空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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魔女と家族の新たな日常編

ep243 結婚報告しちゃいました!

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「え……え? そ、空鳥さんと赤原君が……結婚?」
「う、嘘だろ……? 俺達のマドンナ、空鳥さんが……?」
「私達のアイドル、赤原君が……?」

 アタシとタケゾーの結婚発表を聞いて、その場の空気がなんだか凍てついたように感じてしまう。
 これ、アタシはどう反応すればいいんだろ? てか、アタシもアタシでタケゾーみたいにやっぱり陰でモテてたのか。
 男子も女子も揃いも揃って、どこか唖然としたような表情をしている。

 ――てか、この空気どうするよ?



「ねえねえ! 空鳥さん!? それって、赤原君の方から告白してきたの!? どうなの!?」
「う、うん、まあ。タケゾーから告白してきた……で、いいのかな?」
「おい! 赤原!? なんで空鳥さんと結婚なんかしてんだよ!? 幼馴染同士は結ばれないのがお約束じゃなかったのか!?」
「い、いや……。そんなことを言われてもだな……」



 ただそれは所謂、嵐の前の静けさって奴だった。
 少しすると、アタシには女子陣が、タケゾーには男子陣が猛烈に質問を一斉射してくる。おかげでこっちは引っ張りダコだ。
 タケゾーと付き合い始めた経緯とか、デートはどうしてたのとか、新婚生活はどうなのかとか。

「お、俺……ずっと空鳥さんのことが好きだったのに……!」
「私だって……赤原君のことを狙ってたのに……!」

 中にはアタシやタケゾーに片思いしていた男女までいて、その場で泣き崩れてしまう始末。
 タケゾーはともかく、アタシもここまで想いを寄せられていたとは思わなんだ。運命が違えば、本当にタケゾー以外の男性とお付き合いしてたかもね。

「しかも、子供までいるだって!? 赤原と空鳥さんの関係はどこまで進んでるんだ!?」
「子供と言っても……まあ……身寄りのない親戚の子供を養子で引き取ったって形だ」
「てかてかさ! なんで空鳥さんの苗字はそのままなの!?」
「あー……それはアタシが婚姻届にそのままの苗字を書いちゃったせいで……」

 その後も質問攻めは続いていき、時として返答に困るものもあった。
 ショーちゃんの話なんてどう説明したものかと悩んだけど、そこはタケゾーがうまく流してくれた。
 苗字の件については完全にアタシのミスだけど、ここについては余計な誤魔化しの方が悪手だろう。
 そんなこんなで、あっという間にアタシとタケゾーはこの同窓会の渦中ど真ん中だ。



「え、えっと……空鳥さん? つまり君は今、専業主婦ってことかな?」
「……あっ、宇神君。うん、まあ……そんな感じ?」



 そうして周囲に流されまくったせいで、アタシも直前までの話が頭からすっぽ抜けていた。そういえば、宇神君と現在に関する話題の最中だった。
 専業主婦かって言われると微妙だけど、清掃業もまだ復帰できたわけじゃないしね。

 ――専業してるのは『主婦』と言うより『ヒーロー』の方だけど。

「ハァ……空鳥さんほどの人がもったいない話だ。君は僕よりも優秀だったのだから、その程度で収まる器ではないだろう? 素直に大学に進学して、もっと自分の将来性を考えるべきじゃなかったかな?」
「……何さ? アタシがタケゾーの奥さんをやってるのが、そんなに気に食わないわけ? アタシも流石に怒るよ?」

 そんなアタシ個人としては大満足な現状についても、宇神君はどこか辛辣な言葉を漏らしてくる。
 確かにアタシも両親の死さえなければ、大学に進学して今頃同じようなキャンパスライフを送っていたことだろう。
 だけど、そんなものは『もしも』の話で、アタシは今手元にある現実を見据えて生きていきたい。
 そこにいちいちあーだこーだと言われる筋合いなんてない。

「そういう宇神君こそ、大学生活は順調なのかい?」
「もちろんさ。安道舵大学では充実したキャンパスライフを送らせてもらえててね。今なんか、国家プロジェクトにも携わらせてもらってる」
「国家プロジェクト?」

