空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

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狂月明ける空編

ep447 憎たらしい元凶を追い詰めろ!

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「ジェ、将軍艦隊ジェネラルフリートによる包囲網……!? い、いつの間に……!?」
「生憎と、オイどもはオマンよりウォリアールには詳しいばい。戦って勝つつもりだったけんど、見識が甘すぎたってことね」
「フオオオォ!」

 フロスト博士の声に合わせるように、ベレゴマとフレイムもそれぞれが指揮する艦艇の前で空を飛びながら挑発している。
 そこまでされても、天鐘は怯えるばかり。本当に甘かったとしか言いようがない。
 色々と味方がついて調子に乗っちゃったんだろうけど、それで浮足立ってたらわけないよね。
 ここまで来たら、本当にあと少しで決着が着く。



「うぐぐぐ……!? き、貴様ら! ここで時間を稼いでろ!」
「そ、そんな!? いくら何でも、これほどの戦力を相手に――」
「黙れぇぇえ!! ワタシが捕まったら全ておしまいだ! 牙島ぁ! 貴様は一緒に来てワタシを守れぇぇええ!!」
「こないな状況でどこに逃げるか知りまへんが……ええでっしゃろ」



 ただ、天鐘の悪あがきはまだ終わらない。本当に無駄にしぶとい。
 艦尾側にいるアタシ達の相手を下っ端に任せ、自分は牙島を連れて艦首側へと逃げ始める。
 牙島だってもう結果は見えてるのに、律儀に従うもんだ。とはいえ、こっちも黙って見過ごすわけにはいかないか。

「隼! 武蔵殿! この場は私とフェリアが受け持とう! 将軍艦隊ジェネラルフリートの援護もあれば問題ない!」
「天鐘のことは頼んだぜ! 俺はこの場で栗阿を守る! 絶対に守り抜いてやるよぉぉおお!!」
「フェ、フェリア……! 私のために……!」

 牙島がこの場を離れたなら、アタシとタケゾーもそちらへ向かおう。逃げ道がなくとも、ぶちのめすという目的は変わらない。
 洗居さんを守る必要はあるけど、クジャクのおばちゃんとフェリアさんは相当やる気だ。心配なんて無粋でしかない。

 ――てか、フェリアさんがガチ過ぎる。マジで洗居さん専属騎士だ。

「タケゾー、行こう! 洗居さんのことは任せたよ!」
「ああ! 話の通りラルカさんはいないし、牙島を倒せば完全勝利だ!」

 ぶっちゃけ、もう天鐘なんて眼中にない。化けの皮が全部剥がれた小物より、皮の下に怪物の本性を持った牙島が狙いだ。
 これで全部終わらせる。この夜闇に紛れた戦艦の上で、逃げることなど許さない。





「艦尾側から艦橋挟んで艦首側に逃げたって、ここは海のど真ん中だよ? 逃げ道なんてないんだし、おとなしく降伏したら?」
「黙れぇぇええ!! 自らの能力も権威も理解できない小娘が、ワタシを追い詰めた気になるなぁぁああ!!」

 天鐘がどこへ逃げようと、ここは孤島も同然だ。アタシとタケゾーはあっさり追いつき、半狂乱状態の天鐘と再び対峙する。
 せっかくクジャクさんの離反後も残ってくれたメンバーまで切り捨てて、どこまでも滑稽な男だ。

「あーあー。ここからどないするつもりでっか? 人質のメイド姉ちゃんも奪われてもうたし、ワイにはよう分かりまへんわ」
「貴様はワタシを守ることだけに専念しろ! 余計な口は叩くな! 策はまだ残っている!」
「へいへい、そうでっか。ほんなら、その策とやらをワイにも見せてもらいましょか」

 横で牙島が愚痴っぽく意見するも、天鐘の耳には届いてなさそうだ。ここまで来ると、滑稽を通り越して憐れに見えてくる。
 牙島も面倒くさそうにしつつ、どこか呆れた声で天鐘に一応従う素振りは見せている。
 それにしても、こんな状況でまだ何があるっていうのかね? 人質という最強の防御カードまで失ったのに――



