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第40話
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「ごめんなさい。あの日の夜……出張で疲れていたのに、谷崎さんにやつあたりして……たくさん傷つけた」
私の謝罪に谷崎さんが息を呑むのが聞こえた。何か言いたげに見えたけど、無言のまま私の言葉を待ってくれているように見える。
私はその気持ちに応えようと、自分の中にある思いを言葉に変換していく。
「それだけじゃない。私はこの三ヶ月間、ずっと谷崎さんを傷つけていた」
「そんなことない」
「いいえ、そうです」
否定してくれた谷崎さんの言葉を即座に打ち消した。
その優しさにどれだけ救われてきたのだろう。そして、どれだけ甘えてきたのだろう。
「目が覚めたら、いきなり三年後だって言われて、戸惑うばかりで……忘れられた方のことなんて一ミリも考えていなかった。相手の中から自分の存在がなくなるって、考えたらすごく怖くて悲しいことなのに。谷崎さんはそんな素振りを私に見せなかったから、この人は大人だから平気なんだって都合よく思ってた。私を追い詰めないようにって敢えてそうしてくれていたのにね」
私が思いを口にする度、谷崎さんの表情が曇っていくのがわかる。傷つけてごめんなさいって言いながら、今も傷つけている。だけど、これを伝えずに前に進むことはできない。
「事故のことだって……ごめんなさい」
妊婦さんを庇ったという行為は間違いではないけど、無茶しやがってと椎名さんに言われたし、自分でも余計なことを……と谷崎つぐみさんに毒づいたことがある。
広岡のことが影響していると思っていたけど、それは違うと今はわかる。
「あれは、今のつぐみが謝ることじゃないだろ」
絞り出すような声が聞こえた。弱々しい声に事故の日、谷崎さんがどれだけ辛い思いをしていたのか思い知らされる。
「でも……今の私もきっと同じことする」
私だったら、絶対に一人で逃げる。三年後に来た当初はそう思っていた。でも、自分と向き合っていく内にそれは変わっていった。
「あの事故の日……谷崎つぐみさんは、後悔したくないから無茶をしたんです。あのまま一人で避けてたら、きっと妊婦さんを目にする度に悔やむんです。助けていれば……って。そんな自分に耐えられなかった。谷崎さんが悲しむってわかっていても、止められなかったんです。でも、意識が途切れる最後の最後まで、谷崎つぐみさんはあなたのことを思っていました。短い時間の中で、ごめんなさい、ありがとう、愛しているって何度も叫んだはずです」
何て残酷な話なんだろう。
自分で告げながらも、そう思ってしまう。聞かされた方の谷崎さんは大丈夫だろうか……気になって谷崎さんの方を見やると、何かを思い出すような顔をしている。
「……だからか」
「え?」
谷崎さんの言葉の意図がわからず聞き返すと、少し寂しげな笑みでこう言った。
「けいさん、ごめん──そう叫んでたって妊婦から聞いた」
やっぱり。
谷崎さんから告げられた事実に胸がぎゅっと痛くなる。だけど、納得もした。
事故にあった時、谷崎つぐみさんの頭の中にあったのは谷崎さんのことだけだったんだ、と。
「多分、それで私の頭の中から谷崎さんの記憶が飛んでしまったんだと思います」
今更だってわかっている。
「ごめんなさい。谷崎つぐみさんがどう思ったとしても、谷崎さんの心の痛みは消えないですよね。私から逃げてもよかったのに……谷崎さんは私を助けてくれた。それなのに私は……。仕事だって……いきなり復帰しろって言われて、何を言い出すんだこの人? って思ったけど、復帰してみたら大丈夫で……記憶喪失なのに私って凄いって自惚れかけてた。裏で谷崎さんが色々な人にお願いしてくれたからできたことなのに……そんなことにも気づけなかった。谷崎つぐみさんがいなくなって一番辛かったのは谷崎さんなのに、誰よりも柏原つぐみのことを考えてくれた。でも、私は谷崎さんと結婚しているという現実と向き合おうとしなかった。谷崎さんが淡々としているのをいいことに曖昧のままにしようとしていた。谷崎さんが私を前に進ませてくれたのに、私は谷崎さんのことを置き去りにしていた。谷崎さんは私にたくさんのものをくれたのに、私は何一つ……返せなかった。自分のことばかりで……あなたの苦しみすら見ようとしなかった。本当にごめんなさい」
さっきまでどう言おうと迷っていたのに、いざ口を開いてみると堰を切ったみたいに言葉が出てきた。それと一緒に涙も零れていく。
涙で霞んでいる視界に見える谷崎さんは悲しそうな顔をしている。
……。
しっかりしろ!
自分の心の中のどこかから、私の声が聞こえた。声の元を探ろうとする間にも声は私の中に降ってくる。
涙に溺れている場合じゃない。
この人に会いたくて、ここに来たんでしょ?
