空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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ウォリアール新婚旅行編

ep383 結婚指輪を作ろう!

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 アタシはタケゾーの手をグイグイ引っ張り、ジュエリーショップへと入っていく。
 ついさっき嫌な出来事もあったし、気持ちも切り替えたい。
 今のアタシ達は新婚旅行の観光中。余計な横やりに脳のリソースを割きたくない。

「ここは……ジュエリーショップか。そういえば、俺もまだ隼に結婚指輪を渡せてなかったさ」
「でしょでしょ? 新婚旅行なんだし、ここで一つ作っていかない?」

 タケゾーにも話を持ち出し、アタシはややカラ元気気味に目的の結婚指輪の話へ繋いでいく。
 ちょいと無理矢理かもしれないけど、ショーケースを眺めれば曇った気持ちも晴れるでしょ。

「おっ? ここに並んでる青い宝石だが、これって以前に星皇社長にもらった原石を加工したものじゃないか?」
「本当だねぇ。そういや、あの結婚祝いの原石はウォリアール産なんだっけ」

 気晴らしのために眺め始めたショーケースだけど、その中でひと際目についてしまった青い宝石。
 原石を加工してあるだけど、間違いなくアタシとタケゾーが結婚直後に星皇社長とラルカさんから祝い品としてもらったものだ。
 透き通るような青色は実に美しく、見てると思わず吸い込まれそうになる。

「ご両人は新婚のご夫婦でしょうか? そちらのスワロースカイに興味がおありのようで?」
「スワロースカイ? この宝石の名前?」
「ええ、その通りです。メガフロート上にあるウォリアールにとって、数少ない天然資源です。この国の真下に鉱脈があり、そこから採取されたものがこのスワロースカイです。かつてこの国にとって偉大だった先人が発見し、当時その人物が婚約を控えていたが故に『縁結びの宝石』とも呼ばれています」
「はえ~……! なんだかロマンチック……!」

 店員さんも近づいてきたので話を聞くと、なんとも興味深い逸話も聞けてくる。
 そういや、星皇社長にプレゼントされた時にも『ウォリアールで縁結びの意味を持つ』みたいな話を聞いたっけ。
 『燕の空スワロースカイ』なんて名称も実にお洒落だ。母さんの名前である『空鳥 ツバメ』とも重なってくるし、結婚指輪に使うならこれ以上の宝石はないだろう。

「すみません。この宝石を使って結婚指輪を作ることってできる?」
「それは可能でございます。ですが、いささか加工が難しい宝石でして。完成まではかなりお時間をいただくことになりますが、それでもよろしいでしょうか?」
「ウォリアール滞在中の完成は難しいか……。だったら、後で国外に郵送とかできるかな?」
「それでもよろしければ、こちらでご用意いたしましょう。指のサイズ採寸や手続きをしますので、しばらくお待ちください」

 アタシが願い出ると、店員さんはすぐに準備を始めてくれた。
 これこれ。こうやって夫婦で共通する何かを買うことこそ、新婚旅行の醍醐味だよね。
 上司の発狂に付き合ったり、嫌な人に声をかけられたりとかじゃなくってさ。

「値段表を見ると、結構な金額にはなるのかな?」
「スワロースカイだけ他より値段が高いな。だが、今の俺達にとっては問題ないか」
「これまでは空色のキーホルダーが指輪代わりだったからね。奮発できるなら奮発しちゃおうよ」

 待ってる間にカウンターの予算表にも目を通すけど、カジノで一攫千金してしまったアタシ達には関係ない話だ。
 なんだか開幕色々と起りまくってるけど、やっぱ新婚旅行を新婚旅行として楽しむのが一番で――



「……なあ、隼。お前、少し無理してないか? なんだかカラ元気が透けて見えるぞ?」



 ――あるのだけれど、これはアタシの周囲で巻き起こるウォリアールでの『何か』から気を紛らわせるためのちょっとした現実逃避ではある。
 そのことはタケゾーにもバレていたようで、少し暗い顔をしながら心配の声をかけられてしまう。

