空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
38 / 465
魔女の誕生編

ep38 警察の研究施設におじゃましちゃおう!

しおりを挟む
 タケゾーとちょっと喧嘩しちゃったけど、無事に仲直りできた翌日。アタシは警察の研究施設へとやって来た。
 なんでも、警部であるタケゾー父はアタシの亡くなった両親と共に、この施設で共同開発をしていたようだ。

「はえ~……! ここの施設にある機材、個人どころか並の企業でも手が届かないような、超高性能品ばっかじゃん……!」
「隼ちゃんなら、流石にこれらの機器の性能は理解できるか。おそらく、俺よりも詳しいだろうな」

 タケゾー父に案内されて、アタシは施設の奥へと進んでいく。
 その途中で目に入るのは、世界屈指のメーカーが作ったスパコンだの、マイクロレベルの設計図にも対応した3Dプリンタだの、とにかく性能がとんでもない。
 アタシの両親って、こんな凄いところでも働いてたのか。娘のアタシ、関心と同時に唖然。

「……なあ。俺にはイマイチ凄さが分からないんだが? 正直、どれもこれも凄そうで違いが分からない」
「タケゾーもこれぐらいのことは覚えときなよ。今のご時世、常識っしょ?」

 そしてアタシの隣では、案内人の息子であるタケゾーも一緒についてきている。
 別にタケゾー自身が何か関係があるわけではないのだが、昨日の話のついででついてきたって感じ。
 タケゾー父もアタシとタケゾーの仲が気になっているのか、こうやって一緒にいる機会を設けてくれたようだ。
 まあ、タケゾーも父親の了承を得てここに入ってるわけだし? 大丈夫でしょ。多分。



「空鳥さん、タケゾーさん。昨日は私の不用意な対応により、お二人の仲を険悪にさせて申し訳ございませんでした……」
「それは別にいいんだけど……この人がいるのは予想外だった」
「まさか、洗居さんまで一緒にいるなんて……」



 ただ、もう一人だけアタシ達と一緒にいる人物がいる。アタシとタケゾーの仲違いの原因となってしまった洗居さんだ。
 その洗居さんはアタシとタケゾーに何度も頭を下げて謝罪してくれている。
 別にもう過ぎた話だし、アタシもタケゾーも気にしてない。むしろ、これ以上の謝罪はこっちが困る。

 ――で、そんな洗居さんがここにいることには、きちんとした理由がある。
 どうやら、洗居さんはタケゾー父からここの清掃業務を請け負ったようだ。
 以前に百貨店でチラッと話してたけど、本当に警察関係施設にまで掃除しに来ちゃったよ、この人。

 ――まあ、これまでも組事務所やら国会議事堂やらを掃除していたらしいので、今更な話ではある。

「三人に先に言っておくが、ここの施設には国家機密レベルの開発物だってある。他所での口外は原則禁止で願うよ」
「そ、そんな凄い場所にアタシ達を招いて、本当に大丈夫なわけ?」
「隼ちゃんについてはご両親が関与していたし、是非とも見ておいて欲しいものだ。武蔵は口外した場合、すぐに俺が殴って叱りつける。洗居さんに関してはそこまで入らず、施設の侵入可能エリアの清掃を頼む」
「なんだろう。タケゾーだけ扱いがぞんざい」
「まあ、俺の息子だからな。ハハハ!」

 色々と気になることはあるが、アタシ達は施設の奥へとどんどん進んでいく。
 途中で洗居さんとはタケゾー父の言っていた通り、仕事の都合で別行動となるが、アタシとタケゾーはそのまま先へと進む。
 何やら最上階へと進んでいくエレベーターに乗ったりもして、施設内でもいかにも重要そうな場所を目指した。





「これが隼ちゃんのご両親と共同開発していたものだ。結局は二人が亡くなったことで、今は開発も一時中断しているがね」
「な……なな……!? 何だこれぇぇええ!?」

 そうしてタケゾー父が目的のものを見せてくれたのだが、思わずアタシは目を見開いて絶叫してしまう。
 これでも独自技術と両親の遺した技術により、実はハイテクな空色の魔女なんてやってるんだ。多少のことでは動揺しない。

 ――でも、目の前にあるものはその『多少のこと』を完全に超えていた。

「なあ、これってパワードスーツみたいなものだよな? そんなに凄いのか?」
「凄いなんてレベルじゃないっての! まだ開発途中みたいだけど、こんな素材や原理はアタシも全然知らないよ!?」

 一緒に来たタケゾーには、目の前にあるものの凄さが理解できないらしい。
 タケゾー父が見せてくれたのは、一見するとただのパワードスーツ。いや、パワードスーツがある時点でも結構凄い。
 ただ、アタシはその仕様書をタブレットで確認させてもらい、これがもはやとんでもないとしか言いようのないものであることに気付く。


 ――開発コードネーム『ジェットアーマー』
 吟味したカーボン素材による高い防御性と軽量性を両立し、頭から足の先まで覆いつくすフルアーマータイプ。
 当然それだけのはずもなく、注目すべきはその機能面。
 アタシも初めて見る瞬発高出力で、小型かつ軽量なジェットシステム。それを背中に搭載することで、飛行能力をも可能としている。
 それどころか手や足にもジェットが装備されており、これならばその推進力を格闘能力に転換し、プロの格闘家が裸足で逃げ出すようなパンチやキックだって可能。
 装着者に負担がかからないよう、アーマー内部の緩衝性能もバッチリだ。