 思わずカチンときちゃうけど、どうにか抑えてアタシの方からも話題を振ってみる。そこまでアタシに言えるんだから、よっぽど充実した生活を送ってはいるのだろう。
 その期待通り、宇神君は何やら凄そうなプロジェクトに関わっているらしい。
 そんなことを軽く口にして大丈夫かとも思ったけど、アタシの心配など他所に宇神君はスマホを操作して何かを見せてくれる。

「これは開発中のものだけど、今後展開予定のVRゲームの資料さ」
「VRゲーム? 見た感じ、フルダイブ型? 随分と思い切った技術を盛り込んだもんだねぇ。……てか、これが国家プロジェクトって、どゆこと?」

 アタシも資料に目を通してみたけど、確かにその中身は凄い。
 フルダイブ型のVRゲームなんて、昨今の技術進歩の中でも実用化までは至ってない。
 軽くプログラムチャートも記載されてるけど、確かにこれなら十分に実用化はできそうだ。

 ――てか、なんで宇神君がこのVRゲームに関わってるのよ? 政治経済学部じゃなかったっけ?



「先日、固厳首相がヒーロー制定法を施行したのは知ってるよね? これはそのためのヒーローを生み出す、疑似訓練プログラムにもなるんだ」
「はへぇ!?」



 思わず疑問に首を傾げてしまったが、宇神君は説明を付け加えてくれた。
 成程。確かにヒーロー制定法は政治の世界の話だ。そこに国内最高の教育機関である安道舵大学が提携していても、別におかしな話でもない。
 だけど、まさかそのヒーロー制定法がこのVRゲームと関わっているなんて思わなかった。思わず変な声が出ちゃう。

 ――どうにも、国は本気でヒーローを作り出そうとしているらしい。このフルダイブ型VRゲームについても、星皇カンパニーの技術提供によるものだろう。
 ただ、アタシ的にはなんだか違う気がするのよね。
 アタシが偶然でヒーローになったからかな? 何て言うか、ただ数を増やせばいいってもんじゃないと思うのよね。
 別にこのVRゲームによる疑似訓練自体を否定はしないけど、もう少し選別面での方針を固めるべきじゃないかな?

「もうじき、これらは一般人にも手が届くようになる。そうすれば、さらなるヒーローの誕生さ」
「それはそうかもしれないけど……そこまで急を要する話なのかな?」
「当然さ。空鳥さんは知らないだろうけど、少し前に壊滅した大凍亜連合という反社組織の残党が幅を利かせてるからね。それに対抗するためにも、ヒーローは必要になってくるのさ」

 宇神君は自慢げな語りを続けるけど、その辺の話はむしろアタシの方が詳しいと思うのよね。空色の魔女という正体は明かせないけどさ。
 確かに大凍亜連合の残党は今も厄介事を起こしてるけど、アタシの見立てだともうその勢力も風前の灯だ。
 今更さらに戦力を増やす意味も見えないし、何より――



「あのヒーロー制定法って、そんなに重要なのかな? 私は別に大丈夫な気もするのよね」
「それ、俺も思うんだよな。なんてったって、この街には空色の魔女っていう、みんなのヒーローがいるからな」



 ――と、アタシが心の中で留めておこうとした言葉を、他の同級生たちが代弁してくれた。
 この中でアタシの正体を知ってるのはタケゾーだけだが、存在自体は世間にだいぶ認知されている。
 まあ、そりゃそうだ。こっちはヒーロー制定法が施行される前からヒーローをやってて、ネットでも諸説飛び交う噂の魔女だ。
 あの噂が出回った当初は『政府が作った偶像』なんて呼ばれてたけど、今となってはアタシ以外の人間がそんな感じになっちゃったか。
 別に口を挟むつもりはないけど、こうやって同級生にも認知されているのはなんだか嬉しいもんだ。
 こういう些細な期待もまた、アタシにとっての活力になるわけで――



「空色の魔女……ね。彼女の存在について、僕は面白くないかな」
「……はぁ?」
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