空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
305 / 465
将軍艦隊編・序

ep305 この人があの人の元旦那なの!?

しおりを挟む
「お? この街の住人はいなくなってくれたかな? オレッチとしては助かる話だ」

 街のみんなが店を出てしばらくすると、フクロウさんがやってきた。
 この人も今回、アタシのために尽力してくれたんだよね。将軍艦隊ジェネラルフリートから謹慎処分を受けてまでさ。

「フクロウさん、さっきはありがとね。だけど、本当にあんたって何者なのさ? 将軍艦隊ジェネラルフリートに牙を剥いておいて謹慎だけで済むなんて、ただの末端パイロットじゃないでしょ?」
「まあ……その通りだ。タマッチャンには最初から知られてたし、アカッチャンにはバレちまったが、ここは改めてオレッチの正体を語らせてもらうよ」

 ただ、どうしても気になるのがフクロウさんの正体だ。
 将軍艦隊ジェネラルフリートの枠組みを超えての行動といい、何かを隠してるのは一目瞭然だ。
 てか、タケゾーにはバレたって……またしても名探偵タケゾーでしたか?
 アタシには推理できないけど、ここまで来るとフクロウさん自身が観念したように語ってくれる。



「オレッチの本名は星皇せいのう 久永ひさなが。昔から戦闘パイロットの間じゃ『梟雄きょうゆう』なんて呼ばれてて……ソラッチャンもよく知る星皇せいのう 時音ときねの別れた元夫だ」
「……え? えええぇ!? フ、フクロウさんが……星皇社長の別れた旦那さん!?」



 その話を聞いて、アタシもマジで目玉が飛び出て顎が外れるかと思った。
 いや、本当にどういうことよ? どうして星皇社長の別れた旦那さんが、将軍艦隊ジェネラルフリートにいるわけよ?

「とうとう、フクロウ自ら話すことになっちまったか……」
「玉杉店長。ボク、びっくりして話についていけない」
「私もちょっと驚いたけど、人の縁ってどこで繋がってるか分からないものだからね~」
「おふくろ、意外と余裕があるな……」

 この真実を先に知っていた玉杉さんやタケゾーは落ち着いてるけど、ショーちゃんはアタシと同じように驚いている。
 お義母さんに関しては……まあ、いつもの調子と言うべきか。
 あんまり深く考えてないのか、あるいは年の功――いや、この話はやめておこう。お義母さんに失礼だ。

「タマッチャンは全部の事情を知ってるだろうけど、オレッチも話せるところから説明させてもらうよ」
「そうしてもらえると助かります。俺も詳しい事情までは聞けてませんからね」

 とにかく、今はフクロウさんの話に耳を傾けるべきだ。
 星皇社長とも関りが深いとなれば、アタシも興味を抱かずにはいられない。

「オレッチと時音は数十年前に出会ってな。当時からパイロット界の梟雄きょうゆうと呼ばれ恐れられていたオレッチだが、まだ駆け出しの研究者だった時音とは妙に気が合ってな。交際からスムーズに結婚。その後、子供も一人できた」
「まさか、あの厳格な星皇社長の旦那さんが、ぶっちゃけこんなチャラチャラした人だったなんて……!?」
「それを言い出したら、ソラッチャンとアカッチャンも似たようなもんっしょ? 人の相性なんて、パッと見じゃ分かんないもんさ。……それに、あの当時は星皇カンパニーもまだ作られてなかった。そもそも『星皇カンパニーを作る目的』がなかったからな」
「あっ……」

 フクロウさんは昔語りを交えながら、アタシ達に事情を説明してくれる。
 どうやら、フクロウさんの方が当時の星皇社長にほだされたって感じらしい。
 梟雄なんて呼ばれた戦闘機パイロットと後に一大企業の社長になる二人が出会って結婚するだなんて、どこかチグハグながらもロマンスを感じる話だ。

 ――ただ、その先の話の展開はアタシにも読める。

「息子が保育園での事故で死んで、それから時音は変わっちまった。息子を蘇らせるため生物学や時空間理論に執着し、資金源として星皇カンパニーという大企業まで立ち上げた。世間的に見れば技術者として誰よりも先を行くキャリアウーマンだが、その心の奥底には誰よりも大きな野望が鳴りを潜めていた。オレッチはそんな時音の姿を見てられず、逃げるように離婚しちまった。気が付けば戦闘機パイロットとして、将軍艦隊ジェネラルフリートの末端でその日暮らしさ……」
「フクロウさん……」
「それでも、オレッチは心のどこかで時音を見捨てようとは思えなかった。あいつが将軍艦隊ジェネラルフリートと接触できた理由も、ウォリアールに多額な援助を送っていただけじゃない。……そもそも、オレッチが時音と将軍艦隊ジェネラルフリートを繋いだからだ」
「…………」

