空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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怪鳥との決闘編

ep86 仇敵をようやく追い詰めた!

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「やっぱり潜んでたか! お仲間のスナイパーさん!」

 アタシはこちらに近づく風切り音を耳にするより早く、すでに全身に電磁フィールドを展開済みだ。
 このデザイアガルダの仲間である、ラルカと呼ばれる狙撃手の存在。

 ――デザイアガルダが追い詰められた今ならば、アタシの邪魔をしてくると読んでいたよ。


 バチィィイン!


「ライフルの弾! タケゾー! スナイパーはあっちの方角だ!」

 アタシに飛んできたライフル弾は電磁フィールドでガード。さらにはライフル弾が飛んできた方角から、スナイパーがいる方角にも見当がつく。
 すぐさま近くに潜んでいるタケゾーに声をかけ、事前に打ち合わせた通りに動いてもらう。


 カッ!


「いたぞ! あそこだ!」
「ッ!?」

 タケゾーの乗っているバイクのハイビームで、アタシが指さした方角を照らしてもらう。
 目的はスナイパーの炙り出し。デザイアガルダにラルカと呼ばれる味方がいることはこっちも承知だ。
 アタシもタケゾーも一瞬だけビルの上にその姿を確認するが、すぐさま逃げ去るように消えてしまった。
 わずかに見えたその姿は、どこかで見たようなフードを被った紺のコート姿。
 でも迷彩柄なんて入ってなかったし、大凍亜連合の牙島のようには見えない。

 ――誰かは分からずじまいだが、ここまで警戒されてしまえば、スナイパーも簡単には動けまい。

「タケゾー。悪いんだけど、ちょっと周囲を警戒しててもらえる?」
「分かってる。隼はその怪鳥を頼むぞ」

 近くに寄って来たタケゾーに軽く目配せしながらお願いし、タケゾーはバイクに乗りながらその場を離れていった。
 いったんはスナイパーの追撃を振り切ったとはいえ、まだどこに潜んでいるかも分からない。
 周囲の警戒はタケゾーに任せて、アタシは右手に持ったデバイスロッドをデザイアガルダに突き付けながら、自分のやるべきことを始める。

「ようやく捕まえたよ。多くの悪行を働き、タケゾーの親父さんをも殺した元凶が……!」
「ゲ、ゲエェ……。ど、どうして空色の魔女がこの工場を気にすル? どうしてあんな小僧と一緒にいル?」
「この工場はアタシの宝物で、タケゾーはアタシが一番信頼してる男だ。そんなこと、あんたには関係ないでしょ?」

 デザイアガルダは倒れたままだが、口をきけるぐらいの気力は残っているようだ。
 いっそこの場で殺してしまいたくもなるが、流石にアタシもそこまではしない。



 ――こいつがGT細胞というウィルスによって変貌した、大凍亜連合の人間であるならば尚更だ。



「もうじき騒ぎを聞きつけて、警察もここに向かってくるでしょ。その前に、あんたからは色々と聞かせてもらうよ」

 GT細胞についてはアタシも詳しく聞いておきたい。そのためにも、デザイアガルダの証言も必要になってくる。
 あの技術は両親のヒトゲノム解析研究と同じく、下手をすれば人類の歴史さえも覆しかねない危険な代物だ。
 こんな忌まわしいクソバードからでも情報が手に入るなら、少しでも手に入れておきたいが――



「工場が宝物……? あの小僧が信頼してる男……? ま、まさか、貴様の正体ハ……!?」



 ――デザイアガルダは突如、何かに対して狼狽え始めた。
 アタシの言葉を確認するように復唱しているが、赤の他鳥であるこいつには関係ない。
 こっちとしては早々にGT細胞の話を聞き出したいのに――



「アッ……ガァ……!? 隼……逃げろ……!」

「え……!? こ、この声……まさか、タケゾー!?」



 ――そうやって気持ちが急いていると、今度は少し離れたところからタケゾーの振り絞るような声が聞こえてきた。
 しかもそれは、どこか苦しそうな声。そんな声を聞いて、アタシは居ても立っても居られない。

「チッ! あんたはそこでしばらく寝てな! タケゾー!!」

 庭に転がったデザイアガルダを放置し、アタシはすぐさまタケゾーの声がした方角へと走り出す。
 まさかとは思うけど、スナイパーにやられてたりしないよね? もしそうだったら、アタシは自分の思慮の浅さを恨む。
 相手は簡単には見えない距離から狙撃できるスナイパーだ。こっちが警戒したとしても、どこに目があるかなんて分からない。

 せめてもの無事を祈り、タケゾーがいると思われる角を曲がる――



「まーたうたなぁ、正義の魔女姉ちゃんがよぉ。せやけど、ラルカがしくじるとこなんて、ワイも初めて見たでぇ」
「うぐぅ……。に、逃げろ……」
「な……!? あ、あんたは……牙島!?」



 ――そこには確かにタケゾーもいた。お腹を押さえて、苦しそうに地面でうずくまっている。
 だが、タケゾーを襲ったのはラルカというスナイパーではない。

 ――アタシもついさっき大凍亜連合のフロント企業で出会った、全身を迷彩コートで覆い隠した男。牙島という怪物だ。

「あんた……タケゾーに何をしたのさ!? そこをどきな! タケゾーを返せ!」
「ワイを『ぶっ飛ばしてやる』やのうて、この坊主の心配が第一かいな。えらい、仲のええこっちゃなぁ。……この坊主も含めて、もうちょい前にもどっかでうた気ぃするわ」
「ッ!? そ、それは……」

 タケゾーは牙島の足元で苦しみ、その顔色も悪い。
 どうしてこいつがここにいるのか? こいつもラルカもデザイアガルダも、全員が大凍亜連合の関係者なのか?
 そんな気になることは多々あれど、まずはタケゾーの容態を確認しないことには落ち着かない。

 ――そんな気持ちの焦りからなのか、牙島はアタシの正体に勘づいてしまう。

「まあ、ワイも今はそないなこと、どうでもええな。こっちはこっちで、ラルカに頼まれたことやらなアカンし」
「そのラルカってのは誰なのさ? お仲間のスナイパーさんでしょ?」
「キハハハ! そこまで知っとんのやったら、別に十分とちゃうか? それに何より、まずはこの坊主の心配をした方がええで」

 牙島との話の中にラルカというスナイパーのことも交えてみるが、ここについてはあっさり肯定してくる。
 ただ、それ以上に気になるのは牙島が足元を指差しながら語る、横たわったタケゾーのこと。
 アタシだって心配で仕方ない。今だって冷や汗を垂らしながら牙島の出方を伺い、助けるチャンスを狙っている。
 どうにも牙島の不気味な笑いを含めた語り口が気になるが、一体タケゾーに何をして――



「この坊主、このままほっといたら死んでまうかもなぁ……!」
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