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魔女の誕生編
ep4 トラックが迫ってるのは大丈夫じゃない!
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こちらに向かってくるトラックは、明らかに居眠り運転をしている。
異常なまでのスピードで、車体も蛇行しているのが分かる。
しかも最悪なことに、トラックが向かう方向には――
「た……たすけてー!!?」
「マ、マズい!? トラックが!?」
――さっきの園児がいる。
タケゾーも慌てるが、トラックはもう園児にぶつかる寸前だ。
助けようにも、間に合いそうにない――
ダッ!!
「そ、空鳥!?」
――そんな結論に至るより早く、アタシの体は動いていた。
タケゾーの声にも反応せず、助けを求める園児へと駆け寄る。
間に合わないなら動くだけ無駄? 今駆け付けたところで巻き込まれて無駄死に?
走りながらそんなことを考えるが、そうであっても関係ない。
子供が助けを求めていて、動かない理由がない。理由なんて必要ない。
――そんな気持ちがリミッターを外したのか、アタシは自分でも驚くほどの速さで園児のもとへと駆けつけられた。
「ジュンせんせー!!」
「大丈夫! アタシが守るから!!」
トラックよりも早く園児のもとに辿り着くと、必死にその体を抱きしめて身をかがめる。
トラックはもうこちらに衝突する直前。逃げる暇なんてない。
それでも、アタシの頭の中にあるのは、腕の中で怯えるこの子を守ることのみ。
「クッソォオオ!!」
ヤケクソなのは百も承知。それでも、何かやらずにはいられない。
アタシは迫りくるトラックを振り払うように、右手の拳を大きく振るった――
バガァァアアン!!
「……は? へ?」
――それが最後の悪あがきになると思ったが、轟音と共に予想外の光景が眼前へと広がる。
人間の拳で暴走するトラックを止められるはずがない。パワーも質量も違いすぎる。
こうして冷静になって考えてみれば、アタシのやったことなど無駄なあがきでしかなかったはずだ。
それだというのに――
「こ、これ……アタシがやったの……?」
――アタシの拳はトラックを本当に弾き飛ばしてしまった。
弾き飛ばされたトラックは、そのまま反対の壁に激突して停止。アタシも腕の中の園児も無事だ。
そうなるために動いたのだから、この結果自体は喜んで受け入れるべきだ。
――だが、そんな喜びなんてアタシ自身がやったことで吹き飛んでしまう。
素手で暴走トラックを殴り飛ばした? それって人間技? アタシって本当に人間だよね?
自分で自分を理解できず、ただただ茫然としてしまう。
「ジュ、ジュンせんせー!」
「だ、だだ、大丈夫だからね! もう無事だからね!」
そんな茫然自失とするアタシの耳に、腕の中にいる園児の声が届いて我に返る。
助かったことによる安堵よりも、この意味不明な状況に動揺して声が震えるが、それでもアタシを呼んだ園児の方へと目を向ける。
「せんせーのかみのけ! おそらのいろみたい!」
「……え? 髪の毛? 空の色?」
そして園児が語る言葉を聞き、アタシも思わず自らの髪を指で摘まんで確認してみる。
アタシの髪色は本来、普通の黒色だ。染色も何もしていない。
それだというのに、アタシの髪色は確かにいつもと違う――
――薄い青色。
腕の中の園児が言った通り、まるで空の色だ。
それに、髪型もいつもとわずかに異なっている。
まるで、静電気でふわりと逆立ったような――
「そ、空鳥ぃ!? 無事かぁあ!?」
――そうやって自分の髪に気を取られていると、アタシ達の方にタケゾーが必死な顔をして駆け寄って来た。
相変わらずの心配性だとも思うが、トラックに轢かれそうになったのだ。そりゃ、そんな顔にもなる。
――そんなタケゾーの姿を見ていたら、アタシが摘まんでいた自分の髪の毛も元に戻っていく。
色は黒髪に戻り、逆立っていた毛も落ち着いて、いつものポニーテールになった。
「よ、よかった! 無事だったんだな! だが、トラックが急にハンドルを切ってくれたからよかったものを、そのまま突っ込んでたら二人とも無事じゃ済まなかったぞ!? 無茶するなよ!?」
「え? あ、ああ。そうだね。ごめん……」
駆け寄ってくれたタケゾーなのだが、アタシと園児に怪我はないか、焦りながらも確認してくれる。
ただ、トラックと衝突しそうだった時の詳細な様子は見えていなかったらしい。
アタシがトラックを殴り飛ばしたことも、アタシの髪の毛が空色に変化していたことも、タケゾーからはトラックが死角になって見えていなかったようだ。
――正直、見られてなくて助かった。
アタシの身に起こっている、この不可解な現象の数々。
ヤバい液体を飲んだことがバレるよりも、まずはアタシ自身で納得できるように考察しないと、説明も何もない。
こうやって無事を確認できた今でも、アタシの頭の中はパンク寸前だ。
「タ、タケゾー! 悪いんだけどさ、後のことは任せるね! アタシ、先に帰らせてもらうから!」
「お、おい! 空鳥!? お前、一応は病院に行って――」
「ダイジョーブっての! そいじゃ、アディオース!」
そんな動揺しまくりなせいで、アタシは現場検証やら何やらをタケゾーへと押し付け、猛ダッシュでその場を後にする。
『アディオス』なんて普段使わない言葉まで使ってるし、テンパり具合は半端ない。
「て、てか! あんなことがあったのに、アタシ、メッチャ走れてない!?」
そんなテンパり+トラックを殴り飛ばした後だというのに、アタシの猛ダッシュは留まるところを知らない。
むしろ、疲れることもなくどんどんと加速している。測ってないけど、陸上で世界記録が狙えそうなタイムじゃない?
