空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
122 / 465
大凍亜連合編・起

ep122 男か女かハッキリさせよう!

しおりを挟む
「え? 性別が分からないのか?」
「オトコ、オンナ? 性別って、何かの分け方?」

 何ということだ。アタシが保護したこの子、驚くことに自分の性別さえも分かってない。
 これは教育ができてないとか、ただの記憶喪失とかってレベルではない。タケゾーも料理の手を止めて、こちらの話に割り込んでくる。

「うーん……ちょっと困ったもんだね。名前とかは別として、性別ぐらいはハッキリさせておいた方がいいよね。タケゾーはこの子の性別って分かる?」
「お、俺に聞くなよ。本人が性別が何かも分かってないのに、俺にどうやって判断しろと?」
「いや、保育士だからそういうのにも詳しいと思って」
「見た目だけでの判断なんて、俺でも無理だっての……」

 まだまだ先の話もしたいのに、この子の性別が分からないままってのはモヤモヤする。
 タケゾーも幼い頃によく女の子に間違われて――あっ、今もたまにあるか。とにかく、そういう経験や保育士としてのスキルで分かると思ったのに、これはとんだ期待外れだ。
 これを早急に解明しないことには、アタシも次の話に移れない。



「……よし。脱がそう」
「サラッと言うな。サラッと」



 こうなったら最終手段。股間にアレがあるかないかで判断するしかない。
 タケゾーはどこか渋い顔をしてるけど、正直仕方ないじゃん。だって、他に方法がないもん。

「えーっと……居合君。ちょーっと、こっちでタケゾーお兄さんと一緒に確認したいことがあるんだけど、いいかな?」
「居合君? ボクのこと?」
「そう。君の仮名だね」
「……お姉さんは悪い人じゃない。だから、一緒のお兄さんも悪い人じゃない。大丈夫」

 というわけで、ご本人にも了承をとり、早速性別チェックと行きましょう。
 名前についてはインサイドブレードじゃ呼びづらいから、とりあえずは『居合君』ってことで。まあ、もしかしたら『居合ちゃん』かもしれないけど。
 少し時間が経って慣れてきたのか、タケゾーへの警戒心も薄れてきている。
 これならば、後はタケゾーがこの子のお股を確認してくれればそれで済む。

「待て待て待て。どうして俺が調べる流れになってるんだ?」
「え? だって、タケゾーの方がこういう子供の扱いには慣れてるよね?」
「もっと小さい子供が相手だけどな。……いや、反論するだけ無駄な気がしてきた。分かった。俺がやるよ」

 ちょっとタケゾーに押し付けた形になっちゃったけど、こういうのはタケゾーの方が強い――気がする。
 もしも居合君が女の子だったらタケゾーも気まずいだろうけど、それはアタシとて同じこと。

 ――許せ、タケゾー。アタシには子供の面倒が分からんのだ。
 少し罪悪感は感じつつも、タケゾーと居合君は二人で個室へと入っていった。

「それにしても、性別さえ分かってなかったのに、剣技については覚えてたってどういうことだろね? この刀にしたって、普通に手に入るものじゃないし」

 居合君の方はタケゾーに任せて、アタシはあらかじめ預かっておいた刀を手に取りながら椅子の上で考え込む。
 あの子の正体についての手掛かりはいくらかある。

 アタシがこれまで戦ってきたヴィランと同じようなコードネーム。
 ショーちゃんと同じ居合術。
 居合により高周波ブレードへと変化する刀。

 これらのことから、また大凍亜連合が一枚噛んでいるのは間違いないと見ていい。本当につくづく面倒な組織だ。
 ただ、全ての要因を繋ぎ合わせた際の正体が全く掴めない。

 やっぱり、居合君はショーちゃんの親族なのかな? 大凍亜連合に改造されて、記憶も何もかも忘れちゃったとか?
 いずれにせよ、大凍亜連合の存在を見過ごすことなどできない。
 パンドラの箱が盗まれた一件にしても、ケースコーピオンを作り出すためだったと考えれば、やはり裏に潜んでいるのは大凍亜連合か。

 ――なんだか、アタシもどんどんとややこしい話に足を突っ込んでいってるものだ。

「まあ、これもまたアタシが選んだ道だ。弱音も吐いてられないね」

 それでもアタシには課せられた責務がある。
 最初はちょっとした思い付きから始めたヒーロー活動だったが、今はこの肩に両親が遺した想いも背負ってる。
 アタシには立ち向かえる力があって、立ち向かうべき相手がいる。その事実がある限り、空色の魔女としての戦いは終わらない。

 ――今は何より、ショーちゃんと重なって見える居合君を放っておくことができない。
 本当に記憶喪失ならば、どうにかしてその記憶も取り戻してあげないとね。



「……隼。確認できたぞ」
「お? 終わった? ……って、なんだか深刻な顔をしてない?」



 少し物思いにふけていると、タケゾーが一人で個室から出てきた。
 ただその様子を見ると、アタシにも何となく結末が読める。

「とりあえず、股間にアレは生えてなかった」
「あー……女の子だったのか。それはタケゾーにも居合君にも悪いことをしちゃったね」

 二分の一の確率だったとはいえ、異性同士で性器確認をさせちゃったとはね。
 タケゾーも申し訳なさのせいで、ここまで深刻になっちゃったってことか。
 でもまあ、これであの子の性別自体は分かった。
 とりあえず、仮名の方は『居合ちゃん』に改名する方向で――



「……いや、あの子は女の子でもない」
「……へ? どゆこと?」



 ――などと考えていたが、タケゾーの話にはまだ続きがあった。
 ただ、その意味は全くもって理解不能。男の子のアレがついてないのに、女の子でもないってどういうことよ?
 性別なんて、二つに一つじゃないの?



「あの子なんだけど……男性器どころか女性器もついてなかったんだ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

処理中です...