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大凍亜連合編・起
ep135 救出のために、反社のアジトに潜入するぞ!
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もう深夜になる時間帯の中、アタシはデバイスロッドに腰かけて夜空を急いで舞う。
目指すは大凍亜連合がアジトに使っているビル。目的は誘拐された居合君の救出。
イヤホンマイクでウィッチキャットを操縦するタケゾーとも連絡を取りつつ、アタシは前方にある目的のビルを視界に入れる。
「タケゾー。中はどうなってるか分かる?」
【ダクトから中を見て回ってるが、今のところ何か大きな動きはないな。こっちでも隼が侵入できそうなルートは見つけておいた。南側のダクトからなら、バレずに侵入できそうだ】
「大凍亜連合に絡むと、ダクトだ何だってところに侵入してばっかだねぇ。まあ、それを文句とはしたくないさ。アタシもまずはそこから侵入してみるよ」
あまり清潔とは言えない侵入路だが、タケゾーが調べてくれたのならこれ以上に信用できる場所もない。
居合君本人に頼まれていた刀もガジェット内にデジタル収納し、いつでも渡せるように準備してある。
中に侵入して居合君と合流できたら、この刀を渡してすぐに協力して脱出しよう。
ケースコーピオンの存在や大凍亜連合内部の研究データなども気になるが、今はそれよりも居合君の救出が優先だ。
今回ばかりは不法侵入も上等。たとえアタシが罪に問われようとも、必ず居合君を助け出してみせる。
――まあ、相手も反社組織だから警察に訴えたりはしないだろうけど。
「……さてと。なんとかタケゾーの言ってたダクトから内部に侵入できたね」
そうこう考えてるうちに、アタシの方も大凍亜連合のビルへと到着。タケゾーから教えてもらったダクトを使い、ビル内の一室へと侵入する。
中には誰もおらず、灯りもついていない。これは本当に好都合だ。タケゾー様々である。
【隼、こっちだ】
「おっ、タケゾーか。ウィッチキャットを操縦して、何か調べてたの?」
【ああ。さっきの居合君の様子を見て、俺も色々と気になってたからな】
そんな人ひとりいない室内だが、猫が一匹だけ紛れ込んでアタシを出迎えるように声をかけてくれた。
その正体は言わずもがな、タケゾーが操縦するウィッチキャットである。
何やら室内にあった引き出しから書類を取り出し、それらを調べていた様子が伺える。
――てか、タケゾーも随分とウィッチキャットの操縦に慣れたものだ。
もう完全に猫じゃん。この諜報能力はアタシの想像以上だ。
「それで、何か分かったことはあるの?」
【俺もまだ見つけたばかりなんだが、隼の方が詳しく分かるんじゃないかと思うものがある。……俺達も予想してた人物の名前がここに記されてる】
タケゾーはウィッチキャットの手を器用に操縦し、アタシの眼前にあるデスクに一冊の紙レポートを差し出してくれる。
猫の手を借りるとはこのことか。まあ、アタシにとってはこれ以上にないほど頼れる黒猫さんだけどね。
――ただし、その内容に関してはあまり冗談を言えるものではない。
「……このレポートにある人名……佐々吹 正司。やっぱり、ショーちゃんが人工知能関係で関わっていたと見て間違いないね」
【隼がそう言うのなら、事実なんだろうな。佐々吹も自分の脳機能を大凍亜連合なんかに悪用されたと知れば、さぞ無念だろうな……】
まずアタシの目にも入って来たのは、予想通りともう言うべきショーちゃんの名前。
レポートにも『被験者』として記載されており、概要欄には人工知能AIに関する記述もある。
これについては完全に確定。ショーちゃんの頭脳や居合の技術は、大凍亜連合によって悪用されていた。
「このレポートも気になるけど、今は居合君を助け出すのが優先だね。ただ、重要な参考にはなりそうだし、ちょいと拝借――ん?」
【ん? どうかしたか、隼?】
「い、いや……。ちょっと目を疑いたくなるような記述が目に入って……」
レポートの続きも気になるが、今は居合君の救出が優先と思い直し、アタシも手に持ったレポートを懐にしまおうとした。
だがその時、レポートに書かれていたある項目が目に入り、どうしてもそっちに気が行ってしまう。
いや、気になるなんてレベルの話ではない。
もしもここに書かれていることが事実だと考えると、アタシの中の警報が最大音量で悲鳴を上げてしまう――
「『海外での右腕の手術と話を偽り、被験者、佐々吹 正司の身柄を確保』……って、ど、どういうことさ!?」
――そこに書かれていたのは、これまでアタシ達が信じていた事実を否定する事象。
一緒に記されている日付にしても、アタシとタケゾーが最後にショーちゃんと出会った日よりも後になっている。
これでは辻褄も何も合わない。ショーちゃんは海外に手術へ行ったんじゃなかったの?
