空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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将軍艦隊編・破

ep309 人工知能を救い出せ!

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「タケゾー。そっちも予定通りに準備できてる? 仕事中にごめんね」
【仕事のことは気にするな。園長も事情は知ってるし、この街のためにも連中の好きにさせないことが第一だ。事前に打ち合わせた通り、準備は万全だ】

 フクロウさんが操縦するガンシップの後部座席に乗りながら、アタシはタケゾーとも連絡を取る。
 作戦も先に用意しておいたし、フクロウさんもタケゾーとショーちゃんには目的地を伝えてくれている。
 向こうはバイクで向かっているようで、こちらよりも先に近くに潜伏できるそうだ。

「ウィッチキャットの準備もバッチシだね?」
【ああ。隼がメンテナンスしてくれたから、問題なく動作してる。これなら多少遠方からでも、潜入しながら状況確認できそうだ】

 タケゾーの役目は久しぶりに起動させたウィッチキャットを使い、コメットノアが眠る場所の偵察をしてもらうことだ。
 今の状況だと将軍艦隊ジェネラルフリートに先手を打たれた感じだし、事前準備をしておいて正解だった。
 後は操縦者であるタケゾーの腕前次第か。

【隼さん。ボク、武蔵さんをしっかり護衛する。だから、安心して将軍艦隊ジェネラルフリートと戦って】
「ショーちゃんの言葉、ありがたく信じさせてもらうよ。そっちのことは任せたからね」

 ショーちゃんにはタケゾーの護衛をお願いし、今は一緒にいてもらってる。
 タケゾー自身は戦えないからね。VRワールドの時みたいに、ジェットアーマーなんてないからね。
 万が一の備えは重要だ。



「……見えてきたぜ、ソラッチャン。やっぱ、将軍艦隊ジェネラルフリートが動いてるっぽいな」
「こんな渓谷にある秘密の洞窟……。いかにも大事なものを隠してるって感じだねぇ」



 そして、アタシとフクロウさんも目的の場所へ近づいてきた。
 近くに道路はなく、渓谷観光用の列車が走る線路だけが引かれた場所にひっそりと隠された洞窟。
 列車からだと完全に死角になるけど、そこに何人か武装した人間が集っているのが見える。
 フクロウさんが言うのだから間違いない。将軍艦隊ジェネラルフリートの構成員だ。

「ここまでは光学迷彩で誤魔化せたが、フロストの旦那のことだ。光学迷彩も破れるレーダーを展開をしてるだろうし、いったんはオレッチもここで待機する」
「ああ、十分さ。ここからはアタシと家族の手で、中の様子を探ってくるよ」
「……ソラッチャン。マジで気を付けておくんなよ? オレッチの読みだと、中にはすでに牙島左舷将、ラルカ右舷将、ベレゴマ艦首将の三人は潜り込んでると見える。五艦将が三人もいるんだから、下手をすれば激戦は必死さ」
「そこについては安心して頂戴な。アタシも切り札であるこのモデル・パンドラで、能力は普段よりも格段に上がってるからさ」

 ガンシップはゆっくりと高度を落とし、バレないように森の中へと着陸する。
 ここまではフクロウさんも用心深く光学迷彩で機体を隠していたけど、敵はそんなフクロウさんの用心さえも上回る上位メンバーだ。
 そんな連中との交戦の可能性も考えて、アタシ自身も最大限の準備はしてある。

 かつて星皇社長との戦いでも使った決戦仕様魔女装束――モデル・パンドラ。
 真っ白いカラーリングなのは相変わらずだけど、これまでの経験をデータとして落とし込み、コストについては改善できた。
 変身ブローチへの対応やガジェットとの両立は相変わらずできてないけど、純粋な能力としては格段に上がっている。
 五艦将だろうが何だろうが、蹴散らしてやる覚悟は満々だ。

 ――実際に交戦は避けたいけどね。
 勝てる保証もないし、コメットノアがオジャンになったら大問題だ。

「そいじゃ、アタシは行ってくるよ!」
「今は本当に頼んだ。時音の分身を、どうか助け出してやってくれ」
「お安い御用……と軽々しくは言えないけど、救出はヒーロー最大の役目さ。アタシだって、意地でも成功させてみせるさ」

 フクロウさんに見送られながら、アタシは森の中を駆け抜けて目的の場所を目指す。
 かつてはモデル・パンドラで星皇社長を救い出せなかったけど、今度こそ成功させてみせる。
 右手には星皇社長が想いと共に託してくれた、改良型デバイスロッドだってある。