そういえば、保育園に向かう時もメチャクチャ走ったのに、ろくに息切れもしていなかったが――
「……これ。マジで精密に検査した方がよくない?」
――足を止めて考え直してみるが、今のアタシの体は異常だ。
マグネットリキッドを飲んだ影響で、磁力を帯びているところまでは理解できる。
だが、このダッシュのスピードとスタミナ、トラックにも負けないパワーはどう説明する?
髪型や髪色だって、何故変化した?
トラックに轢かれそうになったから、どこかお約束な異世界転生間際となり、チート能力だけが授けられたとか?
んなわけない。そんなファンタジーな話、アタシの技術者としての知見が認めない。
てか、あれって転生した後に色々と能力を授けられるって話のはずだし。
「いやいや……。そんなファンタジーじゃなくて、これってどう考えても……」
正直、要因は一つしか思い当たらない。誤って服用したマグネットリキッドの影響だろう。
それでも、このパワーや髪の変化への因果関係は想像もつかない。
アタシは独り言を呟きながら、これからどうするかを落ち着いて考え直す。
「……とりあえず、空鳥工場に戻るか。あそこでなら、アタシの体を調べられる機材もあるし」
まず必要なのは、アタシの身に起こっている数々の事象との因果関係の調査。
自分で自分の身をレビューしつくし、こうなった原因に納得しないと気が済まない。
幸い、空鳥工場にはそれができるだけの機材が揃っている。
両親が遺してくれた物が、まさかこんな形で役に立つとは思わなかったけど。
「よーし! そもそもはアタシの開発から始まったことだし、まあ、なんとかなるっしょ!」
調べるための算段はある。そう考えると、これまでの動揺も収まって来た。
後はこの先にある、我が愛しの空鳥工場でまずは身体検査を――
「おお、隼。戻って来たか。悪いんだが、この工場はわしの判断で売却させてもらうよ」
「た、鷹広のおっちゃん!?」
異常なまでのスピードで、車体も蛇行しているのが分かる。
しかも最悪なことに、トラックが向かう方向には――
「た……たすけてー!!?」
「マ、マズい!? トラックが!?」
――さっきの園児がいる。
タケゾーも慌てるが、トラックはもう園児にぶつかる寸前だ。
助けようにも、間に合いそうにない――
ダッ!!
「そ、空鳥!?」
――そんな結論に至るより早く、アタシの体は動いていた。
タケゾーの声にも反応せず、助けを求める園児へと駆け寄る。
間に合わないなら動くだけ無駄? 今駆け付けたところで巻き込まれて無駄死に?
走りながらそんなことを考えるが、そうであっても関係ない。
子供が助けを求めていて、動かない理由がない。理由なんて必要ない。
――そんな気持ちがリミッターを外したのか、アタシは自分でも驚くほどの速さで園児のもとへと駆けつけられた。
「ジュンせんせー!!」
「大丈夫! アタシが守るから!!」
トラックよりも早く園児のもとに辿り着くと、必死にその体を抱きしめて身をかがめる。
トラックはもうこちらに衝突する直前。逃げる暇なんてない。
それでも、アタシの頭の中にあるのは、腕の中で怯えるこの子を守ることのみ。
「クッソォオオ!!」
ヤケクソなのは百も承知。それでも、何かやらずにはいられない。
アタシは迫りくるトラックを振り払うように、右手の拳を大きく振るった――
バガァァアアン!!
「……は? へ?」
――それが最後の悪あがきになると思ったが、轟音と共に予想外の光景が眼前へと広がる。
人間の拳で暴走するトラックを止められるはずがない。パワーも質量も違いすぎる。
こうして冷静になって考えてみれば、アタシのやったことなど無駄なあがきでしかなかったはずだ。
それだというのに――
「こ、これ……アタシがやったの……?」
――アタシの拳はトラックを本当に弾き飛ばしてしまった。
弾き飛ばされたトラックは、そのまま反対の壁に激突して停止。アタシも腕の中の園児も無事だ。
そうなるために動いたのだから、この結果自体は喜んで受け入れるべきだ。
――だが、そんな喜びなんてアタシ自身がやったことで吹き飛んでしまう。
素手で暴走トラックを殴り飛ばした? それって人間技? アタシって本当に人間だよね?