――本当の事実はどういうことになってるの?
【……隼。俺もその続きが気になって仕方ない。悪いんだが、そっちで調べてくれないか?】
「う、うん。ちょっと待ってて」
タケゾーもアタシと同様に、レポートの続きが気になってしまったようだ。
本来ならばこんなことをするより、居合君の救出を優先すべきなのは分かっている。
それでも、ショーちゃんの身に起きていることがアタシ達の認識と違っていたとなれば、そちらも心配せずにはいられない。
――もしかすると、ショーちゃんも大凍亜連合に囚われている可能性だってある。
「このレポートには、おおまかな人工知能に関する実験の流れも書かれてるね……」
【そういえば、居合君はさっき俺と隼の名前をフルネームで呼んでなかったか? 隼はともかく、俺のフルネームに関しては居合君も知らないはずだよな?】
「そこの辻褄を考えると、居合君が『アタシ達と別れた後のショーちゃんの脳』をベースとした人工知能を搭載してることも、納得できる話だね……」
タケオ―とも話をしながら可能性を模索するが、思い返せば確かに奇妙な点はあった。
アタシはタケゾーからは『隼』と呼ばれ、洗居さんから『空鳥さん』と呼ばれているから、その光景を見た居合君がアタシのフルネームを『空鳥 隼』だと理解したと受け取れる。
だが、タケゾーは違う。
タケゾーはアタシからは『タケゾー』と呼ばれ、他の呼び方をする人物と言えば、玉杉さんの『武蔵』という呼び方しか居合君は聞いていない。
――つまり、居合君ではタケゾーのフルネームが『赤原 武蔵』であることなど、本来は知らない情報だ。
それなのに知っていたということから、想定できる可能性は一つ。居合君のベースとなったショーちゃんの脳データが『タケゾーに会った後のもの』ということだ。
限りなく人間に近い人工知能だとは思っていたが、まさかここまでの再現性を誇っていたとは――
「ええぇ!? そ、そんな……!? これって……これが事実なら……!?」
――そんな技術力への関心よりも、アタシはレポートの続きの記載事項に興味が行ってしまう。
いや、この感情は『興味』ではない。『恐怖』だ。
思わず持っていたレポートから手を放し、デスクの上へと落してしまうほどに体が震える。
もしもここに書かれている通りなら、アタシは自分を恨む。大凍亜連合の蛮行よりも、己の愚行への後悔が勝ってしまう。
【ど、どうした、隼!? 何が書いてあったんだ!?】
「あ、ああぁ……! あ、あそこのページ……!」
このことをアタシは自分の口から説明できない。
タケゾーも気になって声をかけてくるが、アタシは後ずさりしながら涙を抑え、デスクの上に置かれたレポートを指差すことしかできない。
――そのページに書かれいていた内容は、パンドラの箱を守る者としても、ショーちゃんの友人としても許されざるものだ。
『入手した人工知能の研究データが不完全だったため、被験者の頭脳を人工知能へトレースすることは不可能と判断。その代用策として、被験者の脳内信号をそのまま人工知能へと移植。被験者の元の肉体は死亡となるが、新たな肉体で生存させる方針で実験を行う』
目指すは大凍亜連合がアジトに使っているビル。目的は誘拐された居合君の救出。
イヤホンマイクでウィッチキャットを操縦するタケゾーとも連絡を取りつつ、アタシは前方にある目的のビルを視界に入れる。
「タケゾー。中はどうなってるか分かる?」
【ダクトから中を見て回ってるが、今のところ何か大きな動きはないな。こっちでも隼が侵入できそうなルートは見つけておいた。南側のダクトからなら、バレずに侵入できそうだ】
「大凍亜連合に絡むと、ダクトだ何だってところに侵入してばっかだねぇ。まあ、それを文句とはしたくないさ。アタシもまずはそこから侵入してみるよ」