「空鳥ぃい! 貴様が住んでる街に、ワタシの方から刺客を放っておいた! 残党どころか、刑務所に収容されていた構成員も含めた大凍亜連合だ! すでに根回しして、脱獄もさせてある! ここでワタシに従わなければ、街が火の海になるぞぉぉぉお!!」
「なっ……!? なんてことをしてんだい!? 本当にどこまでもやりすぎだよ、あんたは!」



 ――恐ろしいことに、天鐘は新たに人質のカードを用意していた。
 しかも今度は洗居さん一人なんて規模じゃない。アタシやタケゾーが暮らしている街そのものを人質としている。
 おまけにそのために大凍亜連合を使うだなんて、最早正気の沙汰じゃない。

「おい、天鐘! 収容されていた大凍亜連合を脱獄なんてさせたら、それこそお前自身が国際的非難の標的になるぞ!? たとえウォリアールを手中に収めても、世界中がお前を認めることなんてない!」
「ホホホ! 夫婦揃って甘い連中ですね! ウォリアールさえ手に入れば、他国の脅威に怯える必要もありません! むしろ、まずは手ごろな日本から支配するつもりですよ! そう考えれば、ちょっと時期が早くなっただけというものです!」
「お前、本当に正気じゃないぞ!? ここまでやる意味なんてないだろ!?」
「今更何を言っても遅いのですよ! あなた方夫婦もこちらの映像を見て、おとなしく従う意志を見せなさい!!」

 タケゾーも声を荒げて反論するも、やっぱり天鐘は意にも介さない。もう完全に行動が狂気の沙汰だ。
 だとしても、今のアタシ達では日本に戻ってどうこうするなんて不可能。非人道的とはいえ、効果自体はあるのが悔しい。

「さあ! こちらのスマホの画面にて、ライブ映像でご覧いただきましょう! あなた達の愛する街がこれ以上壊されたくなければ、ワタシの言葉に従いなさい!」
「ぐうぅ……!?」

 天鐘は勝ち誇ったようにスマホの画面をこちらに向け、現在の街の様子を見せつけてくる。
 なんとも歯痒い状況だ。街そのものを人質に取られても、何一つできない無力感が増してしまう。
 人々の逃げ惑う姿が見えるし、悲鳴まで聞こえてくるし――



【お、おい! どういうことだ!? 空色の魔女はいないんじゃなかったか!?】
【何なんだよ!? あの三人は!? 居合切りのガキに、勇者の格好をした男に……ガチガチムキムキの大男だと!?】
【あんな連中がいるなんて聞いてないぞ!? 大凍亜連合が徒党を組んでるのに、まるで歯が立たないじゃないか!?】

「……ねえ、ちょっと待って。これってもしかして、大凍亜連合の方が押されてない?」
「……え? ど、どういうことですか!? この状況は!?」



 ――などと心配していたら、全く別の音声がスマホから聞こえてくる。
 画面もよく注視してみると、逃げ惑っているのは大凍亜連合の構成員の方だ。何かから逃げるように、かなりの人数が慌てふためいている。
 いや、これってどういうことよ? 天鐘ももちろんだけど、アタシも意味不明なんだけど?

【あ、天鐘さんですか!? こ、こちら、大凍亜連合の脱獄と招集がうまく行き、予定通り街の襲撃――ガハッ!?】
【あァ? こいつはスマホでライブ中継してたのかァ? 相手は……成程。こんなことをしでかした、張本人のクソ野郎ってことかァ】

 天鐘のスマホと繋いでいた向こう側のスマホも、突然何者かに取り上げられてしまうという始末。映像だけじゃ、ウォリアールにいるアタシ達には何が起こってるのか理解できない。

 ――あっ。でも、さっきスマホを取り上げた人の声には聞き覚えがあるかも。
 てか、アタシも出国前に会った人だ。まさかとは思うけど――



【ほォう? そっちに映ってるのは空色の魔女の夫婦かァ。てェことは、このスマホはウォリアールと繋がってるってェことだなァ?】
「こ……固厳首相ぉぉぉお!?」
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