空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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将軍艦隊編・破

ep310 こんなのタケゾーじゃないよ! ネコゾーだよ!

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【あないな遠くからこっちを見てるようやけど……気のせいか?】
「牙島の奴、どんだけ目がいいのよ!? よくそんな遠くからウィッチキャットを見つけられたね!?」

 偵察を進めようとした矢先のアクシデント。不遇幹部の牙島を甘く見てたか。
 あいつは他の幹部と違い、その身体能力はGT細胞によって根底から底上げされている。視力についても同じことだったか。
 ウィッチキャットを遠方から見つけ、不思議そうに眺めているのが映像でも分かる。

【……一応、確認だけはしとくか。ほらよっと】
「マ、マズい……!? ウィッチキャットに向かってる……!?」

 流石にこんな場所に黒猫が紛れ込んでいれば、怪しむのは当然か。牙島お得意の身のこなしで、ウィッチキャットがいる高台の上まで飛び上がってくる。
 こいつ、身体能力だけは本当にバケモノだよね。オツムは弱そうなのに。

【見た感じ、ホンマにただの黒猫っぽいな……。どっかから迷い込んで来たんか?】
「ど、どうしよう、タケゾー!? このままじゃ、牙島にバレちゃうよ!?」
【落ち着け、隼! 俺がなんとかこの場を凌いでみせる……!】

 まだ牙島にはウィッチキャットが猫型偵察ロボットだとはバレてないみたいだけど、こんなの時間の問題だ。
 バレてしまえばアタシとの繋がりまで探られ、この計画もあえなく撃沈となる。
 こっちは映し出された映像越しにパニック状態だけど、操縦者であるタケゾーは何か手を考えている。
 こんな危機的状況でどう誤魔化せるかとは思えないんだけど――



【フニャァ!? ゴロゴロ……! フシャー!】
【な、なんや? 威嚇しとるんか? もしかして、ホンマにただこの辺に住みついとるだけの黒猫ってことかいな? 警戒して損したわ……】



 ――なんと、タケゾーは本当に牙島をやり過ごしてしまった。
 本物の猫と相違ない猫の演技。それを見た牙島はウィッチキャットをただの黒猫だと勘違いし、元の位置へと飛び降りていく。

「よ、よくやり過ごせたもんだね……。アタシはダメかと思ったよ……」
【このウィッチキャット自体、そもそもが『見つかっても普通の猫で誤魔化す』ってコンセプトで作ったんだろ? 開発した本人がそのことを忘れるなよ……】
「……あっ。そうだった」

 タケゾーはウィッチキャットに搭載していた猫ボイスと本物に近い動きで完全になりきってたけど、そういえばアタシもそんなコンセプトで猫型偵察ロボットを作ったんだった。
 これはうっかり。自分で作ったものなのに、コンセプトのもとに搭載した機能まで忘れてた。

【ここから先もこんな感じでやり過ごせそうだな。もう少しウィッチキャットからの情報を待っててくれ】
「……この様子だと、もうタケゾーの方が開発者のアタシよりウィッチキャットに詳しそうだ」

 とはいえ、コンセプト自体は大いに機能している。
 牙島もやり過ごせたし、とりあえずは奥に進んでもっと情報を――



【なんばい? こげん場所に黒猫ね?】
「ま、また見つかったぁあ!?」



 ――などと考えていると、ウィッチキャットが外壁をつたって奥を目指す途中で今度はベレゴマに見つかってしまった。
 ここはかなりの高所だけど、ベレゴマ自身も専用飛行台ベーゴマドローンに乗り、高所から周囲を警戒していたようだ。
 なんで立て続けに最高幹部に見つかるのよ? 下っ端にはバレてないのに。

【フ、フニャァ……!? ゴロゴロ……!】
【おうおう。この辺さ住みついとるだけの黒猫みたいさね。怖がらせて悪かったけんね】

 なお、そんなベレゴマまでもタケゾーは『急に人が空を飛んで来たので怖がる黒猫のフリ』をすることでやり過ごした。
 ベレゴマも特別不思議がることはなく、ゆっくりとベーゴマドローンで飛行しながら離れていく。
 これってタケゾーの操縦技術が凄いことでもあるんだけど、こうも連続で最高幹部が見逃す光景を見るとこう思っちゃうのよね。

 ――五艦将の皆さんって、想像以上におバカさんですか?

【俺も頑張って誤魔化した立場とはいえ、意外とあっさりしすぎて妙な不安に駆られるな……】
「ま、まあ、こっちとしてはオッケーなんだし、それでいいんじゃない? それより、先に進んで偵察をお願いね」
【あ、ああ。今はそっちに集中しないとな】

 将軍艦隊ジェネラルフリートが強敵と理解してても、どこかで変に気が抜けてしまう。
 そもそもこの組織、実力者と同時に変人ばっかり揃ってる感じだよね? 最高幹部でまともなのって、ラルカさんぐらいじゃない?
 まあ『馬鹿と天才は紙一重』って言うんだし、そういうものなのかもね。どういうものか知らないけど。

 ともあれ、こっちに都合がいいのは変わらない。
 タケゾーが操縦するウィッチキャットは壁の淵をつたいながら、洞窟のさらに奥へと進んでいく。

「あっ、開けた空間が見えてきたね」
【どうにも、ここにコメットノアの本体がありそうだな】

 将軍艦隊ジェネラルフリート内でも高所の偵察ができるのなんて、牙島とベレゴマしかいなかったおかげだろう。
 その二人をやり過ごせた後は何の問題もなく、ウィッチキャットは洞窟の深部へと到達できた。
 映像だと穴の先にかなり広い空間が見えてるけど、雰囲気的にコメットノアが眠ってる匂いがプンプンしてくる。
 この場所ならば、どれだけえげつない規模のサーバーが置かれていても――



【なっ……!? う、嘘だろ!? ま、まさか、あれがコメットノアの本体なのか……!?】
「マ、マジで!? こ、これってまさか……!?」



 ――何が置かれていてもおかしくないと思ったけど、アタシとタケゾーの想像の斜め上を行くものがそこにあった。
 コメットノアの本体なんだから、てっきり超巨大なサーバーでも置かれてると思ってたのに、そんなものはどこにもない。
 いや、もしかすると『あれ自体がサーバー』なのかもしれない。そこに顕在する物体は、確かにそれだけの規模を誇っている。



 ――何より、アタシもタケゾーもその姿を一度見たことがある。



【こ、これって……VRワールドで見たコメットノアの姿……!?】
「フロスト博士とも戦った……空中戦艦と同じ姿じゃんか……!?」
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