空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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大凍亜連合編・起

ep143 みんなのおかげで勝ち取ることができた。

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「は、放さんかい! お……おんどれぇええ!!」
「捕縛……! バーサクリザード……! 道連れ……!」

 アタシが電気魔術玉を放っても、ケースコーピオンは牙島をガッチリと庇い締めにしてくれている。
 アタシの中でも辛さはある。だが、放たれた電撃魔術玉はもう止められない。
 過去最高レベルの電撃魔術玉は、そのまま牙島とケースコーピオンの元へと飛んでいき――


 ズギャァァアアンッ!!


 ――激しい轟音を響かせて着弾した。
 あまりに出力を上げたせいで、周囲には煙が立ち込めてしまう。
 その煙も少し時間が経つと晴れていき、その先にあったのは――



「な……なんちゅうこっちゃ……。このワイが……負けてまうとはなぁ……」
「任務……遂行……完了……」



 ――床に倒れた牙島とケースコーピオンの姿だった。
 お互いわずかに声を漏らしてはいるが、体からは湯気が立ち込めている。体内にまで電撃が走った証明だ。
 生きてこそはいるが、もう立ち上がれそうには見えない。

 ――かなり危なかったが、この勝負はアタシ達の勝ちだ。

「ショーちゃん! しっかりして! ごめんね! 本当に……ごめんね……!」
「空鳥 隼……。無事……確認……」

 だが、その勝利を喜ぶよりも先に、アタシは倒れたケースコーピオンショーちゃんのもとへと駆け寄る。
 牙島に勝てたのはケースコーピオンショーちゃんがその身を挺してくれたからだ。
 たとえもう抜け殻であっても、その中身が居合君に移されていても、ショーちゃんの心はまだケースコーピオンの肉体にも残っている。
 アタシは膝をつき、涙を流しながら両手でその体を抱きかかえる。

「ショーちゃん……ごめんね……! そして、ありがとう……! 今まで本当に……ありがとう……!」

 もうどんな言葉をかければいいのかも分からない。もうどうしていいのかも考えられない。
 アタシはただ思うがまま、謝罪と感謝の言葉を口にすることしかできない。
 ショーちゃんをこんな事態に巻き込んでしまった原因の一端として、アタシは声を震わせながらもただ言葉を口にする。



「……隼さん。ケースコーピオン――ボクの元の肉体。隼さんのこと、怒ってない」
「い、居合君……?」



 そんなアタシの肩に右手を当て、居合君が優しく声をかけてくれる。
 左手にはさっきまでケースコーピオンの上に置かれていたアタシの三角帽を持ち、手渡しながらまるで代弁するように言葉を紡いでくれる。

「ボク達、隼さんを助けたかった。ボク達、何も悔やんでない。隼さん、悲しまなくていい」
「……ありがとう、居合君――いや、ショーちゃん。アタシの罪は消えないけど、ショーちゃんにそう言ってもらえるともう……言葉が出ないよ……!」

 アタシは居合君から三角帽を受け取ると、その小さな体へと抱き着く。
 言葉で言い表せない感情。口では紡げない想い。
 それらを内に秘めながら、アタシはただ居合君ショーちゃんの気持ちを受け入れ、そして涙を流す。

 ――ショーちゃんがいてくれて、本当に良かった。



【……隼。ひとまず、無事に終わりはしたんだな】
「あっ……タケゾー……。なんだ、見てたのかい?」
【少しばかりな。俺も割って入る場面じゃなかっただろ?】



 アタシが居合君を抱きながら涙していると、ウィッチキャットがこちらに戻ってきてくれた。
 操縦者のタケゾーも妙な気を利かせ、少し間を置いて声をかけてくる。

 普段ならここで茶々でも入れるんだけど、今はそんな気分にもなれない。
 ただただ、タケゾーの気遣いには感謝する。タケゾーもショーちゃんと同じく、本当にアタシに優しい。

 ――アタシって、本当に周囲に恵まれてるよね。

【脱出路は確認できた。他の構成員も今は見当たらない。全員で早く脱出しよう】
「そうだね。さあ、居合君はウィッチキャットについて行って。アタシはケースコーピオンを担いで――ゲホ! ゲホッ!?」
【お、おい!? どうしたんだ!? 隼!?】

 感傷に浸れど、ここに長居は無用だ。そう思って逃げるために立ち上がろうとすると、アタシの体に異変が起きる。
 いや、正確には元々の異変が大きくなったというところか。かなりの無茶で疲弊した影響か、牙島の毒が急速に体中を巡り始める。
 その影響で激しく咳込み、発熱まで起こしている。とてもではないが、立ち上がることもままならない。
 だが、アタシでなければケースコーピオンを担いで脱出はできない。

「だ、大丈夫さ……。あと少し……あと少しだけ我慢すれば……」
【そうは言っても、俺が見てるだけでもボロボロだぞ!? そ、そうだ! 俺も今からそっちに向かって――】
「そんなことをすれば、せっかくタケゾー自身が見つけてくれた脱出路の意味がないじゃんか……。本当に大丈夫だって。とにかく、今は根性見せてでも脱出を優先……して……」

 どうにか体に力を入れようとしても、逆に意識が遠のいてしまう。
 これではケースコーピオンを担いで脱出するどころか、アタシ自身も脱出以前の話だ。

 ――最悪、居合君だけでも脱出させて、アタシはここに残るしかない。
 アタシにはケースコーピオンショーちゃんを見捨てることなどできない。

「隼さん! ボク、隼さんとケースコーピオンをおんぶする! 絶対、一緒に脱出する!」
「ニシシ……。健気なもんだねぇ……。だけど、居合君の体じゃ無理かな? とりあえず、ウィッチキャットと一緒に先に脱出して――」
「嫌! ボク、隼さんと一緒じゃないと嫌! 隼さんと一緒に、武蔵さんのところに帰る!」

 居合君もどうにかアタシを担ぎ上げようとしてくれるが、この子は肉体構造的に持久的なパワーには乏しい。
 体も小さいし、アタシとケースコーピオンを同時に担げるはずもない。
 どうにかアタシが先に逃げることを促しても、激しく拒んでくる。

 ――本当に小さい子供のように駄々をこねるものだ。
 こちらとしては困るのだが、どうしても嬉しさがこみ上げてしまう。
 ただ、やはりここはアタシを置いて脱出してもらうしか――



「キハハハ……。に、逃げるんも限界なほど、ワイとやりおうてくれたってことかいな……」



 ――そう考えていると、アタシの後ろから弱った関西弁が聞こえてきた。
 毒の発熱も冷めていくような悪寒。あの電撃魔術玉を食らって、すぐに立ち上がれるはずがない。

 胸に不安を抱きながらも、アタシが後ろを振り向いてみると――



「こ、今回ばっかしはワイの負けや……。まあ、まだ無茶すりゃ動けるって感じやがな……!」
「き、牙島……!?」
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