空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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将軍艦隊編・急

ep343 内閣総理大臣が襲い掛かって来た!?

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「……へ? この期に及んで、アタシをどうにかできると思ってるの? 元相撲取りらしいけど、こっちの能力はその上を行くよ?」
「ダハハハ……! テメェの方こそ、オレが何も考えなしに挑みかかると思ってんのかァ? こいつを見ても、まだ同じことが言えるのかァ?」

 正直、アタシと固厳首相の実力差は明白だ。いっそ『勘弁してください!』って感じで許しで乞うと思ったんだけど、固厳首相はアタシとやり合う気満々だ。
 まあ、確かに固厳首相が許しを乞う姿なんて想像できない。見た目だけで言えば、体格はアタシより上だ。
 だけど、こっちは超人パワーを手にした正義のヒーロー。そんなことは固厳首相も承知のはずなんだけどね。

「シャァァァア……!」
「ちょ、ちょっと……? 何をするつもりさ?」

 ただ、固厳首相も無策ではないらしい。むしろ、周囲で起こり始めたことにアタシの方が動揺してしまう。
 固厳首相がその場で四股を踏みながら気合を入れると、共鳴するように空中戦艦自体が震え始める。


 バシュンッ! ギュゴゴゴォオ!!

 バシュンッ! ギュゴゴゴォオ!!


「こ、これは……戦艦の動力線!? 固厳首相に伸びていく!?」

 さらには甲板から何本もの巨大な動力線が飛び出し、固厳首相へと纏わりついていく。
 コメットノアの制御系統は停止しても、動力となる白陽炉はまだ生きている。まるでそのエネルギーを吸収するように、固厳首相に電力が集中している。
 もう何が何だか分からない。アタシの方が固厳首相のやることに圧倒されてしまう。



「シャァァア……ルゥウアァァアアア!!」
「こ、このパワーは……!?」



 ひとしきり固厳首相にエネルギーが集中すると、纏われていた動力線を吹き飛ばしながら再びその姿が現れる。
 普通ならあれで死んでもおかしくないのに、固厳首相は全然平気そうにピンピンしてる。

 ――いや、ピンピンしてるとかそんなレベルじゃない。

「こ、固厳首相……? そ、その体は……?」
「ダハハハ! 驚いたかァ? だが、まだ始まってすらいねェぞォ?」

 全身の筋肉が大きく膨れ上がり、上半身のスーツはその膨張に耐えきれずに弾け飛んでいる。
 ただでさえよかったガタイが、まるでフレイムのようなサイボーグにも挑めそうなまでに大きくなったその姿。
 まさか、白陽炉の電力を吸収してパワーアップしたってこと? いや、どうしてそうなるのよ?

「この力……早速テメェにも味合わせてやるよォオ!!」
「チィ!? 原理は分かんないけど、ちょいと筋肉質になっただけでいい気にならないことだね!」

 とはいえ、見た目的には筋肉が増えただけだ。それだったらアタシでも対処できる。
 こっちは生体コイルを稼働させることにより、常人の筋肉とは質が違う強化細胞を発動できる。
 ただマッチョなだけならば、ムキムキタンクトップの時と同じように返り討ちにして――

「シャラァァアアア!!」


 ドゴボォォオオンッ!!


「ガハァ……!? な、何……これ……!?」

 ――その考えが甘かったことを、アタシは一瞬で理解してしまった。
 超ムキムキとなった固厳首相が開戦合図とばかりに放ってきたタックルは、アタシの体をボールみたいに簡単に吹き飛ばしてくる。
 甲板の先端まで吹き飛んでしまうほどの威力。このパワーはアタシよりも上と見える。
 本当にどうなってるのよ? 電力で筋肉を強化したことも意味不明だけど、そもそもこんなパワーをただの筋肉強化で出せるはずが――



