空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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ヒーローの在り方編

ep353 諦めてなかったの!? 将軍艦隊!

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「まさに漁夫の利ってことけんね。どっちも消耗した今なら、オイどもも余計な苦労せんでええばい」
「ワイとしては喧嘩も控えめで不完全燃焼なんやがな」
「フオオオォ」
「自分達にとってはまたとない機会が訪れたのです。無駄口を叩かず役目を果たしましょう。……後、ミスターフレイムは無理に話に入ろうとしなくても大丈夫です」

 固厳首相との話も終わった直後、アタシ達に近づいてくる五人の影。さっきまで艦艇を潜水させて退避していた将軍艦隊ジェネラルフリート五艦将が、なんとこの空中戦艦にやって来てしまった。
 空を見上げてみると、フクロウさんのもとは別のガンシップがいくつも飛んでいるのが見える。
 まさか、アタシ達の戦いが終わるタイミングを見計らって出てきたってこと? 正直、最悪のタイミングだ。
 こっちにはもう戦える力なんて残ってない。

将軍艦隊ジェネラルフリート……!? 漁夫の利ってことは、やっぱりコメットノアが狙いなのかい……!?」
「その通りってーことだ。テメーらと戦わねーって約束をしちまった以上、そっちで潰し合ってくれるタイミングを伺うのが一番効率的だ。まー、空色の魔女の方が勝つってーのは予想外だったがな……!」

 固厳首相も含めて疲弊しきったアタシ達のもとに現れた将軍艦隊ジェネラルフリートの狙いなんて単純だ。
 アタシ達との交戦を避け、タイミングを見計らってコメットノアを奪い去る。今のこの状況では、こちらにそれを食い止める手段はない。

「……残念だけど、コメットノアの中枢である人工知能はもう自主的に機能停止してるよ。星皇社長のことはデッドコピーも含めて、もう静かにさせてあげてくんないかな?」
「確かに人工知能の方は完全に機能停止してるみてーだな。……AIが自殺するとは恐れ多いもんだ。だが、この空中戦艦だけでも十分な価値がある。こいつは将軍艦隊ジェネラルフリートが持っていかせてもらうぜ。そっちだってこれ以上、戦いになんてしたくねーだろーが? お互いに『もう戦わない条約』のもと、こっちに空中戦艦コメットノアを渡すことで手打ちにしよーじゃねーか?」
「抜け目がないもんだ……。どのみち、こっちに戦える余力も残ってないよ。あんた達の強奪は止めらんないか……」

 星皇社長自身とも言えるコメットノアの人工知能はすでに機能停止死亡したとはいえ、この空中戦艦だけでも将軍艦隊ジェネラルフリートのような軍隊には価値がある。
 ここで奪われるのは癪だけど、この現状で打つ手はない。今はフロスト博士の言葉に従い、せめてこちらが助かるようにするしかない。

 ――むしろ、ここまでアタシとの約束を貫いてくれることが一番意外か。よっぽどバックにいるクジャクさんが怖いのかもね。

「……よーし。この程度なら俺様が制御系統をすぐに修復できる。コメットノアのAIは蘇らねーが、代理的に俺様で制御は可能だな。ベレゴマとフレイムは艦隊に戻ってウォリアールへの帰還を先導しろ。ラルカと牙島はここに残って、作業管理と一応の警備だ」

 アタシ達家族と固厳首相の四人には見向きもせず、フロスト博士はこの空中戦艦を持ち帰る準備を始める。
 いくらコメットノアの制御中枢が停止したといえど、フロスト博士ほどの技術者ならば手動で戦艦を動かすことは可能だろう。
 どうにも歯痒い結末だけど、これ以上できることはない。せめてもの救いは、星皇社長のデッドコピーが連中の手に渡らなかったことぐらいか。
 玉虫色の決着とはいかないけど、最悪の事態を回避できた分だけ良しとするしかない。



「今回もお疲れさまでしたね、ミス空鳥。まさか二度に渡ってあなたと大局において対立するとは……奇妙な縁です」
「おー、ラルカさん。こっちとしては不満も残っちゃったけど、お疲れ様ー」
「……敵を労うのですか。相変わらず、自分でも戸惑う人です」



 ベレゴマとフレイムは空を飛んで帰っちゃったけど、残った五艦将の一人であるラルカさんがアタシ達に声をかけてきた。
 アタシも思わず『お疲れ様』なんて言っちゃったけど、この人の大変な一面も今回は見れちゃったからね。敵味方関係なく労いたくなっちゃった。
 将軍艦隊ジェネラルフリートの最高幹部に名を連ねていても、組織に属するってのは大変なもんだ。アタシも陰ながら待遇改善については応援しておこう。

「まあ、今回はこれ以上あなたと対立する必要もありません。……ですが、労いの言葉の返礼としてこちらも一言申しておきましょうか」
「はへ? 何か言いたいことでもあるの?」

 ラルカさんの方にも敵意はなくなっており、世間話感覚で話を紡いでくる。
 なんだかんだでこの人との付き合いも長い。牙島と違って狂気じみた面もないから、意外とアタシも話をしやすい。元々は殺し屋みたいだけど。
 そういえば、ラルカさんから話を持ち出してくるって珍しいね。どんな内容だろう?



