空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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ウォリアール新婚旅行編

ep384 夕食会を始めよう!

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 結婚指輪の作成には時間がかかるし、フレイムのお迎えだって来た。
 アタシ達は指輪作成の手続きだけ済ませると、再びフレイムに最初のタワーへと運んでもらう。

 ――それにしても、ウォリアールでは本当にフレイムが普通に出歩いててもあんまり気にされないのね。
 多少は驚く人もいるけど、日本であんなサイボーグが飛び回ってたらもっと大騒ぎだ。

「おかえりなさいませ、ミス空鳥にミスター赤原。ウォリアールの観光は楽しめましたか?」
「おー、ラルカさん。うんまあ、ビックリするような豪運もあったしね。欲しいものも手に入ったし、万々歳ってところさ」
「喜んでいただけたならば何よりです。ミスターフクロウも大喜びだったと連絡が入っております。今はカジノでプライベートを過ごしているとか」
「……あの人、本当に大丈夫なのかな? また散在しないといいねぇ……」

 戻ってきたアタシ達を案内してくれるのは、今回の新婚旅行のガイド役とも言えるラルカさん。これまでずっと敵対してた人だけど、将軍艦隊ジェネラルフリートの中では一番話しやすい人だし、安心できるのよね。
 星皇カンパニー社長秘書だった時だって、会社の仕事自体はかなり有能にこなしていた。
 五艦将や殺し屋なんて背景がなければ、歳も近そうだしいいお友達になれてたかもね。生真面目で堅物だけど、垣間見える苦労からか接しやすい。

 ――まあ、他の将軍艦隊ジェネラルフリートがイロモノ揃いってのもあるか。
 マッドサイエンティスト、スーパーサイボーグ、口調に難あり、狂った爬虫人類。さらにはギャンブル好きな大企業社長の元夫とか。

「少し早いですが、この後はフェリア様のお部屋で夕食となります。お二方の宿泊部屋につきましてもこのタワー内にご用意してありますので、安心してお過ごしください」
「ひゃー、ウォリアール王族の住む建物で寝泊まりできて、同じ食事まで食べさせてもらえるとはねぇ」
「いえ、食事につきましてはミス洗居が作っております。王族の普段の食事とは別になりますね。……どこかの誰かさんが持ってきた食材のせいで」
「……そういや、アタシが持ってきた野菜で料理を作るとか言ってたや」

 歩きながら今後の予定をラルカさんも話してくれるけど、その口調は淡々としながらもどこか呆れているご様子。
 やっぱ今の洗居さんの立場で色々と勝手に動かれるのは、身辺の世話をする立場の人間からすると好ましくないわけか。

 ――もしかして、アタシのせいでラルカさんの心労が増えちゃった?

「あの方は『王子殿下の婚約者』という身分でありながら、普段から掃除、洗濯、炊事を勝手にこなしてしまいます。この国ではそういった仕事を行う人間には、本職のメイドもいるのですが……」
「もしかして、洗居さんもメイド姿だから自然と溶け込みすぎてるとか?」
「その通りです。こちらが見つけるのも異様に困難で、むしろ『新しく入ったメイドが優秀』などと噂されてしまっております。……ミス洗居は本当に日本ではただの清掃用務員だったのですか? 潜入捜査官か何かではないのですか?」
「潜入捜査官ではないし『ただの清掃用務員』でもないね。……『超一流の清掃用務員』だってさ」
「……意味不明な人ですね」

 将軍艦隊ジェネラルフリート最高幹部であるラルカさんですら『意味不明』と言わしめる洗居さんのウォリアールでの珍行動。それを話すラルカさんの頭は案の定とても痛そうだ。
 まあ、アタシも洗居さんのことはいまだによく分かんない。なんで掃除以外の場面まで出張ってるのさ? しかもメイド服で。

 ――ただ、洗居さんがこうやって家事をすることにはなんとなく思い当たるところがある。

「とりあえず、ご両人とも今は夕食をお楽しみください。また何かありましたら、適任者をそちらに向かわせます」
「オッケー。何から何までありがとね」
「本当に至れり尽くせりで、申し訳なくもなってくるな……」

