する行為の数々……。それならば、僕がこの玉座に座っていた方が余程相応しい」
俺の異議に対しても、レイキースは応じる姿勢を見せない。
自らを絶対とし、他の主義主張など認めない。
こんな奴がユメと同じ勇者なのかと思うと、吐き気さえ覚えてくる。
「レイキース。てめえは俺を倒すためだけに、ここまで人々を波乱に巻き込んだのか?」
「その通りだ。そもそもこの国の人間達の方がおかしいんだ。【伝説の魔王】だったお前を受け入れ、貴族の後ろ盾を失った僕が権力の座から落ちていく、改革という愚行……。それら全てを正当化していること自体、異常でしかない」
「そうやっててめえの考えに他の人々を巻き込んで、てめえ自身は満足か?」
「満足も何も、さっき言った通りに正しい姿に戻しているだけだ。これは勇者である僕に与えられた、責務というものだ」
なおも問いかける俺の言葉にも、レイキースはしっかりと聞く耳を持たない。
本当に何でこんな奴が、"勇者"になれたんだ……?
――いや、その疑問の答えはおそらく、レイキース自身が持っている。
「……レイキース。一つ俺の質問に答えろ」
「魔王が勇者である僕に質問だと? 身の程をわきまえろ。お前の話を聞く義理は――」
「だったら勝手に言わせてもらう。てめえの先代――【慈愛の勇者】ユメについてだ」
「……何が言いたい?」
俺がユメの名前を出すと、レイキースは険しい顔をしながら興味を示した。
ようやく俺の言葉に興味を持ったのが、この話とはな――
俺が【伝説の魔王】ジョウインとして死んだ時、レイキースは俺にこう語っていた――
『先代勇者ユメならば、魔王である貴様に与した罪で処刑された』
――だがこの話はルクガイア王国に伝わる伝承とは異なる。
もしレイキースが伝承を知っているならば、そんな話は出てこないはずだ。
伝承の内容はロギウスやバクトによって、こう変えられている――
『先代勇者ユメは魔王の伴侶となり、孤独の中で死んでいった』
――もちろんこの内容も事実ではない。
こうやって間違った伝承が伝えられたのも、"追憶の領域"を守る四人によって、ユメの名が後世に悪名として残らないように施された配慮だった。
むしろ事実という点で言えば、レイキースの言っていることの方が近い。
"人と魔の共存"というユメの思想を妬み、それを消し去るためにユメに刺客を差し向けた貴族――
その貴族自身はイトーさんによって倒されたが、下手人の正体は今でも分からない。
だが、"このこと"が事実ならば、全てに辻褄があってくる――
「先代勇者を……ユメを殺したのは、てめえだな? レイキース……!」
俺は考え付いた結論を、レイキースへと投げかけた。
その俺の言葉を聞いたレイキースは――
「……フン。魔王のくせに頭だけは回るようだ。お前の思っている通り……僕があの"裏切り者"を殺した」
――なんの感慨もなく、あっさりと肯定した。
俺の中で、どんどんと怒りがこみあげてくる。
今すぐにでもこいつを殴り飛ばしたい。
だが俺は真実を確かめるためにも、拳を握ってただ耐えた。
耐えて……レイキースの次の言葉を待った。
「どうせお前はここで死ぬんだ。冥土の土産に教えてやろう。お前が知りたがっている、"あの日"の真実を――」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる