空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
87 / 465
怪鳥との決闘編

ep87 お願いだから、アタシの傍からいなくならないで。

しおりを挟む
「え……!? そ、それってどういうことだよ!?」
「まあ、ちょいとした毒やな。なんやったら、近くで見てみたらええわ」

 牙島の話を聞いて、アタシは冷や汗を垂らすどころか、全身から血の気が引いてしまう。
 罠の可能性だってあるが、そんな話を聞かされてしまうと、アタシも動揺と心配をせずにはいられない。
 牙島の言葉に従う形で、アタシはすぐさまその足元で横たわるタケゾーのもとに駆け寄る。

「ハァ、ハァ……。じゅ、隼……」
「な、何これ……!? 凄い熱だし、この顔色ってチアノーゼ……!?」

 タケゾーの体を抱え上げて容態を確認するが、牙島が言っていることは事実だ。
 所見だけでも毒物による拒絶反応が体に現れているのが分かり、息も絶え絶えになっている。
 腹部をよく見ると、まるで指でも突っ込んだかのような傷口がある。
 ここから毒物を注入したと見えるが、今はそんな方法云々なんてどうでもいい。

 ――アタシはただ、タケゾーをこんな目に遭わせた牙島をどうしても許せない。
 地面に座り込んでタケゾーを抱えながらも、アタシは顔を上げて牙島を睨みつける。

「何でこんなことをしたのさ!?」
「こないなことをする理由なんざ、そっちがこっちの邪魔するからに決まっとるやろ?」
「そうだとしても、このままじゃタケゾーが死んじゃうよ! 一体、どんな毒を仕込んだのさ!?」
「まあ、普通の毒ではないわな。ワイのお手製の毒ってところや。常人なら丸一日もすれば、確実にお釈迦やろなぁ……!」

 もうアタシの頭はパニック状態だ。牙島への怒りを吐き出さずにはいられない。
 そんなアタシを牙島は見下しながら、左手の手袋をいじっている。
 相変わらず顔を隠して表情は見えないが、わずかにサングラスの奥の目が光ったように見えた。

「あんた、本当に何者なのさ……!?」
「そないキツイ顔で睨むなや。せっかくのベッピンさんが台無しやで? それより、一つワイとゲームでもせえへんか?」
「ふざけんなよ! こっちはタケゾーの命がかかってるんだ! あんたと遊んでる暇なんてない!」
「まあまあ、まずは話を聞けや。それにこのゲームに勝てば、その坊主を助けられるかもしれへんで?」
「え……!?」

 恐怖と憎悪が入り混じりながらも、アタシは牙島への問答を続ける。
 その中で出てきた『ゲーム』という言葉と『タケゾーを助ける方法』という言葉。
 アタシも思わず思考を戻し、牙島の話に耳を向ける。

「その坊主に打ち込んだ毒やが、このビンに入った解毒剤があれば治すことができる」
「だ、だったら、今すぐそれを――」
「アホか。そない簡単に渡すわけないやろが。これを姉ちゃんが手に入れるために、ゲームをしようって話や」

 牙島はタケゾーに打ち込んだ解毒剤のビンをちらつかせ、アタシにゲームという名の挑戦状を叩きつけてくる。
 今すぐにでも解毒剤のビンが欲しくて思わず手を伸ばすが、牙島がそれを制してくる。
 こちらとしてはタケゾーのためにも、今すぐ解毒剤のビンを奪いたい。

 ――ただ、その隙さえもない。
 こうなったら不本意ではあるが、牙島の挑戦を受けるしかなさそうだ。

「……どうすれば、その解毒剤を渡してくれんだい?」
「ほぉう? ワイのゲームに乗る気になったか」
「不満はいっぱいだけどね。こうなったら、あんたのゲームをさっさとエンディングまで進めて、その解毒剤をいただくとするよ」
「キハハハ! やっぱ、おもろい姉ちゃんや! なーに、ルールは簡単や。今日の日付が変わる真夜中に、ちょいとそこにある山の展望台まで来てくれや。姉ちゃんならひとっ飛びで行けるやろ?」

 牙島は離れた場所にある山を見ながら、そのゲームの内容を述べ始める。
 少々離れてはいるが、確かにアタシならば問題ない。

「そこの展望台に、こっちの刺客を送りこんどくわ。勝負の内容は一対一のタイマン。そいつに解毒剤を渡しとくから、勝利して奪ってみろや」
「その口ぶりだと、相手はあんたじゃないってことかい?」
「まあ、ワイも今回は傍観者とさせてもらうわ。ワイが勝手に戦闘の場に出ると、ラルカの奴がうっさいねん」

 ゲームの内容は単純で、アタシが牙島の用意した相手を倒せば勝利とのこと。
 話しぶりからなんとなくだが、こいつらの立場はラルカというスナイパーがトップと言うことだろうか?
 それにしても、対戦相手が牙島でないなら、一体誰が――



「ほんなら、ちゃーんと時間通りに来るんやでぇ。ワイもそろそろ、退散させてもらうわぁ!」
「あっ!? ま、待て! ……って、あれは!?」



 ――相手のことを牙島が語ることはなく、突如近くを通りかかったトラックに飛び乗り、その場から逃げ去ってしまった。
 その時の牙島の動きだが、まるで蛙か何かのように大きく飛び跳ね、荷台へと飛び乗っていった。
 思ってはいたが、とても人間の動きではない。どちらかというと、爬虫類とかそっちの動きだ。

 ――もう一つ目に入ったのは、そのトラックの荷台に乗っていたデザイアガルダの姿。
 どうやら、牙島との話の間に他の仲間――おそらくはラルカというスナイパーにより、ダウンしたデザイアガルダを助け出されてしまったようだ。
 せっかく追い詰めたと思ったのに、アタシとしたことがとんだ失態だった。

 ――だが、今はそんなことを考えている場合でもない。

「タケゾー! しっかりして! 今、病院に連れて行くから!」
「わ、悪い……隼。俺……足手まといにばっかり……」
「そんな馬鹿なことを言ってる場合じゃないっての! 絶対に助けるから、今は意識だけをもたせるようにしといて!」

 アタシは弱り切ったタケゾーを抱え上げ、デバイスロッドに乗ってひとまず病院を目指す。
 牙島の解毒剤がなくても、うまくいけば病院の治療で確かるかもしれない。
 もう余計なことを考えてる余裕なんてない。アタシはただひたすら、病院目がけて陽が暮れた空を駆ける。



 ――もうアタシの周りから、大切な人を失う悲しみはうんざりだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

処理中です...