「あなたはもうこれ以上、将軍艦隊ジェネラルフリートやウォリアールとは関わらないほうがよろしいかと」
「……へ? それって本当にどういう意味……?」
「深くは言えませんが、あなたがこれ以上関わってしまうと、あなた自身の日常が崩れ去る恐れもあります」



 これまでもラルカさんから警告を受けることはあったけど、今回の警告は少し意図が違うように感じる。
 なんだか、アタシの心配を第一にしてくれてるって感じ。だけど、その意味がうまく読み取れない。
 てか、アタシも関わりたくて関わってるんじゃないんだけどね。

「余計なことをしてこないなら、こっちだって関わる理由はないさ。あー、でも、今はクジャクさんやフェリアさんとの接点もあるからねぇ。てか、洗居さんとフェリアさんってどうなってんだろ? 王族の縁談がどうのこうのって言ってたけど、二人の恋模様はうまく行ってるのかな?」
「それについては心配ないでしょう。そもそも『フェリア様に王族としての縁談』という話自体、あのお方を今回の騒動に巻き込まないための嘘です」
「えっ!? だったら、洗居さんとフェリアさんの関係はどうなるの!?」
「王族といってもウォリアールは歴史自体が浅く、そこまで厳格な国ではありません。フェリア様に意中の相手がいるのならば、滞りなく話は進むでしょう」

 関わりの一つでもあるフェリアさん及び洗居さんの一件についても口にすると、ラルカさんから思わぬ返答が飛んでくる。
 つまり、フェリアさんが洗居さんを連れて『俺はこの人と結婚するんだ!』って感じに縁談を食い止める計画は、そもそも徒労だったってことじゃん。
 まあ、その結果として二人の関係が進展してるならそれで良しだけどね。

「そういや、あの二人がどうなってるか詳しいことって、ラルカさんも知らないの?」
「お二方がウォリアールに向かってからの話は、自分も聞き及んでいません。こちらも任務やクジャク様の介入で忙しかったものですので」
「まあ王族が絡んでくるとなると、ラルカさんでも深く関われる話じゃないか。……そうだ。クジャクさんの件なんだけど――」
「それについては何も話せません。あなたもあまりあのお方とは関わらない方がよろしいですよ」

 ただ、ラルカさんが関与を拒んでくる姿勢は変わらない。フェリアさんだけでなく、クジャクさんとの関りまで否定されてしまう。
 少し不機嫌になるけど、ラルカさんにもあまり大きく関与できない事情があるのも見える。
 どうしてここまでアタシがウォリアール王族に関与するのか拒むのは別として、今は頭の片隅に置いておくぐらいしかできなさそうだけどね。

「キーハハハ! 本国じゃ『任務絶対主義な最強の殺し屋』なんて呼ばれとるラルカが、随分と空色の魔女には肩入れするもんやなぁ!」
「……ミスター牙島ですか。自分はあなたのような爬虫類と人類のキメラではなく、普通の人間です。別に殺し屋など関係なく普通に誰かを心配することがあっても、何らおかしなことはないと思いますが?」
「おうおう、言うてくれるやないかい。まあ、ワイもお前もここで喋くっとる場合やあらへん。早いとこボスの命令通りに作業せえへんと、いらんところでどやされてまう」

 おまけにアタシ達のもとへ牙島までやって来て、余計な茶々を入れられてしまう。
 ただ、こっちとしてもこれ以上は長居できないか。空中戦艦自体は将軍艦隊ジェネラルフリートの手中に落ちちゃったし、もうそろそろここから飛び立たないとね。

「アタシ達はこれで失礼しようかねぇ。えーっと、ショーちゃんはアタシと一緒で、タケゾーは固厳首相をお願いできる?」
「うん。隼さん、お願い」
「ああ、大丈夫だ。ほら、内閣総理大臣さんよ。俺に掴まりな」
「ダハハハ……。どこまでも甘い連中だァ……」

 これにて、将軍艦隊ジェネラルフリートとの話もおしまいだ。ウォリアール王家との接点は消せないけど、将軍艦隊ジェネラルフリートと戦う機会がなくなることはアタシとしても願う。
 空を飛べるアタシとタケゾーが役割を分担して宙を舞うと、最後に甲板にいるラルカさんにも声をかける。

「そいじゃ、ラルカさん。アディオース!」
「日本人でしたら、素直に『これにて失礼します』と言えばいいでしょうに……」
「ちょい待てや。なんかワイは思いっきり無視されとらへんか?」

 ラルカさんに手を振りながら(牙島のことは半ば置いといて)アタシ達は宙を舞い、高度を落として元いた船へと戻っていく。
 本当に激戦の連続だったし、完全勝利とは言いづらい結末だ。
 だけど、今はこの勝利とその先の未来を掴み取れただけ良しとしよう。



 ――決戦の舞台からも離れ、アタシ達はいつもの日常へと戻っていく。
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