 そして何よりもヤバいのが、これらの機能を装着者が自在に使いこなせるようにする、脊椎直結制御回路。
 装着者の脊椎に直接信号線を接続し、その脳信号で機能を操作できるようにプログラムされている。
 早い話、このジェットアーマーを扱うのに、何か特別な免許なんて必要ない。
 これを着れば誰だって、今日からすぐにスーパーマンだ。


「あっ……でも、脊椎直結制御回路については、まだ未完成なんだね……」
「そこを完成させる前に、君の両親が亡くなってしまったからね……」

 ただ、このジェットアーマー自体がそんな簡単な話ではない。
 アタシもタブレットで開発データに目を通すが、これらの機能を動かす制御回路は未完成のままだ。
 制御回路自体はすでに動かせるようになっており、装着者との脊椎接続も可能となっている。

 問題なのは、制御回路が脊椎と直結することによる、装着者への精神汚染だ。
 反応速度と機能の安定でこういうスタンスをとっているのだろうが、人の脊椎への干渉はかなりの危険が伴う。
 現にシミュレーションにおいて、装着者への神経インターフェイス汚染が発生し、感情を大きく不安定にさせてしまう結果が出ている。
 もしも実際にこれを稼働させれば、装着者は自身の怒りや欲望に身を任せ、リミッターが外れたように大暴れしてしまうだろう。

「このジェットアーマーはプロトタイプだが、仮に完成していれば量産体制を引くことだってできる」
「本当にそれができたら、この街の犯罪率も一気に低下するだろうねぇ」
「できれば、の話だがな。それに、これほどの発明品だ。あくどい連中の手に渡って、逆に利用されるリスクだってある」

 タケゾー父の見解はもっともだ。正直、アタシは今でもこんなとんでもフルアーマーの開発データを見ても良いものかと不安になってくる。
 このジェットアーマーには、安全装置として承認システムも必要不可欠だろう。

 脊椎直結制御回路の完成。承認システムの設定。
 これらができれば、大凍亜連合といった反社組織だって一網打尽にできそうだ。

 ――ぶっちゃけ、空色の魔女なんていらなくなる。
 それほどまでに、ジェットアーマーは高いスペックを誇っている。

 まあ、アタシも平和が一番だし、出番が減ってもそれはそれで構わないんだけど。

「ところで隼ちゃん。君ならこのジェットアーマーの開発を、続けることができないかね?」
「できなくはない……と思う。正直、これはアタシの規格外の発明品だよ。……でも、全く分からないわけじゃない。前にも似たようなことがあったけど、アタシになら父さんや母さんの研究を引き継げると思うし……引き継ぎたい」

 タケゾー父がわざわざこうして、アタシを警察の研究施設にまで連れ来た理由が見えてきた。
 これも工場に隠されていたデータ同様、アタシの両親の遺産と言える。
 強大な科学技術は人のためになるが、扱いを間違えれば逆に危険へと巻き込んでしまう。

 ――危険を回避し、世のため人のためにも、アタシはこの手でジェットアーマーを完成させたい。
 蛙の子は蛙。アタシもやはり技術者の子だ。
 それに何より、両親が完成させられなかったものならば、娘のアタシが是非とも引き継ぎたい。

「では、今後は隼ちゃんによろしく頼むよ。必要な部品があれば、いくらでも言ってくれ。こちらでも星皇カンパニーと提携しており、材料には困らないはずだ」
「星皇カンパニーと!? それなら、期待もできるねぇ!」

 まずは口約束といった程度だが、アタシはタケゾー父からジェットアーマーの開発を請け負った。
 しかもあの星皇カンパニーとも提携してるだって? それを聞いただけでも希望が見えてくる。
 もしかしたら、星皇社長とも今後関わっちゃうのかも。テンション上がっちゃう。

「俺にはもう、何が何やらなんだけど?」
「まあ、アタシの技術者としての新しいクライアントができたってことだよ。タケゾーもそこは素直に喜んどいて」
「あ、ああ……。まあ、親父からの仕事なら間違いはないか」

 一緒に話を聞いていたタケゾーだが、どうやら内容について行くことはできなかったらしい。
 専門外のタケゾーなら仕方ないか。これは完全にアタシの分野だ。

「手続きはまた別として、もうすぐ昼食だ。ひとまず、食堂スペースにでも行くか」
「それなら、洗居さんも呼んでいいかな? あの人、こっちから伝えないと、昼食の存在を忘れることもあるし」
「そ、そうか。流石は超一流の清掃用務員。仕事熱心……過ぎるな」

 アタシ達はジェットアーマーが置かれた研究室を後にし、エレベーターに乗りながら食堂を目指す。
 丁度お腹もすいてきたし、洗居さんにも事情の説明が必要だ。
 アタシがジェットアーマーの開発に入れば、清掃の仕事に入るのも難しく――



「……ん? なあ、空鳥。あそこに見えるのって確か……?」



 ――少し考え事をしながらエレベーターに乗っていると、タケゾーが窓の外に何かを見つけたようだ。
 こっちは色々と考えないといけないことがあるのに、タケゾーは呑気なものだ。まあ、直接的には関係してないから当然だけど。
 ただ、どうにもその言葉が気になって、アタシも窓の外に目を向けてみると――



「あれって……鷹広のおっちゃん?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...