「電力……? 筋肉強化……? う、嘘……? まさか、この力って……!?」



 ――出せるはずは本来ならないのだが、アタシには一つだけ心当たりがある。
 アタシの強化細胞についても、生体コイルによる体内発電があってこそだ。お酒を燃料に発電してるけど、今の固厳首相の肉体に及んでいる原理はそれに近い。
 外部から電力を供給できれば、後はアタシと同じような強化細胞があればいい。

「こ、固厳首相……? その力って、もしかしてアタシと同じ……?」
「ようやく気付いたかァ。将軍艦隊ジェネラルフリートに採取させた空色の魔女の髪の毛から分析した細胞データと、VRワールドで入手した戦闘データ。そこにフロスト博士のナノマシン技術を応用することで、テメェの持つ強化細胞をオレの肉体にもナノマシンを埋め込む形で再現したのさァ……!」
「や、やっぱり……!?」

 アタシが立てた仮説の通り、固厳首相は空色の魔女が持つ強化細胞と同じ能力を手にしていた。
 これが空色の魔女の力に固執し、追い求めていた理由だったのか。
 ラルカさんがアタシの髪をナイフで切って来たのも、フロスト博士がVRワールドで勝負を挑んできたことも、さらには将軍艦隊ジェネラルフリートと固厳首相が手を組んでいたことも、本当に全部計画されたことだった。

 ――とんだ狸がいたもんだ。そいつが内閣総理大臣なのだから、色々と話の次元がぶっ飛んでる。

「オレが最初に可能性を見出した力だァ。そいつをテメェ自身に叩き込んでやれるんだから、運命ってのは面白いもんだなァア!!」
「ガフッ!? ゲホッ!?」

 こっちの理解が追い付かなくても、固厳首相が手を緩めることはない。その圧倒的なまでに暴力的なパワーを使い、アタシを徹底的にいたぶってくる。
 ナノマシンの機能はアタシの強化細胞と同じみたいだけど、出力の桁が違う。
 アタシは生体コイルなどといった他の機能を体内に宿してるけど、固厳首相は能力をパワーに全振りしたってことか。
 実にシンプルとはいえ末恐ろしい。外皮の強度もパワーも、何もかもがアタシを上回っている。

「この力こそ、コードネーム『プライムビッグスター』だァ! 力による民主主義をオレの身で体現することができる、なんとも便利な力だろォ!?」
「ハァ、ハァ……! 『プライムビッグスター』ねぇ……。内閣総理大臣プライムミニスターじゃ収まらないとでも言いたいのかい……!?」
「オレをこれまでの内閣総理大臣と同じと思うなァ! 柔い政治屋気取りとは訳が違う! オレはオレの信念をもってして、その理想を成し遂げるために力を手に入れたんだァ!」

 アタシから言わせれば『プライムビッグスター』という名のヴィラン。無茶苦茶とはいえ信念を持ち、固厳首相は自身も戦える力を手にしている。
 しかもそれが『ヒーローとして人々の日常を守る』ことを信念とするアタシと同じものでありながら、中身は対ともなる『ヒーローという存在で日常をひっくり返す』ことが信念なのだから何の因果だろうか。

 ――アタシの力はこんなことに使うものじゃない。こんな使われ方をされたら、尚更黙ってはいられない。

「……こうなったら、意地でもアタシの手であんたを止めてやんよ。ヒーローの力を争いの道具になんかさせない」
「ダハハハ! テメェの力だって偶然で手に入れたモンだろォ? 使い方をとやかく言われる筋合いはねェなァ?」
「たとえそうだとしても、アタシは争いのない平和の日常のために戦う。……ここで終わりにするよ、固厳首相!!」

 想像をはるかに超える強敵ではあっても、ここで引き下がるわけにはいかない。
 アタシの能力を悪用させないためにも、固厳首相が目指す暴力的民主主義を食い止めるためにも、この戦いで勝利してみせる。



 ――正義のヒーロー空色の魔女として、今全てを終わらせに挑む。
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