空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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大凍亜連合編・起

ep128 怪しいの塊を探ってみよう!

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「迷彩コートにサングラスにマスク? しかも、それで全身を隠した男?」
「こう言ってはいけないのですが~、怪しい人でしたね~。とりあえず~、その人がそちらの子と酷似した子供を~、探していました~」

 洗居さんに諭される形で教えてくれた、フェリアさんに居合君と思われる子供の捜索を依頼した人物。
 名前は知らないそうだがその特徴を聞いただけで、もうそれが誰なのかは嫌でも分かってしまう。



 ――どう考えても大凍亜連合の牙島です。本当にありがとうございました。



「よくよく考えたら~、あんな怪しい人が子供を探してるなんて~、それこそ犯罪の匂いがしますよね~」
「そ、そうだね……。それで、牙――怪しい男はその子供を見つけたら、どうして欲しいってフェリアさんに言ってきたの?」
「こちらの電話番号まで~、連絡して欲しいとおっしゃってました~」

 ここまで話をする中で、フェリアさんも依頼主である牙島の方に不信感を抱き始めたのか、おっとりした調子でさらに話を続けてくれた。
 まあ、むしろ牙島みたいな『怪しい』を具現化したような人間の依頼なんだから、もっと早々に不信感を抱いて欲しかったけどね。
 とはいえ、依頼の返事先である電話番号まで教えてもらえたのだ。これは大きな収穫と言える。

「一応は私もシスターとしては~、あまり他者に口外するのはよろしくないので~、黙っててもらえますか~?」
「うん、それは大丈夫だよ。こっちこそ、フェリアさんにはまだこの子のことを黙っててもらえるかな?」
「栗阿さんのご友人なので~、悪いようにはしないでしょうね~。私も今は~、あなた達の方を信用しますね~」

 色々と思わぬ展開ではあったが、牙島もまさかアタシ達とフェリアさんが繋がっているとは思いもしなかったのだろう。
 てか、居合君を探すために教会のシスターにお願いするあたり、なんだかあいつも変なところで律儀だね。
 まあ、仮にも反社組織が警察に頼むわけにもいかないし、こうやって警察とは無関係な人に依頼するか、ケースコーピオンとかを使って地道に探すしかないのだろうね。

 いずれにせよ、居合君が大凍亜連合に狙われてるのは間違いない。
 居合君自身も自らの立場をよく分かっていないが、それでも大凍亜連合に身柄を引き渡すわけにもいかない。
 とりあえずの手掛かりも手に入ったし、これを頼りに動いてみよう。

「ではでは~、私と栗阿さんは失礼しますね~。デートの途中なので~」
「今日はデートだったのですか? 二人でお買い物とだけ聞いていましたが?」
「お友達でのショッピングも~、デートの範疇ですよ~」

 ――フェリアさんも洗居さんとデータがしたくて、ウズウズしてたみたいだし。
 あまり長くも引き留められないね。





「なあ、隼。とりあえず相手の電話番号は手に入ったけど、それでどうするつもりだ? ……まさか、直接かけたりしないよな?」
「いやいや、アタシも流石にそれはしないよ。ただ、この電話番号を逆探知するだけさ」

 牙島が連絡先としてフェリアさんに預けていたという電話番号。これだけでもこちらから大凍亜連合に探りを入れる手掛かりにはなる。
 もちろん、直接かけて『あなた達の目的は何ですか?』なんて尋ねる真似はしない。結果は火を見るより明らかというものだ。
 よって、ここは姑息な手段であれど、逆探知でその電話番号の場所を調べ上げる方法をとる。

「今は工場も大丈夫そうだね。ケースコーピオンといった大凍亜連合の気配はないや」
「だけど、油断もできないよな。どうにかして、外の動きも感知できればいいんだが」
「こうなったら仕方がないねぇ。この工場にある無線設備を探知レーダーに切り替えて、周辺の様子を探れるようにしとこっか」
「え? そんなことができるのか? 本当に何でもありすぎるだろ……」

 そのために一度工場へと戻って来たが、ここはここですでに狙われている危険がある。
 しかし、心配はご無用。この工場に備え付けられている設備については、長年住み慣れたアタシが熟知している。
 開発用の設備こそなくなってしまったが、工場に埋め込まれていた無線系統が無事だったのは確認済み。これをレーダー機能へと変換すれば、いつでも周囲の様子を探知できる。

 ――タケゾーには色々言われてるけど、こういう環境でアタシは生活を続けていたんだ。
 まあ、まさか敵から身を護るために、この機能を使うことになるとは思わなかったけどさ。

「お姉さん、その逆探知ってのをすれば、またあのサソリの人に会える?」
「自分を襲ってきた相手にまた会いたいなんて、居合君も物好きなもんだねぇ。ただ、今はまだ分かんないかな。まずは様子を探ることからだね」

 パソコンを操作して防衛システムを起動させ、この工場を一時的な要塞にすることもできた。
 逆探知の準備も整えていると、居合君は不思議そうにアタシの顔を覗き込んで尋ねてくる。

 この子からしてみると、ケースコーピオンのように自らに襲い掛かってきた相手であっても、自分を知るための手掛かりには変わりないか。
 この二人の間にも何かあるようだし、もう一度会わせることで分かることだってあるかもしれない。

 ――ただそれをするにも、まずは敵の様子を知ってからだ。

「よーしよし……。なんとか逆探知はできそうだねぇ。オフィス街にある固定電話っぽいけど、このビルかな?」

 アタシはパソコンを操作し、手に入れた電話番号から逆探知を仕掛けていく。
 この程度のことなら造作もない。電話番号のある建物だけでなく、どのフロアのどの部屋かまでお見通しだ。

「場所はこのビルで確定だね。少し調べてみた感じ、どこかの会社の自社ビルか」
「自社ビルってことは、そのビル自体が大凍亜連合のアジトと考えた方が良さそうだな」

 そうして場所自体は分かったのだが、問題はここからどうするかだ。
 タケゾーも教えてくれたが、このビルはまさに敵の拠点。しかも以前のフロント企業と同様、今回は確定で牙島が待っていると言ってもいい。
 あいつの相手はアタシでも骨が折れるので、迂闊に忍び込んで潜入捜査とも行かない。顔もバレてるし。

「そのビル、サソリの人いるの? だったらボク、そこに行く」
「だから、それはダメなんだって。そんなことしたら、居合君が危ないよ?」

 さらに言えば、アタシがこのビルに忍び込むために、この場を離れるのもよろしくない。
 もしかすると、その間に居合君まで勝手にこのビルへ侵入する恐れがある。さっきからパソコンの画面に食いついてくるし、関心度合が半端ない。
 これではタケゾー一人にこの子の面倒を任せるのも不安になる。
 はてさて、どうやってここから先を調べたものか。

「こうなったら、偵察ロボットでも使いますか」
「この工場の防衛要塞システムだけじゃなく、そんなものまで用意されてるのか」
「いや、今はないよ」
「じゃあ、何故口にした?」

 ここで順当に思いつくのが、遠隔操作できる偵察用のロボットだ。やっぱ、それで行くのが妥当だよね。
 ただ、その肝心な偵察ロボットなんてものはアタシも用意していない。タケゾーにも呆れ顔でツッコまれてしまう。

 ――でも、それで諦めるのはまだ早い。
 偵察ロボットについては『今はまだない』だけの話だ。
 だからこそ――



「物がないならば、今から偵察ロボットを作ればいいのさ!」
「今から!? 今から作るのか!?」
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