空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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紅い闇編

ep415 タケゾー「愛する人を助ける手段が見えてきた」

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「外部デバイス……? そ、それがあるから、隼はああやって操られてると……?」
「そーゆーことだ。アポカリプスが完全に体内へ注入されてたら、それこそ理性も失くして言葉も話せねーだろーよ。だが、今のあいつはまだ言葉を話せるぐれーの理性は残ってる。……だとすれば、まだ完全に体内へアポカリプスを浸透させたわけじゃーねーはずだ。俺様の読みが正しければ、脊椎の辺りに外部デバイスを装着させられて、そこからアポカリプスの効果を受けてるんだろーよ」

 フロスト博士が語ってくれるのは、アポカリプスと呼ばれる新型GT細胞の仕様について。元々はこの人がGT細胞自体の開発者だったらしいから、未開発の新型であっても少しは知っているようだ。
 その記憶を頼りに一つの可能性を提示し、俺に教えてくれた。

「たーだーしー、仮にその通りでも、肝心の外部デバイスを抜き取る手段がねーんだよ。フレイムやベレゴマでさえ、自称『クリムゾンウィッチ』となった今の魔女相手には、近づくことさえできやしねーんだ。そこをどーやって対処するつもりてーんだ?」
「……だったら、俺が行きます。ジェットアーマーを使って隼の背後に回り込み、外部デバイスを抜き取れば――」
「馬鹿か、オメーは? ジェットアーマーが扱えると言っても、所詮は素人だろーが。そのジェットアーマーにしたって、魔女が作る磁場の前では意味ねーだろ? まさか、フレイムとベレゴマを囮にして、その間に掴みかかるとかじゃーねーだろーな? 素人の浅知恵のために、大事な部下を使うわけにはいかねーだろが?」
「そ、それは……確かに……」

 ただ、その可能性の前にも問題は立ちはだかっている。隼に埋め込まれた外部デバイスを抜き取ればいいらしいが、今度はそのための手段が必要になってくる。
 フロスト博士からしても俺の考えは読めていたらしく、先にその浅はかさを潰すように発言してくる。
 この人からしてみれば、俺なんて隼の夫であっても部外者だ。下手な横やりで戦局を乱したくないと考えるのは当然だ。

 それでもわずかな糸口が見えた以上、俺はどうしても動く気持ちを抑えられない。
 どうにかフロスト博士達の力を借りず、別の方法で隼に近づくことができれば――



「アカッチャンにフェリッチャン! それにフロストの旦那! オレッチも状況は理解させてもらったぜ!」
「フ、フクロウさん!?」
「お前も来てくれたのか!?」



 ――俺が四苦八苦していると、フクロウさんがガンシップに乗って飛んで来た。ベランダに横付けすると、コクピットを開けて話に割り込んでくる。
 この人も末端とはいえ将軍艦隊ジェネラルフリートの一員だし、最高幹部が一堂に動き出したことで何かを感じ取ったのか。

「なあ、フロストの旦那。オレッチのガンシップでアカッチャンをソラッチャンの頭上まで送って、そこから飛び降りて一気に接近する作戦ってのはどうだい? フレイム艦尾将とベレゴマ艦尾将に無理ない範囲で相手をしてもらって隙を作れば、チャンスは伺えるっしょ?」
「……フクロウ。オメーも将軍艦隊ジェネラルフリートの末端だろーが? さっきそっちの旦那様にも言ったが、大事な部下を下手な作戦に巻き込みたくねーんだよ」
「オレッチのことを『大事な部下の一人』って言ってくれてるのは嬉しいけど、無用な心配ってもんっしょ? なんだったら、今ここで将軍艦隊ジェネラルフリートをやめてもいいんだけど?」
「……そーやって立場を交渉材料に使うのは、敵の黒幕が星皇カンパニーの人間だからか? それとも、こいつらの面倒を見てーからか?」
「どっちもだね。……いずれにせよ、この戦況を打開するにはこのまま手をこまねいてても仕方ないっしょ? やれることをやらないと、本当にソラッチャンがフェリッチャンを手にかけちゃうよ? それはフロストの旦那だって避けたいっしょ?」
「……クーカカ。下っ端パイロットのくせに、ボスの俺様に意見するとはおもしれー奴だ」