 ――余計な考えなんて起こらない。アタシはただ、コメットノアもう一人の星皇社長の救出だけを考える。





「うへぇ~……マジもんの軍隊って感じだ。あんなのを相手にする日が来るとは、ヒーロー稼業もどこまで行くんだかねぇ? ……タケゾー。そっちはどんな感じ?」
【どうにか中には侵入できた。状況は確認中だが……色々と面倒な連中がうろついてる】

 茂みで姿を隠しながら、アタシは洞窟の前までやって来れた。
 バレるかバレないかギリギリの位置。相手が本物の軍隊だけに、アタシも下手な動きはできない。
 まずはタケゾーにイヤホンマイクで連絡を取ると、先に潜入させていたウィッチキャットの視認映像がコンタクトレンズ越しに映される。

「フクロウさんが言ってた通りだ……! 牙島にラルカさんにベレゴマ。将軍艦隊ジェネラルフリートの五艦将が三人もいるじゃんか……!」
【現状、フロスト博士とフレイムの姿は見えない。フロスト博士についてはトップとして安全圏から指示を出しているのだろう。フレイムに関しては……単純に体が大きすぎて入らなかったんだろうな】
「アタシもタケゾーの読みに賛成だね。とはいえ、あの三人だけでも十分な戦力だ」

 その映像を見ると、数人の一般構成員と一緒に最高幹部三名が指示を出しているのが見える。
 やっぱ、後手に回ると辛いよね。とはいえ、それはいつものことか。
 基本的にヒーローって、何かが起こってから対応する立場なんだよね。自分から事件を起こすわけじゃないし。
 そう考えれば多少は気も楽になるか。

「タケゾー。ウィッチキャットの指向性マイクをオンにして。幹部連中の話を聞き出してみよう」
【分かった。俺も遠隔操作とはいえ、緊張が走るな……】

 こういう時のお約束。まずは敵さんからの情報収集だ。
 最高幹部が三人もいるのだから、今後の行動も含めるいい話が聞けるといいんだけどね。

【ベレゴマはん。まーだコメットノアは持ち出せまへんのか?】
【ちいと待たんね、牙島。フロストのオヤジが言ってた通り、こげなもんを動かすさ大事ばい】
【だから自分達が直接現場に向かっているのです。と言いますか、ミスター牙島も他の構成員と一緒に手伝ってください。あなた、幹部と言っても肉体労働担当でしょう?】
【……ワイへの扱いが酷くて泣けてくる】

「牙島って、将軍艦隊ジェネラルフリート内ではこんな立ち位置なんだ……」

 ある程度は有益な情報も入ったんだけど、同時に牙島に対するベレゴマやラルカさんの扱いで気が抜けそうになる。
 牙島って、アタシの中でも過去最高クラスに苦戦したヴィランの一人なんだけど? まあ、確かにあいつって頭脳労働って感じではないよね。
 純粋な戦闘狂で、ただただ純粋に強い。人の上に立ってまとめるような人間――もとい、トカゲ男じゃないか。
 なんで最高幹部に名前を連ねてるんだろ?

 とりあえず、連中もすぐにはコメットノアの本体は動かせない感じか。
 超高性能なマザーAIだけに、サーバー自体もかなり大型なのだろう。

【それより、空色の魔女への警戒を強めてください。今この場において注意すべきは、固厳首相よりも彼女の方です】
【牙島。オマンも見張りをしとかんね。オイどももいったん分散して、目視で確認するけん】
【なんでワイだけ名指しであれこれ言われなアカンのや……】

 そして当然のごとく、敵さんはアタシのことも警戒している。
 フクロウさんとアタシの接点がバレてる以上、警戒されるのも想定の範囲内だ。
 最高幹部もそれぞれ別方向へと分かれ、洞窟内部の様子を探り始める。

 ――牙島の不遇も今は忘却の彼方に置いておこう。

「タケゾー。今のうちにもうちょっと奥まで潜入できない? 幹部が別れた今がチャンスだと思うし」
【そうだな。バレないように慎重に――ん? あれ?】
「タケゾー? どしたの?」
【いや……あいつ、こっちを見ているような……?】

 この隙に偵察を進めようとするも、タケゾーの様子がおかしい。
 アタシもウィッチキャットの映像は共有できてるし、よーく注視してみると――


【……なんや、あれ? 猫か? なんでこないなところにおるんや?】
「ゲッ……!? み、見つかった……!?」
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