空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
337 / 465
将軍艦隊編・急

ep337 アタシはこの人とどういう関係があるのだろう?

しおりを挟む
【私が隼殿に機会を与えた理由だと? それは先に申した通り、以前の観光案内における返礼だ】
「それはVRゲームを買ってもらった件で十分チャラになってるし、それ以上の何かがクジャクさんにはあるよね? アタシの両親のことも妙に詳しそうだし、本当は何があるのさ?」

 終戦という目的は成し遂げても、アタシにはどうしても解せないことが残っている。クジャクさんって、明らかアタシに何かを隠してそうなんだよね。
 父さんや母さんの話題もちょくちょく出てくるし、もしかするとその縁でアタシに手を差し伸べたのかもしれない。
 戦い自体は終わったけど、そこだけがどうにも頭の中にシコリみたいに残ってしまう。尋ねずにはいられない。

【……その件についてだが、今はまだ言うべき時ではない。それに知ってしまえば、隼殿の守りたい日常にも支障が出るぞ?】
「え……? そ、それって本当にどういう――」
【私から語れることは以上だ。五艦将も余計なことは語るでないぞ? ……これにて、通信を終了する】

 アタシの疑問へのまともな回答はなく、クジャクさんと通信していたモニターも暗転してしまった。
 ここまで引き延ばされて、結局は分からずじまいって一番モヤモヤするよね。

「ねえねえ、ラルカさん。クジャクさんがアタシに何を隠してるか知らない?」
「……何故そのことを自分に尋ねるのですか?」

 一度気になってしまうと、納得するまでは引き下がれないものってあるよね。
 障壁が解除されてこちらにやってきたラルカさんへ、思わず尋ねずにはいられない。

「まあ、一番話しやすそうだったから? なんだかんだで五艦将の中だと、一番付き合いも長い人だし?」
「それを言うなら、ミスター牙島も同じではないでしょうか?」
「うーん、あいつは苦手。ちょっと生理的に無理」
「確かにミスター牙島は外身も中身も問題の多い人ですからね」
「……おい、そこの二人。ワイにも聞こえとんぞ? 泣いてええか?」

 牙島が横で口を挟んでくるけど、やっぱりラルカさんから話を聞くのが一番良さそうなんだよね。
 クジャクさんの話からだと五艦将なら事情を知ってそうだし、今回の交渉とは別に聞いておきたい。

「残念ながら、自分では口にすることはできません。クジャク様やボスの命令でもありますので」
「その様子だと、知っているのは事実っぽいよね?」
「それは認めます。ですが、自分もこれ以上は何も語りません。……そもそも戦いが終わったとはいえ、敵相手に馴れ馴れしいです」
「えー、いいじゃん。戦いは終わったんだからさ」
「……あなたと話をすると、自分の調子がどうにも狂います。そうしつこく構わないでください」

 どうしても気になってしまうもので、アタシはラルカさんの肩を揉んだりゴマすりしながらどうにか聞き出そうとしてみる。
 しかし、返ってくるのはそっけない反応のみ。元々は凄腕の殺し屋だとも言ってたし、こういうところは口が堅い。

 ――殺し屋と普通に話してるアタシもアタシで何だろね?

「そいじゃけ、ボス。この後はどうするばい? 報復は止めるんしても、コメットノアの回収ができとらんけん」
「それなー。俺様もクジャク様に釘を刺されたってーことだから、争って奪うこともできねーからな」

 アタシがラルカさんをヨイショしていると、近くでベレゴマとフロスト博士が別の話をしているのが聞こえてくる。
 今回の一件で報復戦争は回避できたけど、コメットノア争奪に関してはまた別の話か。とはいえ、将軍艦隊ジェネラルフリートもこれ以上に事を荒立てるつもりはないらしい。
 それぐらい、クジャクさんの言葉は鶴の一声ってことか。

「何? コメットノアを諦める気はないって? アタシにとっても、あれはただの人工知能なんかじゃない。元夫であるフクロウさんの意志も含めて、もう一人の星皇社長はアタシ達が助け出させてもらうよ」
「クーカカカ。そーゆー人助け優先なところは、本当に甘い魔女ヒーローってーもんだ。まー、こっちも約束は守る。余計な手出しはしねーさ。『こっちからの手出し』は……な」
「……ん? 何か言いたげだね?」

 アタシだってコメットノアの件を忘れたわけじゃない。結局は将軍艦隊ジェネラルフリートとの交渉を優先することになったけど、こっちはこっちで固厳首相から奪取する必要がある。
 いくら将軍艦隊ジェネラルフリートと手を切ったとはいえ、もはやヤバさしかないヒーロー制定法を推し進める固厳首相の手元にあっては、開発者である星皇社長だって浮かばれない。
 この件についてはアタシも個人的に将軍艦隊ジェネラルフリートとやり合う覚悟はあるけど、フロスト博士はどこか意味深な笑みを浮かべながら語っている。

 ――その様相、まさに悪の秘密結社の親玉って感じ。本当によく似合う。



「あっ、ボス。なんや空中電探に反応があるみたいでっせ。……かなり大型ですわ」
「そーか、そーか。向こうから動いてくれたってーことか。それじゃー、俺様の用意した予備プランでいくとするか」



 思わずお似合いのヴィラン姿に感心していると、牙島がフロスト博士に何かを報告した。
 空中電探ってことは、何かがこの上空を飛んでるってこと? そんでもって、フロスト博士もそこは計算済みっぽいよね?

「……成程。ようやく自分もボスの意図が読めてきましたよ。こちらもそれぞれの護衛艦へ戻りましょうか」
「こっちから手出しはせんばい。……じゃっどん、後はそちらさん次第ね」
「フオオォ」

 さらには五艦将がそれぞれの指揮する艦艇へ戻るため、部屋から出て行ってしまう。
 アタシとタケゾーは完全に置いてけぼりだ。さっきまでお互いの行く末を決める戦いをしていたのが嘘のようである。

「……ねえ、フロスト博士。今から何を始める気だい?」
「いーや、何も始めねーさ。……ただ、テメーらはさっさとこの艦橋旗艦から出た方がいーだろーな」
「どのみちもうここにいる意味はないから、俺達も早く元来た天井から外に出るか」

 フロスト博士だけはこの戦艦の指揮官だから残ってるけど、何を始めるのかはアタシにもさっぱり分からない。
 むしろ『何も始めない』ってどういうことよ? まあ、アタシ達も早いところ帰りましょうか。

 デバイスロッドを手に取り直し、宙に浮かせてタケゾーと一緒に腰かける。
 部屋の天井はエレベーターが降りたままで開いてるし、あそこから飛んで帰れば問題ない。みんなに早く報告だってしたいしね。
 将軍艦隊ジェネラルフリートが何をどうするつもりか知らないけど、今は空を見て帰ることだけ考え――



「……あ、あれ? ねえ、タケゾー。あそこの空、何か見えない?」
「あ、ああ。俺にも見えるぞ。か、かなり大きくないか……?」



 ――ようとしたんだけど、出口である頭上に目を向けたところであるものを見つけてしまう。
 こんな戦艦の深部から眺めるだけでも、そこにあるものの巨大さが理解できてしまうほどのサイズ。そもそも、そんなにデカいものが空を飛んでるって事実がヤバい。

 ――ただ、アタシもタケゾーも空飛ぶ巨大な物体の正体には、どことなく見覚えがある。



「ま、まさかあれって……VRワールドで見たものと同じ……!?」
「洞窟の中で眠ってたはずの……コメットノア搭載戦艦が飛んでる……!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

処理中です...