あまり清潔とは言えない侵入路だが、タケゾーが調べてくれたのならこれ以上に信用できる場所もない。
居合君本人に頼まれていた刀もガジェット内にデジタル収納し、いつでも渡せるように準備してある。
中に侵入して居合君と合流できたら、この刀を渡してすぐに協力して脱出しよう。
ケースコーピオンの存在や大凍亜連合内部の研究データなども気になるが、今はそれよりも居合君の救出が優先だ。
今回ばかりは不法侵入も上等。たとえアタシが罪に問われようとも、必ず居合君を助け出してみせる。
――まあ、相手も反社組織だから警察に訴えたりはしないだろうけど。
「……さてと。なんとかタケゾーの言ってたダクトから内部に侵入できたね」
そうこう考えてるうちに、アタシの方も大凍亜連合のビルへと到着。タケゾーから教えてもらったダクトを使い、ビル内の一室へと侵入する。
中には誰もおらず、灯りもついていない。これは本当に好都合だ。タケゾー様々である。
【隼、こっちだ】
「おっ、タケゾーか。ウィッチキャットを操縦して、何か調べてたの?」
【ああ。さっきの居合君の様子を見て、俺も色々と気になってたからな】
そんな人ひとりいない室内だが、猫が一匹だけ紛れ込んでアタシを出迎えるように声をかけてくれた。
その正体は言わずもがな、タケゾーが操縦するウィッチキャットである。
何やら室内にあった引き出しから書類を取り出し、それらを調べていた様子が伺える。
――てか、タケゾーも随分とウィッチキャットの操縦に慣れたものだ。
もう完全に猫じゃん。この諜報能力はアタシの想像以上だ。
「それで、何か分かったことはあるの?」
【俺もまだ見つけたばかりなんだが、隼の方が詳しく分かるんじゃないかと思うものがある。……俺達も予想してた人物の名前がここに記されてる】
タケゾーはウィッチキャットの手を器用に操縦し、アタシの眼前にあるデスクに一冊の紙レポートを差し出してくれる。
猫の手を借りるとはこのことか。まあ、アタシにとってはこれ以上にないほど頼れる黒猫さんだけどね。
――ただし、その内容に関してはあまり冗談を言えるものではない。
「……このレポートにある人名……佐々吹 正司。やっぱり、ショーちゃんが人工知能関係で関わっていたと見て間違いないね」
【隼がそう言うのなら、事実なんだろうな。佐々吹も自分の脳機能を大凍亜連合なんかに悪用されたと知れば、さぞ無念だろうな……】
まずアタシの目にも入って来たのは、予想通りともう言うべきショーちゃんの名前。
レポートにも『被験者』として記載されており、概要欄には人工知能AIに関する記述もある。
これについては完全に確定。ショーちゃんの頭脳や居合の技術は、大凍亜連合によって悪用されていた。
「このレポートも気になるけど、今は居合君を助け出すのが優先だね。ただ、重要な参考にはなりそうだし、ちょいと拝借――ん?」
【ん? どうかしたか、隼?】
「い、いや……。ちょっと目を疑いたくなるような記述が目に入って……」
レポートの続きも気になるが、今は居合君の救出が優先と思い直し、アタシも手に持ったレポートを懐にしまおうとした。
だがその時、レポートに書かれていたある項目が目に入り、どうしてもそっちに気が行ってしまう。
いや、気になるなんてレベルの話ではない。
もしもここに書かれていることが事実だと考えると、アタシの中の警報が最大音量で悲鳴を上げてしまう――
「『海外での右腕の手術と話を偽り、被験者、佐々吹 正司の身柄を確保』……って、ど、どういうことさ!?」
――そこに書かれていたのは、これまでアタシ達が信じていた事実を否定する事象。
一緒に記されている日付にしても、アタシとタケゾーが最後にショーちゃんと出会った日よりも後になっている。
これでは辻褄も何も合わない。ショーちゃんは海外に手術へ行ったんじゃなかったの?