自分で自分を理解できず、ただただ茫然としてしまう。
「ジュ、ジュンせんせー!」
「だ、だだ、大丈夫だからね! もう無事だからね!」
そんな茫然自失とするアタシの耳に、腕の中にいる園児の声が届いて我に返る。
助かったことによる安堵よりも、この意味不明な状況に動揺して声が震えるが、それでもアタシを呼んだ園児の方へと目を向ける。
「せんせーのかみのけ! おそらのいろみたい!」
「……え? 髪の毛? 空の色?」
そして園児が語る言葉を聞き、アタシも思わず自らの髪を指で摘まんで確認してみる。
アタシの髪色は本来、普通の黒色だ。染色も何もしていない。
それだというのに、アタシの髪色は確かにいつもと違う――
――薄い青色。
腕の中の園児が言った通り、まるで空の色だ。
それに、髪型もいつもとわずかに異なっている。
まるで、静電気でふわりと逆立ったような――
「そ、空鳥ぃ!? 無事かぁあ!?」
――そうやって自分の髪に気を取られていると、アタシ達の方にタケゾーが必死な顔をして駆け寄って来た。
相変わらずの心配性だとも思うが、トラックに轢かれそうになったのだ。そりゃ、そんな顔にもなる。
――そんなタケゾーの姿を見ていたら、アタシが摘まんでいた自分の髪の毛も元に戻っていく。
色は黒髪に戻り、逆立っていた毛も落ち着いて、いつものポニーテールになった。
「よ、よかった! 無事だったんだな! だが、トラックが急にハンドルを切ってくれたからよかったものを、そのまま突っ込んでたら二人とも無事じゃ済まなかったぞ!? 無茶するなよ!?」
「え? あ、ああ。そうだね。ごめん……」
駆け寄ってくれたタケゾーなのだが、アタシと園児に怪我はないか、焦りながらも確認してくれる。
ただ、トラックと衝突しそうだった時の詳細な様子は見えていなかったらしい。
アタシがトラックを殴り飛ばしたことも、アタシの髪の毛が空色に変化していたことも、タケゾーからはトラックが死角になって見えていなかったようだ。
――正直、見られてなくて助かった。
アタシの身に起こっている、この不可解な現象の数々。
ヤバい液体を飲んだことがバレるよりも、まずはアタシ自身で納得できるように考察しないと、説明も何もない。
こうやって無事を確認できた今でも、アタシの頭の中はパンク寸前だ。
「タ、タケゾー! 悪いんだけどさ、後のことは任せるね! アタシ、先に帰らせてもらうから!」
「お、おい! 空鳥!? お前、一応は病院に行って――」
「ダイジョーブっての! そいじゃ、アディオース!」
そんな動揺しまくりなせいで、アタシは現場検証やら何やらをタケゾーへと押し付け、猛ダッシュでその場を後にする。
『アディオス』なんて普段使わない言葉まで使ってるし、テンパり具合は半端ない。
「て、てか! あんなことがあったのに、アタシ、メッチャ走れてない!?」
そんなテンパり+トラックを殴り飛ばした後だというのに、アタシの猛ダッシュは留まるところを知らない。
むしろ、疲れることもなくどんどんと加速している。測ってないけど、陸上で世界記録が狙えそうなタイムじゃない?
そういえば、保育園に向かう時もメチャクチャ走ったのに、ろくに息切れもしていなかったが――
「……これ。マジで精密に検査した方がよくない?」
――足を止めて考え直してみるが、今のアタシの体は異常だ。
マグネットリキッドを飲んだ影響で、磁力を帯びているところまでは理解できる。
だが、このダッシュのスピードとスタミナ、トラックにも負けないパワーはどう説明する?
髪型や髪色だって、何故変化した?
トラックに轢かれそうになったから、どこかお約束な異世界転生間際となり、チート能力だけが授けられたとか?
んなわけない。そんなファンタジーな話、アタシの技術者としての知見が認めない。
てか、あれって転生した後に色々と能力を授けられるって話のはずだし。
「いやいや……。そんなファンタジーじゃなくて、これってどう考えても……」
正直、要因は一つしか思い当たらない。誤って服用したマグネットリキッドの影響だろう。
それでも、このパワーや髪の変化への因果関係は想像もつかない。
アタシは独り言を呟きながら、これからどうするかを落ち着いて考え直す。
「……とりあえず、空鳥工場に戻るか。あそこでなら、アタシの体を調べられる機材もあるし」
まず必要なのは、アタシの身に起こっている数々の事象との因果関係の調査。
自分で自分の身をレビューしつくし、こうなった原因に納得しないと気が済まない。
幸い、空鳥工場にはそれができるだけの機材が揃っている。
両親が遺してくれた物が、まさかこんな形で役に立つとは思わなかったけど。
「よーし! そもそもはアタシの開発から始まったことだし、まあ、なんとかなるっしょ!」
調べるための算段はある。そう考えると、これまでの動揺も収まって来た。
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【お知らせ】6/22 完結しました!
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