空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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もう一つの故郷編

ep399 お偉いさんが接触してきた!

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「クジャク様があなたに真相を打ち明けたという話は、ワタシの耳にも入っておりましてね。ホホホ」
「ふーん。ウォリアールと提携してる星皇カンパニーの窓口ともなれば、情報の入りも早いもんだ。……それにしても、あんたの護衛二人でアタシを挟まれると、妙な息苦しさを感じちゃうんだけど?」
「クジャク様の肉親であるならば、これぐらいの護衛はつけて当然でしょう。あなたは次代のウォリアールを担うお方ですので」

 天鐘はこちらに接触してくると、周囲の人々にバレないようにアタシを護衛と共に少し離れた路地へと連れ出していく。
 アタシへの配慮という意味合いで護衛を両サイドにつけてくるけど、むしろ『逃げないように取り囲んでる』って印象が強い。
 行先だってどこかの店の中じゃなく、人のいない路地なんて嫌な予感が満々だ。

 ――洗居さんが言ってた『不届きな考えを持つ人間』って言葉がしっくりくる。

「てかさ、天鐘さん。あんたさっきからアタシが『ウォリアール王族に戻ること前提』みたいに話してるけど、まだ何も決まってないからね?」
「左様でございますか? 今だってこうして秘密裏に国民の声に耳を傾けるあたり、すでに王族としての意識をお持ちなのでは?」
「あれはアタシがどうするか考えるための視察さ。今後を決めるための材料だよ」

 どうにも天鐘はすでにアタシが王位を継ぐ気でいると思ってるらしく、勝手な前提で話を進めてくる。
 ここまでくると本当にお約束だ。アタシが王族になることで、そこに取り入ろうとする気が透けて見える。むしろ隠す様子すら見えない。
 確かに一国の王族と直接パイプを持てれば、天鐘の星皇カンパニーでの立場も向上するのだろう。とはいえ、こうもあからさまな態度で本当にうまく行くと思ってるのかね?
 アタシも星皇社長のことは今でも尊敬してるけど、別に星皇カンパニーの他社員の事情なんて知らない。そもそもこうやって取り入ろうとする人間って、どうにも受け付けないのよね。

 ――鷹広のおっちゃんと同じ匂いを感じちゃう。このきな臭さだけは苦手だ。

「今後を決めるとおっしゃりますが、何を悩む必要があるのですかね? ウォリアール王族となり次期トップの地位も保証されれば、将来は約束されたも同然ですよ? このような提案を逃すなど、普通に考えればあり得ないでしょう?」
「生憎だけど、アタシがそういうのに執着する人間だったら、星皇社長の勧誘だって断らなかったさ。……アタシには天秤にかけてでも守りたい日常がある。ちょいと貧乏で悩むことがあっても、ずっと身を置きたい環境があるのさ」
「ホホホ。そうは言いつつも悩んでいるあたり、ウォリアール王族という選択肢も捨てきれないのでしょう? それとも、何か別の理由でもおありで?」
「……さあねぇ」

 アタシがそっぽを向きながら視線を逸らしても、天鐘は腰を低くしつつもどこか腹立つ物言いで物申してくる。
 多分、アタシが洗居さん達のことも天秤にかけてるのもお見通しっぽい。そこを刺激する物言いといい、本当にいけ好かない。
 こっちもあんまり事を荒立てたくなかったからおとなしく話を聞いてたけど、もうこれぐらいで十分だろう。
 洗居さんにも忠告された通り、こういう不届き者の話をこれ以上聞くメリットもなし。アタシと内密な話をするために人のいない路地を選んでくれたことも好都合だ。

「悪いんだけど、あんたの長話には付き合いきれないや! アディオス!」

 そんなわけで、ここはやっぱりアディオス一択。魔女装束に変身する過程も省き、生体コイルの稼働率だけ上げて一気に駆けだす。
 この場所は空を飛んで逃げのが難しいし、走って逃げるだけなら変身の必要もない。ちょうどフェイントにもなったようで、アタシを囲っていた護衛二人の足元を低姿勢で潜り抜け、路地の奥へと逃げ込んでいく。

「おやおや、逃げられるとはワタシも傷つきますね。……お二方、彼女を捕えてください」
「かしこまりました」
「我々にお任せを」

 ただ、向こうもこのままアタシを見逃してはくれないようだ。天鐘の命令を聞き、護衛の白人黒人コンビがこちらへと走ってくる。
 とはいえ、こっちは身体能力に関しては空色の魔女の時と同じ。空色の髪をなびかせながら、颯爽と追っ手を引き離しにかかる。
 いくらウォリアールでもそれなりに要人である天鐘の護衛と言っても、今のアタシに追いつけるわけ――



「残念だったな。我々もただの軍人ではない」
「GT細胞とナノマシンをハイブリットさせた身体能力強化。簡単に逃げられるとは思わんことだ」
「え!? 嘘!? 追いついてきてる!?」



 ――ないと思ってたのに、後ろを振り向けばなんと二人はアタシの動きに食らいついてきていた。
 ただの護衛程度だと思ってたのに、その身体能力は空色の魔女アタシに勝るとも劣らない。
 どうにもGT細胞やナノマシンといった将軍艦隊ジェネラルフリートお約束の技術を使っているらしく、ここがこれまでと違うウォリアールという異国であることを改めて認識してしまう。
 これまで特定のヴィランしか持ってなかった能力を当たり前のように持ってるなんて反則でしょ。天鐘がお偉いさんだから護衛も特別だとか?

「と、とりあえず、この路地でどうにか振り切って――って、やっべ!?」

 それでも必死に走れば追いつかれるほどではない。路地を走っていけば振り切れると思い、そのまま奥の方へと逃げ続ける。
 だけど、それがマズかった。アタシが角を曲がると、そこは完全な行き止まり。上も飛んで逃げられないように塞がれてるし、まさに袋の鼠だ。

 ――どうにも、天鐘にハメられたっぽい。この路地にアタシを案内したのは、万一の時に逃げ切れないようにするのが目的だったのか。

「ど、どうしよ!? こんなところであんな超人二人に追い詰められたら捕まって――むぐぅ!?」

 さらに追い打ちと言わんばかりに、アタシの背後から何者かが掴みかかって口を塞いでくる。
 まさか、あの護衛二人以外にも仲間が待機してたってこと? いつだったかにラルカさんにハメられたのと同じパターンじゃんか。
 こんな目に遭うのならば、やっぱり一人で迂闊に出歩くべきじゃなかったのかな? 洗居さんの忠告をもっと真剣に聞くべきだった。
 後悔しても遅いけど、今はここから力づくにでも抜け出す方法を考えて――



「静かにしてください、ミス空鳥。あの二人に見つかってしまいます。そのまま黙ってこちらの抜け道に来てください」
「リャ、リャリュファラルカひゃん……!?」
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