「俺が牙島と何を話していたかも聞かないし、さっきも天鐘って人達から何か言われたんだろ? これでもお前の幼馴染兼旦那だ。隠したって分かるものは分かる」
「……やれやれ。勘の鋭さはお義父さん譲りのようで。まあ、アタシも不安が募って来てるのは事実さ。目を背けたくもなるのよ」

 正直、悩み事が尽きないのが現実だ。アタシだっていくら能天気でいようとしても、こうも立て続けに色々起こるとその背後に何があるのか気になってしまう。

 アタシがこうやってウォリアールにお呼ばれした本当の理由。
 どこか特別扱いが過ぎるような周囲の態度。
 因縁深い将軍艦隊ジェネラルフリートでさえもアタシをもてなしてくれる状況。
 星皇カンパニー関係者の存在。
 デザイアガルダまでもがこの国に囚われていること。

 ――アタシも技術者として、あまり非科学的な話はしたくない。だけど『運命とも言うべき糸』が今この場この時に集まっている感覚は拭えない。

「……本当はさ、アタシも不安なんだよね。フェリアさん達は『悪い話じゃない』なんて言うけど、本当にこれから何の話をされるのか気になっちゃって……」
「……お前は昔から、周囲を不安にさせるのを嫌がるところがあるからな。俺には『不安は打ち明けてくれ』なんて言うくせに、自分一人で溜め込むんじゃない」

 アタシの不安を、タケゾーはまるで目で見えているかのように感じ取っている。
 その上で言葉を交えながら、優しく体を抱きかかえてくれる。

「俺もこの先、隼にどういう話が舞い込んでくるのかは分からない。だが、一つだけ確実に言えることがある。俺は何があっても隼の味方だ」
「……まったく。どこまでもお人好しな旦那様なことで」

 その腕の温もりと温かい声を聞くと、アタシも自然と不安が和らいでくる。惚気た話だけど、やっぱりアタシにとってタケゾーの存在は大きい。
 こんな初めての異国でまだ真相の見えない運命が迫っていても、タケゾーが傍にいてくれれば乗り越えられる。
 アタシも不安を紛らわせるために、タケゾーの体を抱き返して胸元に顔をうずめる。



「ヒュー! なんとも熱いカップルだぜ!」
「これは店としても、最高の結婚指輪をお作りしないといけませんね」
「This is MOE! This is TOUTOI!」



 ただ、こんな店の中でやることではなかった。周囲にいる他のお客さんや戻って来た店員さんに冷やかされてしまう。
 いや、アタシも今になって恥ずかしくはなるけどさ、場の空気に思わず飲まれちゃったのよね。

「……俺達、何やってんだろうな?」
「なんだか、バカップルと思われちゃってるねぇ……」

 さっきまでのラブラブ空気から一転、アタシもタケゾーも頭は冷静になってくる。だけど、ハグはそのままだ。
 なんだか、引っ込むタイミングを逃してしまった。頭は冷静になって来てるのに、顔は熱くなってくる。
 新婚旅行にまで来て、アタシ達は何をやってんだか。まあ、ラブラブだからこその新婚旅行ではある。
 これがいつもの街だったら知り合いばかりで、余計に居づらい空気なことこの上なかっただろう。
 でもまあ、そこは異国なこともあって、知り合いに言いふらされることも――



「……フオオオォ」
「フ、フレイム!? あんた、いつの間に!?」



 ――ないとは言い切れないのがここウォリアール。因縁深い人間という意味では、普段の街より多いかもしれない。
 どうやらアタシ達を迎えに来てくれたらしいフレイムが、店の外からガラス越しに眺めてきている。表情なんて分かんないけど、もうなんか自然と『呆れてる』っていうのが読み取れてしまう。
 てか、あの巨体サイボーグの接近にも気付かないほど、アタシ達は夫婦の世界に入ってたのか。これは恥ずかしい。
 さらにフレイムは手元のフリップに何かを書き出し、こちらに見せてくれるけど――



「『お邪魔だったでしょうか?』……って、よ、余計なお世話だよ!?」
「フオオオォ……」
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