空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
366 / 465
魔女と街のさらなる日常編

ep366 超一流の清掃用務員は本当に超一流だった。

しおりを挟む
「オレも『超一流の清掃用務員』って話を部下から聞かされて興味本位で頼んだんだ時、会ったことがある。あるんだがよォ……」
「何? その思い出話からまだ何か不穏な話が続きそうなニュアンスは……?」

 アタシも話の最中に思い出したんだけど、そういや洗居さんと最初に会った時にこんなことを言ってたっけ。『首相官邸もお掃除したことがある』とか何とか。
 まさか、首相ご本人から確認をとれるとは思わなんだ。本当にあの人、掃除のためならばどこであろうと現れてたのね。

 ――ヤクザの組事務所や反社のフロント企業とかも混ざってたし、掃除に関しての洗居さんは想像の斜め上を天元突破する。

「テメェとあの洗居って女はどういう関係だァ?」
「アタシ、今は表で清掃業をしてるのよね。洗居さんはその上司」
「確かにあの超一流の清掃用務員の部下ともなれば、テメェみてェなヒーロークラスじゃねェと務まらねェかァ……」
「……なんでそこで妙な納得をしちゃうの? てか、その当時に何があったの?」

 固厳首相は思い出を語りながらも、どこか洗居さんに妙な評価を抱いている。
 首相官邸を掃除した時に何かあったらしいけど、評価自体は高そうな気がする。
 あの固厳首相を唸らせるなんて、一体洗居さんはアタシの知らないところで何をしたのだろうか?



「あの清掃用務員……。丁度やって来てた他国の首脳陣の目に留まって、そっちの官邸の掃除まで請け負いやがったんだァ……」
「……何してんの、あの人? 掃除のために国外進出?」
「おまけにそこでの評価も高くて、以前に国際的な会議では『国境を超える清掃コネクション』なんて提案まで出てくる始末でよォ……」
「洗居さんって、掃除で世界平和でも成し遂げるつもりなの? 絶対に違うだろうけど」



 固厳首相も頭を抱えながら語るのは、アタシも知らなかった洗居さんのさらなる清掃エリア。あの人、国内だけじゃ収まらずに国外にまで羽根を伸ばしてたのか。
 やってることのスケールが意味不明だよ。いずれは宇宙に行ってスペースデプリの回収までやるんじゃないかな?
 もっとも、あの人は詰まるところ『掃除するべき場所に行ってるだけ』って感じなんだろうけどね。何か特別なことを考えてるとは思えない。

「それにしても、あの清掃用務員とウォリアールがどう関係するんだァ? まさか、ウォリアールにまで掃除しに行ってるのかァ?」
「固厳首相がそう考えるの仕方ないだろうけど、掃除は一切関係ないんだよね。ここだけの話なんだけど、実は洗居さん、ウォリアールの王子様と婚約することになってさ」
「ウォリアールの王子殿下とだとォ!? ……しかしまァ、あの女ほどの器量じゃねェと、ウォリアールの王族入りは釣り合わねェかァ」
「……さっきから洗居さんに対するその妙な信頼は何? いや、もうこの話も終わりにしたい」

 なんだかおかしな方向に話が逸れちゃったけど、固厳首相も洗居さんのウォリアール王族入りには肯定的だ。
 この人は自分が認めた相手にならばある意味一途であり、洗居さんもその中に含まれてはいる。そう考えれば信頼感も増すかな。

 ――むしろそうしておかないと、この話の着地点が見えてこない。

「しっかしこうなってくると、ウォリアールは一荒れしそうだなァ。現王子殿下に婚約者ができりゃァ、次の跡取りもほぼ確定だァ。別筋の王族が黙って見てるかどうか……」
「別筋の王族となると……クジャクさんのこと?」
「そこはテメェも知ってたかァ。ウォリアールトップの座を掴めるもう一つの血筋こそ、本家とは違う血筋を継ぐクジャク・スクリードの存在だァ。といっても、あっちの家系に世継ぎはいなかったはずだがなァ」

 今度はウォリアールの王族に関する話題が出てくるけど、これに関しては考えたところでどうにもならない。
 アタシもお世話になったクジャクさんの存在も話題に出てくるけど、お国全体の事情についてはノータッチが一番だろう。

「別に荒れることはないと思うよ? フェリアさんだって、洗居さんを陰謀に巻き込む真似はしないだろうし。そもそもクジャクさんって自由奔放で、トップに立って人を引っ張るタイプじゃないし」
「たとえ当事者がそう考えてても、どうにもならねェ時があるのが国ってもんだァ。まァ、オレも少し話し過ぎたかなァ。テメェの要望は頭の片隅入れといてやるから、もうさっさと帰りやがれェ」

 気が付けば結構話し込んでしまったものだ。いきなり首相官邸にお邪魔してしまったわけだし、アタシもここは素直に言葉通り退散としましょうか。
 もし仮にウォリアールで騒動があったとしても、それは行ってから考えるぐらいでいいや。
 それで本当に洗居さんの身に危険が迫るなら、その時こそアタシの出番だ。そういう意味ではアタシが一度ウォリアールに向かって様子を伺うのは合理的かもしれない。

「忙しいところありがとね、固厳首相。あー、アタシがいない間にまた暴力的民主主義思想を推し進めるのはなしで」
「それは当然だァ。やるにしたって、テメェがいる時に正々堂々と――ん? 電話かァ?」

 アタシも忍び込んだ窓からデバイスロッドで飛び去ろうとすると、固厳首相の執務机にあった電話が鳴り始めた。
 内閣総理大臣なんだから、色々と取り次ぐ必要もあって大変なんだろうね。
 中途半端なお別れの挨拶になっちゃったけど、ここは変に待たずにさっさと退散――



「ああァ!? 野党が予算案にケチつけてるだァ!? しかもそれに対してコメントした与党議員のSNSが炎上してるだとォ!? いつもいつも大して力にもならねェ連中のくせに、問題だけは一丁前に起こしやがるなァ! おい、関係者を今日の夜中にこっちへ呼び集めろォ! 一度オレが直々に説教してやるよォオ!!」



 ――するのが正解だってことはすぐに理解できた。アタシも深くは聞いてないけど、そもそも深く聞かない方がいい内容だ。
 執務室に鳴り響くのは固厳首相の怒鳴り声。わずかに読み取れる内容は政治のいざこざ。
 アタシも一国民ではあるけど、なんだか関わるような話ではない。関われそうに思えない。
 とりあえず、固厳首相に任せるのが一番だとは思う。

 ――与野党関係なく『説教する』とか言い出した姿は見なかったことにしよう。

「内閣総理大臣ってのも大変だねぇ……」

 こう言っては何だが、アタシは本当に固厳首相の望むトップの椅子というものに座らなくてよかったとつくづく思う。
 国のトップだなんて、やっぱりアタシには務まらない。今だって街の人々にアタシ不在の間のお願いをして回ってるのにさ。
 アタシは街のヒーロー、空色の魔女。座るべき椅子があるならばそれだけでいい。



 ――洗居さんもウォリアール王族になったら、こんな苦労をするのかな? ちょっと心配。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...