空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
350 / 465
ヒーローの在り方編

ep350 内閣総理大臣:固厳 豪Ⅱ

しおりを挟む
 寸前のところで気配を感知し、アタシ達が空中へ回避したところで甲板の下から伸びてきたのは、核融合によって生み出された電力で作られた光の柱。
 あれはもうレーザー砲と言ってもいいレベルだ。回避していなければ、一瞬でローストになっていたことだろう。

「ダーハハハ! 流石は電気の能力を司るだけのことはあり、察しはいいようだなァ! だが、これを見てもなおオレに挑めるかァ!?」
「冗談じゃないって言いたくなるよ……! あそこまで来ると、太陽の力をそのまま使いこなせるようなもんじゃんか……!?」

 これまでは機銃を投げつける遠距離攻撃しかできなかった固厳首相なのに、あんな電気の柱を障壁にされると近づくことさえ難しくなる。
 かといって、こちらに遠距離から攻撃する手立てはなし。アタシに使える電気系の飛び道具はすべからく吸収されてしまう。

「どうする、隼……!? このまま空中に逃げてるだけじゃ、こっちも攻撃できないぞ……!?」
「やっぱり、近づくしかない。でも、どうやって近づけばいいのか分からない」
「そんなにオレに近づく方法に悩むんだったら……こっちから近づいてやろうかァア!?」

 こちらの苦難はまだ終わらないのに、固厳首相の攻め手は緩まない。その強化された超絶身体能力を活かし、なんとこちらに飛び掛かってくる。
 狙ったのはアタシではなく、ショーちゃんを担いでジェットアーマーで空を飛ぶタケゾーの方だ。
 いくらタケゾーがジェットアーマーを使いこなして戦えるようになったとはいえ、ショーちゃんを守りながらの空中戦は荷が重い。

「させるかぁぁあ!!」
「ダハハハ! 空色の魔女も家族が大事かァ! だったら、テメェが代わりになりやがれェェエ!!」

 アタシも慌てて固厳首相に飛び掛かるが、その動きも計算されていたようだ。
 空中で体を回転させ、拳を振り下ろしながらアタシの方へ狙いを切り替えてくる。
 タケゾーとショーちゃんが狙われたせいで焦ってしまったか。振り下ろされた拳は無情にもアタシのどてっ腹へと突き刺さってくる。


 ドゴォォンッ!!


「ガッ……ハァ……!?」
「せっかく家族が助けに来て回復薬まで用意してくれたのに、無様なもんだなァ! 空色の魔女ォ!」

 まともに食らってしまったため、アタシは空中から一気に甲板の上へと体を叩きつけられてしまう。
 修復されつつあった内臓にも再度ダメージが入り、またしても口から鮮血が溢れ出してしまう。思わず口元を押さえた手の平が真っ赤に染まる。
 ここまで吐血した戦いなんて、今までにだってなかった。一発一発が重すぎる。

「寝ながら苦しんでる暇もねェぞォ! 白陽炉による電撃を、もう一度味わいやがれェェエ!!」
「ゲホッ! く、くそ……!」

 さらには休む暇もなく、苛烈に攻め立ててくる固厳首相。向こうも空中から着地すると同時に、再度拳で甲板を殴りつけて電撃を操ってくる。
 アタシも痛みに耐えながら、再び迫りくる電撃の柱を回避するために甲板を転がりながら回避するしかない。


 ズギャァァアアンッ!!


「ハァ、ハァ……! 殴り合っても強いのに、こんなバトル漫画みたいな攻撃までできるなんて反則でしょ……!?」
「それをテメェが言うかァ? そもそもこれらは全部、テメェの能力をベースとしたものなんだぜェ?」

 タケゾーとショーちゃんの救援で形勢逆転と思ったのに、またしてもさっきと同じように追い詰められ始めてしまう。
 転がりながらなんとか電撃の柱を回避したアタシに、固厳首相がゆっくり歩きながら近づいてくる。
 その際に語る言葉の通り、確かに固厳首相の能力はアタシの能力をベースとしたものだ。だけど、ここまで規格外な破壊力など持っていない。
 あらゆる攻撃が当たれば致命傷だし、こっちは外部から電気を直接吸収することもできない。
 その圧倒的な破壊力の前では、アタシにだけ使えるトラクタービームやデバイスロッドでも意味を成さない。
 せめて、固厳首相のナノマシンを動かす電力を弱めることができれば――



「……そ、そうだ! この手ならうまく行くかも! タケゾーにショーちゃん! 少しの間だけ時間を稼いで! お願い!」



 ――こういう危機的な状況に限って、アタシの頭はいつも回ってくれるのよね。ちょっといいことを思いついちゃった。
 普段からこれぐらい器用に頭が回って欲しいとも思いつつ、今やるべきことのためにもアタシは空を飛んだままの二人に声をかける。
 あの大技ならば、固厳首相が身に宿した『核融合のエネルギー』をも相殺できるかもしれない。ただ、時間がかかってしまう。

 ――そのためにも今この場で、タケゾーとショーちゃんに時間を稼いでもらわないといけない。

「じゅ、隼! また何か思いついたのか!?」
「ボクは隼さんを信じる。武蔵さん。下に降りて、二人で戦おう」
「ああ、そうだな! 俺も信じてる! 二人で固厳首相に挑むぞ!」

 アタシの声を聞き、タケゾーもショーちゃんを抱えて飛行しながら固厳首相へ挑みかかる。
 決定打なんて与えなくていい。今はアタシの準備が整うまでの間、注意を逸らしてくれればいい。

「さあ、あの力を再びこの手で作り出すよ……! ちょうど血も出てるところだしさ……!」

 二人の期待に応えるためにも、アタシは一人デバイスロッドに腰かけて上空へ上がり、両手を頭上へと掲げる。
 手の平にはさっき吐血した時の血が染みついている。この血液にもまた、空色の魔女としての能力が宿っている。



 ――これこそ、固厳首相が見に宿す白陽炉という核融合エネルギーに対抗できる、もう一つの核融合エネルギーだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

処理中です...