――本当の事実はどういうことになってるの?
【……隼。俺もその続きが気になって仕方ない。悪いんだが、そっちで調べてくれないか?】
「う、うん。ちょっと待ってて」
タケゾーもアタシと同様に、レポートの続きが気になってしまったようだ。
本来ならばこんなことをするより、居合君の救出を優先すべきなのは分かっている。
それでも、ショーちゃんの身に起きていることがアタシ達の認識と違っていたとなれば、そちらも心配せずにはいられない。
――もしかすると、ショーちゃんも大凍亜連合に囚われている可能性だってある。
「このレポートには、おおまかな人工知能に関する実験の流れも書かれてるね……」
【そういえば、居合君はさっき俺と隼の名前をフルネームで呼んでなかったか? 隼はともかく、俺のフルネームに関しては居合君も知らないはずだよな?】
「そこの辻褄を考えると、居合君が『アタシ達と別れた後のショーちゃんの脳』をベースとした人工知能を搭載してることも、納得できる話だね……」
タケオ―とも話をしながら可能性を模索するが、思い返せば確かに奇妙な点はあった。
アタシはタケゾーからは『隼』と呼ばれ、洗居さんから『空鳥さん』と呼ばれているから、その光景を見た居合君がアタシのフルネームを『空鳥 隼』だと理解したと受け取れる。
だが、タケゾーは違う。
タケゾーはアタシからは『タケゾー』と呼ばれ、他の呼び方をする人物と言えば、玉杉さんの『武蔵』という呼び方しか居合君は聞いていない。
――つまり、居合君ではタケゾーのフルネームが『赤原 武蔵』であることなど、本来は知らない情報だ。
それなのに知っていたということから、想定できる可能性は一つ。居合君のベースとなったショーちゃんの脳データが『タケゾーに会った後のもの』ということだ。
限りなく人間に近い人工知能だとは思っていたが、まさかここまでの再現性を誇っていたとは――
「ええぇ!? そ、そんな……!? これって……これが事実なら……!?」
――そんな技術力への関心よりも、アタシはレポートの続きの記載事項に興味が行ってしまう。
いや、この感情は『興味』ではない。『恐怖』だ。
思わず持っていたレポートから手を放し、デスクの上へと落してしまうほどに体が震える。
もしもここに書かれている通りなら、アタシは自分を恨む。大凍亜連合の蛮行よりも、己の愚行への後悔が勝ってしまう。
【ど、どうした、隼!? 何が書いてあったんだ!?】
「あ、ああぁ……! あ、あそこのページ……!」
このことをアタシは自分の口から説明できない。
タケゾーも気になって声をかけてくるが、アタシは後ずさりしながら涙を抑え、デスクの上に置かれたレポートを指差すことしかできない。
――そのページに書かれいていた内容は、パンドラの箱を守る者としても、ショーちゃんの友人としても許されざるものだ。
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