 そして、フクロウさんは俺に味方するようにフロスト博士を説得してくれる。自らの『星皇カンパニー関係者にして将軍艦隊ジェネラルフリート構成員』という複雑な立場も利用し、無理くりにでもフロスト博士を言いくるめようとする。
 それにフクロウさんが言う通り、隼の頭上からならば途中でジェットアーマーの出力を狂わされたとしても、そのまま落ちてしがみつくぐらいはできるかもしれない。
 作戦内容としてはかなりの危険も伴う。だが、それで隼を助けられる可能性があるならば、俺もそれに賭けてみたい。



「おい、赤原……だったな? ジェットアーマーを装備しろ。オメーらの作戦に乗ってやるよ」
「ッ!? あ、ありがとうございます!」



 フロスト博士も渋々ながら、こちらの提案する作戦に納得してくれた。その言葉を聞けば俺の動きも早い。
 すぐさま言われた通りに変身カプセルでジェットアーマーを装備し、準備を進めていく。

「フレイム、ベレゴマ。オメーらはそのまま対象の意識を誘導してろ。……よし、赤原。オメーのジェットアーマーのヘルメットに内蔵された通信機と俺様の通信機の周波数を合わせておいた。こっちもここから確認して指示を出すから、そこは素直に従えってーことでな」
「ええ、分かってます。こういう荒事に関しては、本来あなた達の方が適任者ですからね」

 フロスト博士の方の準備も早い。すぐさま俺達の推奨する作戦に合わせる形で指示を出し、俺へのサポートができる手段も用意してくれた。
 まともにジェットアーマーで戦った経験の少ない俺だが、今は隼を止めることだけ考えればいい。隼を救うためならば、いくらでも無謀になってやる。
 余計な思考も惑いも断ち切り、俺はジェットアーマーの姿でフクロウさんのガンシップへと飛び乗る。



「待ってくれ! 俺も連れて行ってくれ!」
「フェリア!? お前まで!?」



 そのまま出発と思ったが、なんとフェリアも黒いレインコートと高周波ブレードを装備し、フクロウさんのガンシップへと飛び乗ってきた。
 こいつにしてみても、今回の騒動で責任を感じてはいるのだろう。だが、流石にフェリアがついてくるのは危険すぎる。

「……フェリア様。あんたはあのクリムゾンウィッチの標的でしょーが? それなのに自分から近づいていくなんて、馬鹿のすることでしょーが?」
「別に俺のことを馬鹿だ何だと罵っても構わねえよ。実際、俺は大馬鹿者だ。だが、自分の不始末にケジメぐれえはつけてえ」
「……どーせ俺が止めよーとしても、無理矢理押し通すつもりでしょーが。……へーへー、分かりましたよ。国王陛下への説明は、俺様も後で考えましょーか」
「悪いな、フロスト」

 それでもフェリアの決心は固い。フロスト博士の制止も振り払い、意地でも俺やフクロウさんについてくるつもりだ。
 確かに相手は想像以上の力を持った隼だ。洗脳されてクリムゾンウィッチというヴィランになってしまったあいつ相手には、少しでも戦力が欲しい。

 ――そう考えれば、ここで余計な議論をする時間も惜しい。

「フクロウさん、フェリア。隼のためにもよろしく頼みます」
「へへっ。任せときなって、アカッチャン」
「俺も隙を作れるように最善は尽くす。空鳥のことは絶対に助け出すぞ」

 覚悟もメンバーも決まった。フクロウさんの操縦するガンシップの翼に張り付きながら、俺とフェリアは隼の元へと向かう。
 急ごしらえでも、隼を救うための用意はできた。味方してくれる人も多い。



 ――後は迷わずに目的を成し遂げるだけだ。
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