空色のサイエンスウィッチ

コーヒー微糖派

文字の大きさ
452 / 465
狂月明ける空編

ep452 将軍艦隊左舷将:牙島 竜登Ⅲ

しおりを挟む
「し、しもた!? 旦那への警戒――ゲボゴォ!?」
「まだまだ行くぞぉぉぉおお!!」

 スカイメモリの能力で牙島を倒せればそれでもよかった。だけど、相手が想像以上の力を発揮するならば、一枚の作戦だけで通用するはずもなし。
 それはタケゾーもアイコンタクトで理解しており、ずっと離れた位置からチャンスを伺ってくれた。

 ――これぞプランB。アタシ自身を陽動に使い、タケゾーが牙島へ攻撃する。
 いくら反応速度が未来予知レベルでも、牙島は周辺全ての事象を確認まではできていない。アタシのようにフィールドを支配しない限り、不意打ちまでは対処不可だ。

「隼が作ってくれたチャンスだ! ここで徹底的に――ゴフッ!?」
「甘いわ! ワイの不意を突いたぐらいで、ええ気になるんは――ゲハッ!?」
「タケゾーだけに任せはしないよ! こうなったら……後は根気の勝負だぁぁあ!!」

 それでも、牙島はすぐさまタケゾーへ反撃を仕掛けてくる。その隙さえもアタシが見逃さず、接近して追撃のパンチをお見舞いする。
 ここまで来たら策略なんて関係ない。三人揃って揉みくちゃになりながら、空中で激しく殴り合う。

 ――これが最後の大勝負。タケゾーと一緒になって、思いの丈を牙島へとぶつける。

「キ、キーハハハ! まさか、このワイが……アポカリプスまで手にしたワイが……ここまで追い詰められるとはな……!」
「ハァ、ハァ……! もう終わりさ……! あんたの敗北をもってして、天鐘の野望から始まった戦いも終わる……!」
「俺達はそのためにここまで来たんだ……! お前がどれだけ怪物になろうと、諦めることはしない……!」
「ホ、ホンマ……夫婦揃ってごっついもんやで……!」

 完全な密着状態。これでは牙島のスピードも意味を成さない。
 異常なまでの肉体強度と発火する体液は健在だけど、そんなことさえ関係ない。

 向こうに殴られようとも、こっちも二人がかりで殴り返す。どれだけ耐えられようとも関係ない。発火する体液で反撃されようともだ。
 アタシの磁場操作も限界が近いけど、それは牙島だって同じこと。二人のヒーローの猛攻を前に、どんどんと勢いを失っていく。

「決めるよ! タケゾー!」
「合わせるぞ! 隼!」

 トドメの瞬間も頭に描けた。タケゾーもアタシと同じように考えたのか、一度牙島の頭上へと飛び上がる。
 牙島自身は度重なるダメージにより、流石に動きを止めている。いくら未来予知レベルの予測ができても、体がついていかなきゃ意味がない。
 空中で無造作に大の字で脱力する牙島に、アタシとタケゾーは夫婦揃って体を合わせる。

 ――そこから放つのは、いかにもヒーローチックな必殺合体キックだ。

「どりゃぁぁあああ!!」
「うおぉぉぉおおお!!」



「ご、ごっつい……なぁ……。こ、これが……ヒーローっちゅうもんかぁ……」


 ドグゥオォォォオオン!!



 合体キックは見事に牙島の腹部へ直撃。わずかに零した言葉から、牙島も完全に限界だったことは伺える。
 突き刺さったキックの反動に逆らえず、轟音を響かせながら甲板へと叩きつけられていく。

「ハァ、ハァ……! やったか――って、言わない方がいいよね。フラグだから。アタシもこれ以上は――うぅ……?」
「じゅ、隼!? しっかりしろ!?」
「だ、大丈夫……。いくらアポカリプスなしだったとはいえ、脳とサーバーで分散コンピューティングなんて無茶したもんさ……」

 アタシとタケゾーも甲板へ降り立つ同時に、スカイメモリで浮かせていた鉄板もどんどん墜落していく。
 こっちもこっちで限界だ。被害が及ばないよう、浮かせた鉄板を海へ落とすぐらいの気力しかない。

 倒れたままの牙島を見ても、正直『もう立ち上がらないでくれ』って気持ちが強い。
 疲労に関してはクリムゾンウィッチの時と同程度にある。可能ならばすぐにでも横になりたい。
 だけど、まだ油断はできない。どうにか懐からお酒のボトルを出し、燃料補給でわずかにでも回復を図る。

 まだ立ち上がってくるようなら、アタシだって相手をするしかないけど――



「キーハハハ……。完敗や……。アポカリプスを使ってまで負けた以上、清々しいまでの完敗やで……。この勝負――及び、天鐘一派による内紛……。完全にお前らの勝ちや……」



 ――とうとう、牙島は自らの口で敗北を求めてくれた。
 近寄ってみれば、その姿もアポカリプスによる赤い鱗から普段の緑の鱗に戻っている。
 いくらあらゆるGT細胞に完全適合していても、アポカリプスは負荷が大きすぎたのか。パワーアップは一時的な効果しかなかったようだ。



「……あんたも満足してくれたのね。だったら、これにて戦いはおしまいってことか。……大局としては」
「ああ、天鐘一派による反乱に決着は着いたな。……おそらく、当初の予定通りにな」



 牙島の敗北により、天鐘のウォリアール転覆計画は終焉した。だけど、アタシ達にはまだ疑問が残っている。
 この戦いが始まるより前にタケゾーが立ててくれた仮説。全てが終わった今ならば、牙島も語ってくれるはずだ。
 これ自体は今となっては大した問題ではないのかもしれない。そもそも全てが『計算された航路』となっていたならば、牙島の本当の目的もこれで果たされた。

 ――だけど、アタシはどうしてもその真相を聞きたい。



「……牙島。あんたにしてもラルカさんにしても、本当は将軍艦隊ジェネラルフリートを裏切ってなんかいなかったんだよね?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(ことぶき・あゆみ)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

処理中です...