 フクロウさんが語る話を聞くと、アタシも胸を締め付けられてくる。語っているフクロウさん本人はもっと苦しそうだ。
 あの時の騒動にはアタシも深く関わっている。両親から託されたパンドラの箱を始め、多くの犠牲もあった。
 全ては星皇社長が亡くなった我が子を蘇らせるために仕組んだ一大騒動。その騒動の結果、星皇社長自身も時空の狭間に消えてしまった。
 将軍艦隊ジェネラルフリートとの因縁も、あの頃から始まった。

 ――それらの糸を最初に繋いだ人物こそ、元夫であるフクロウさんだった。

「その後の結果については、ソラッチャン達の方が詳しいっしょ? オレッチって、本当に何をやってたんだかなぁ……。愛した女のもとから逃げるように去り、それでも手助けしようとしたら、破滅への道を築いちまってよぉ……」
「……フクロウさんには『星皇社長の元夫』という将軍艦隊ジェネラルフリートやウォリアールにとっても見逃せない立場があったから、下手に切り離されることはないってことですか」
「向こうからしても、オレッチの手綱は握っておきたいんでしょ。時音がいなくなったとはいえ、過去に星皇カンパニーから受けた支援はかなりのもんだ。むしろ今となっちゃ、星皇カンパニーよりもオレッチの存在の方が重要か。こっちとしては、いっそ切り離して欲しいのによぉ……」

 どこか後悔交じりに語るフクロウさんだけど、この人が将軍艦隊ジェネラルフリートでも特殊な立場にいることは見えてきた。
 タケゾーも推察した通り、星皇社長の元夫ならウォリアールという国家としても下手に切り離しせないパイプか。
 ただ、フクロウさん自身はそんな境遇にどこか疲れた様子を見せている。
 それはそうだろう。自らの行いがかつての奥さんを追い詰め、今も重しとなってその身を縛っているようなものだ。

「……だけど、アタシはどこか安心した気もするんだよね。フクロウさんが星皇社長の旦那さんでよかったと言うか、何と言うかさ」
「ん? そいつはどういう意味だい?」

 ただ、アタシ的には一つだけ好意的に受け取りたい部分がある。
 この人、正体を明かしてからもずっと星皇社長のことを話してるけど、その内容で気になることがあるんだよね。

「フクロウさんって、今でも星皇社長のことは愛してるんでしょ? 星皇社長の心配ばっかりして、自分のことはどこか追い詰めるように語ってる。そんな後悔する様子を見てると、離婚はしてもまだ愛してたんだろうなー……って」
「……フッ、仮にそうだったとしても、時音の方はオレッチのことなんてもう眼中になかったっしょ?」
「まあ、アタシが星皇社長からフクロウさんの話を聞くことはなかったねぇ。……だけど、星皇社長は離婚してからも『星皇』って苗字は変えてなかったんでしょ? それって、フクロウさんとの思い出をどこかで抱いてたってことじゃない? もう確認することはできないけど、アタシが最後に会ったあの人は、心のどこかで本心を押し殺してもいた。あの姿を思い出すと、星皇社長はフクロウさんのことも無意識に気にかけてたんじゃないかな?」
「……やれやれ、オレッチよりも時音に詳しいんじゃない? 時音がソラッチャンを評価していたのも、なんだか分かる気がするよ」

 アタシもうまくは言えないけど、星皇社長とフクロウさんの間には絆が残っていたように見える。
 息子さんを失ったことを、フクロウさんだって気にかけていた。だから星皇社長と将軍艦隊ジェネラルフリートを繋ぎ、その計画に加担もしていた。
 そもそも、星皇社長もフクロウさんのことを忘れていなかったからこそ、将軍艦隊ジェネラルフリートの話に聞く耳を持った。

 ――その結末は悲しいものだったけど、切っても切れなかった絆を感じずにはいられない。

「……なんだか、しんみりしちまったか。ただ、ここからはオレッチが『この国にやって来た目的』について語らせてもらうよ」

 場の空気が重くなってしまったけど、フクロウさんは話題を切り替えてくる。
 確かにそっちも気になってたのよね。フクロウさんは今になって、星皇社長のいなくなったこの国にどうしてやって来たのだろうか?

「目的の一つとして、オレッチはソラッチャンの話を聞きたかったんだ。将軍艦隊ジェネラルフリート内部から聞いた情報でも、時音と最後に会ったのはソラッチャンだ。時音が気にかけてた技術者だってことも聞いてたし、オレッチとしても興味があった」
「成程ねぇ。アタシから説明を付け加えておくと、星皇社長は今でも尊敬する偉大なる技術者さ。星皇カンパニーを経営して技術の発展に尽くした姿もまた、偽りなき本当の姿だったよ」
「そいつをソラッチャンの口から聞けると、オレッチも納得できるね。……それともう一つ、オレッチには『探し求めていた技術』があるのさ」

 話を聞く限り、フクロウさんの目的は二つ。一つは今こうしてアタシから話を聞くことで達成された。
 だけど、もう一つの目的――『探し求めていた技術』というのは何の話だろうか?



「コメットノア……。時音のデッドコピーとも言えるあのAIを、オレッチは探していたのさ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

処理中です...