 フェリアさんの部屋の前まで来ると、ラルカさんは踵を返して退散していった。
 ここまで手厚くしてくれるのはありがたいけど、その動きはどこか事務的だ。いつものラルカさんらしいとも言えるけど、なんだか『あまりこれ以上関わりたくない』って気持ちが見え隠れする。
 まあ、ラルカさんみたいな人からしたら、洗居さんなんて想像もできな人だろうね。アタシやタケゾーでさえも理解しきれないもん。

 ――それにしても、洗居さんはどんな料理を作ってくれたのだろうか? ちょっと楽しみ。でもちょっと不安。
 あの人はあらゆる面で常識を超えていくから、料理の内容でも妙に警戒しちゃう。





「洗居さんにフェリアさん! お疲れ――って、何これ!? 凄い料理!?」
「肉や海鮮に野菜を和えた豪華なビュッフェだな……! まさかこれ、全部洗居さんが作ったのか?」
「ああ、二人とも、お帰り。栗阿が気合を入れて用意してくれたんだ」

 部屋に入ると早速目に入るその料理。ある意味で予想通りにアタシの想像を超えてはいた。だけど、それは物凄くプラスの意味でだ。
 テーブルに綺麗に並べられたのは、まさに王族が食べそうな豪華豪勢フルコースといった料理の数々。
 刺身や天ぷら、山芋のとろろといった日本リスペクトな料理もあるし、食べごたえは十分すぎるほどだ。
 何より驚くべきは、これらを全部洗居さんが作ってくれたということ。

「洗居さんって、料理の腕前まで超一流だったの……!? 掃除だけじゃなくて、主婦力ハンパないじゃんか……!?」
「いや、栗阿も当初は人並程度にしか料理はできねえみたいだった。ただ、俺と婚約してからかなり練習したらしくてな……」
「え!? 個人の練習でここまで上手くなっちゃったの!? あの人、どんだけ努力家なのよ!?」

 先に席へ座っていたフェリアさんの説明を聞いていると、やっぱり洗居さんの行動と能力はアタシの予想斜め上を打ち上げ花火してくれる。
 だって、どう見たって短期間の練習でどうにかなるレベルじゃないもん。いい意味で頭おかしいよ。

 だけど、よく考えてみれば『努力家』ってのは洗居さん最大のトレードマークでもある。『苦手な接客を鍛える練習』として、玉杉さんのバーで働いてたぐらいだ。
 苦手なことであってもまずは努力し、その上で克服していくその姿。奇行が目立ちつつも、その努力に痺れる憧れる。

 ――アタシももっと時間をかけて練習すれば、この領域に辿り着けるのだろうか?

「つうか、洗居さんがここまで料理を頑張ったのって、フェリアのためなんだろ? 少しでもいい奥さんになろうと頑張ってるってところか」
「まあ……赤原の言う通りなんだろうな。そこは俺も感じ取れる。正直、この上なく嬉しい話だ。その……一応は俺との婚約に前向きな証だろうし……」
「ん? どしたのフェリアさん? 『嬉しい』なんて言いつつ、奥歯に何か挟まった物言いだねぇ?」

 まあ、洗居さんがここまで努力した理由についてはタケゾーと同じ考えだ。てか、そうとしか考えられない。
 フェリアさんもそこは理解しているのか、どこか恥ずかしそうに語ってくれる。ただ、その裏にまた悩ましいものまで見えてしまう。

「そういや、その肝心の洗居さんはどこなのよ? 部屋にはいないの? トイレ掃除?」
「そこは普通に『トイレ』でいいだろ。……まあ、あの人なら『トイレ掃除』でも間違ってなさそうな気さえするが」

 何より気になるのは、今この場に洗居さんがいないということ。アタシ達夫婦も豪勢な料理を用意してもらった身として、是非ともお礼を述べたい。
 そもそも、夕食はみんなで食べるって話のはずだ。洗居さんがいないと揃わないじゃん。
 アタシとタケゾーも冗談交じりに話題を振ると、フェリアさんは重そうに口を開いてくれるんだけど――



「栗阿は……その……『俺と一緒に食事をすると恥ずかしさで死ぬ』と言って、今でも一緒に食事をとれてなくて……。今は一人、ベランダにいる」



 ――『またこのパターンか』って話が飛び込んで来た。
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