空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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星皇カンパニー編・転

ep199 月下の暗殺者:ルナアサシン

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「こっちは時間がないんだ! 速攻フルパワーで決着を着けさせてもらうよ!」

 ラルカさんが二丁拳銃をこちらに向けてくる中、アタシはデバイスロッドを床に突き刺し、全身に力を込める。
 以前に森のテリトリーを突破する時にも使った最大出力電磁フィールドで体を守り、両手で電撃魔術玉を形成しにかかる。
 かなりの負担はかかってしまうが、ラルカさん相手にまともな肉弾戦は不利。さらに言えば、今こうしている時でも星皇社長の計画は動いている。

 ――時間も負担も考えている場合ではない。
 この一撃をもってして、即座にラルカさんを突破してみせる。



「残念ながら、それらの技は自分も一度目にしています。……それを対策していないと、本気でお思いですか?」



 だが、ラルカさんはアタシの全力を見ても冷静そのものだ。
 向こうからしてみればとんでもないエネルギーの塊が見えてるはずなのに、完全に予想していたように落ち着きながら二丁拳銃の狙いをつけている。
 ただ、ラルカさんが狙っているのはアタシではなく――


 バギュン! バギュン!

 パリィン! パリィン!


「えっ!? す、水槽を撃った!?」

 ――丁度アタシの頭上両サイドに設置されていた二つの水槽だった。水槽を撃ち、その中の水をアタシに浴びせてくる。
 どうしてアタシを狙わずに、水槽なんて撃ったのよ? てか、なんでこんなところに水槽なんて置いてたわけ?
 別に魚が泳いでたわけでもないし、観賞用にも見えないけど――


 バチバチバシュゥウッ!!


「で、電気が分散してる!? これってまさか――」
「お察しの通り、その水槽の中身は塩水です。そうなれば、後はミス空鳥の方が詳しいですよね?」

 ――その意図を、アタシは身に起きた変化ですぐに理解した。
 あれだけ高出力で展開していた電磁フィールドが、まるで霧のように消え始め、体からも力が抜けてしまう。
 いや、これはアタシが体外に電気を放出しすぎたのも原因の一つか。ラルカさんはアタシがこの技を使うことを予測し、すでに一手先の策を講じていた。

 アタシの力は基本的に電気によるもので、それを肉体や金属に作用させることで力を発揮する。
 だがその力も、電気であることには変わりない。塩水を浴びてしまえば、漏電によって一気にその効力を失う。
 最大出力電磁フィールドと電撃魔術玉の発動で、過剰に電気を発動していたことも災いした。出力していた分をほぼ全て無力化され、一気に決めるどころか一気に窮地に陥ってしまう。

「少し前に自分に敗北し、相手を知る時間も割かずに再挑戦。そんなことをして、本当に勝てると思われましたか?」
「そ、そう言われると、アタシには返す言葉もないもんだ……。だけど、それぐらい焦らないといけない事態が、今この時にだって迫ってるのさ……!」

 体内の電力をほとんど失ってしまったせいで、アタシは突き刺しておいたデバイスロッドを支えにして、やっと立ててる状況だ。
 髪の色も元に戻り、再度生体コイルで発電するだけの燃料アルコールも残っていない。
 そんなアタシにラルカさんは近づき、銃口を構えて語り掛けてくる。

 ――もう完全にアタシの負けだ。この人、戦うことにおいて先を見る目が鋭すぎる。
 デザイアガルダや牙島みたいに、他の生物の力を取り入れているわけではない。氷山地のように、ナノマシンで特殊な力を内蔵したわけでもない。
 ただ純粋に『人間としての強さ』を――人のレベルの技と知略を使って、ここまでアタシを圧倒する実力。

 ――こんな敗北感は初めてだ。
 アタシがどれだけスーパーヒーローになっても、この人を超えられる気がしない。
 これが育った世界と経験の差というものか。

「あなたが余程焦っていたことは分かりました。ですが、それは今この場においてはどうでもいいことです。殺すことまではしませんが、これ以上の介入はできないよう、足に銃弾でも撃ち込んでおきましょうか。……回復も簡単に追いつかないほど、念入りに」
「くっ……!?」

 そして、その力の差はなおもアタシに突き刺さってくる。
 ラルカさんの持つ二丁拳銃の銃口がアタシの両足へと向けられ、この場で行動の自由をために引き金に指がかけられる。。
 アタシの方はもうデバイスロッドで体を支えることしかできず、対抗するだけの力は残っていない。

 こんなことになるなら、せめてタケゾーやショーちゃんには話をしてから――



 バリィィィインッ!!


「くっ!? こ、今度は何をやったのさ!?」
「ッ!? ……これは予想外でしたね。どうやら、あなたの会いたがっていた人物が、こちらにやって来たようです」



 ――己の未熟さを後悔していると、今度は突然社長室の窓ガラスが盛大に弾け飛んだ。
 これもラルカさんが用意した策略かと思ったが、そのラルカさん自身もわずかに驚きの色を見せていた。
 それよりも、アタシが会いたかった人が来たとのことだが――



「空鳥さん……。やはり、あなたは私を止めに来たのね。『早々に手を引きなさい』と、あれほど言っておいたのに……!」
「せ、星皇社長……!? そ、その姿は……!?」



 ――破壊された窓の下の方から、その人は姿を現した。
 アタシがここまで来た理由、アタシがどうしても止めたい人物。星皇カンパニー代表の星皇社長。
 まさかこのタイミングで会えるとは思わなかったが、それ以上にアタシはその異形の姿が気になってしまう。

 普段のスーツ姿の背中から生える、六本の黒々とした機械の手足。
 まるで蜘蛛のようではあるけど、その先端にはいつか見た金属アームのような爪が取り付けられている。
 アタシの頭の中にも、この二つの技術には覚えがある。

 ――星皇カンパニー一階に展示されていた作業用アームと、ケースコーピオンの尻尾となっていた金属アーム。
 その二つをハイブリッドさせた装置を身に着け、星皇社長はビルの壁を登りながらアタシの前へと姿を見せてきた。
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