何のために会いに来たの?
この人にこんな顔をさせるため?
──違う。
確かに谷崎さんに会って謝りたかった。だけど、伝えたかったのはそれだけじゃない。
指で涙を拭い、口角を上げて笑みを作った。
「……でも、ありがとう」
「……」
谷崎さんは黙ったままだけど、少しだけ驚いた顔をしている。
多分……私はこの人の前でちゃんと笑えているはずだ。
「ごめんなさい」も大事だけど、それ以上に「ありがとう」を伝えたい。泣いている顔よりも笑った顔を見せたい。
それが今の私にできることだ。
「私に過去じゃなくて、今を追いかけさせてくれて……。谷崎さんが前に歩かせてくれたから、今の私はこうして笑えている。だから、本当にありがとう」
「そんな……大げさだ。俺はきっかけを作っただけだよ。つぐみが笑えているのは、つぐみが頑張ったからだ」
そう言って谷崎さんは私から視線を逸らした。その頬は少し赤くなっているように見える。この人でも照れたりするんだ。どうやら、私の気持ちは少しは伝わったらしい。でも、まだ足りない。
「いえ、谷崎さんがいてくれたからです。三年後に来る前の私は、色々なことが上手く行かなくて……やさぐれていました。好きだった人への未練とか、公認会計士試験の勉強とか……頑張ってるのにって、余計なことを考える暇があるなら勉強しろって自分に言い聞かせましたけど、あの頃の自分は好きじゃなかった。そんな時に、いきなり記憶喪失だって言われて……三年も時が進んでいて、頑張っていた試験はダメで、身に覚えのない結婚をしていて……悲劇のヒロインぶっていました。世界中で私だけが不幸って思っていました」
「いや……記憶喪失で、三年も時間が進んでいるって言われたら、誰でもそう思うんじゃないか」
「そうかもしれないですけど、私の場合は特にひどかったと思います。色々なことに失望してたし。でも、ここでの生活とセットで仕事復帰が降ってきて、怒涛の日々が始まって……」
「周囲からはもっとゆっくりさせてやれって言われたけどな……きつかったか?」
「きついとか考えている余裕なんてなかったです。だけど、そのおかげでネガティブなことを考える暇が無くなりました。日々を追うのは大変だけど、できることも一つずつ増えていって……。記憶を失ったけど、できることはたくさんあるって明るい方に目を向けることができたんだと思います」
「でも……」
そう言って谷崎さんは俯いた。いい話をしたはずなのに、この沈んでいる感じは何だろう……不安に思いつつ谷崎さんの言葉を待つ。
「俺が前ばかり向かせたせいで、つぐみが苦しむことになったのも事実だろ。俺がもう少し過去の話をしていれば」
あの日の夜のようなことにはならなかった。言外に谷崎さんはそう言っているような気がした。
「いえ、あれは中途半端に日記を読んじゃったから」
「日記を書いていたのか?」
日記というワードに谷崎さんは怪訝な顔をした。
コイツは日記を書くようなタイプじゃない──そう思われている気がする。それはちょっと複雑だ……否定はしないけど。
「っていうか……闇ノートなんですけど」
「闇?」
「嫌だったことや、ムカついたこととか、反省ずべきことを書き殴っているんです」
「……日記を書かない俺が言うのもなんだが、普通は嬉しかったこととかを書くんじゃないか?」
「だと思います。でも、私は嬉しかったことは何度も頭の中で反芻して、忘れないようにしようって思ってたんです。日記に書くと嘘くさくなるような気もしたし、書いたことで忘れてしまうって思ってたから。記憶喪失になるなんて想定していなかったし」
「それはそうだよな。で、その闇ノートとやらはどうしたんだ?」
「全部読みました」
「……大丈夫なのか?」
闇ノートなんて言っちゃったから、心配させてしまったみたいだ。まだまだ、話したいことがある。
「大丈夫です。痛いことばかり書いてたけど、何とか消化しました。日記を読んでから今日まで結構色んなことがあって……よかったら聞いてもらえますか?」
「ああ」
谷崎さんは快く頷いてくれた。
私の謝罪に谷崎さんが息を呑むのが聞こえた。何か言いたげに見えたけど、無言のまま私の言葉を待ってくれているように見える。
私はその気持ちに応えようと、自分の中にある思いを言葉に変換していく。
「それだけじゃない。私はこの三ヶ月間、ずっと谷崎さんを傷つけていた」
「そんなことない」
「いいえ、そうです」
否定してくれた谷崎さんの言葉を即座に打ち消した。
その優しさにどれだけ救われてきたのだろう。そして、どれだけ甘えてきたのだろう。
「目が覚めたら、いきなり三年後だって言われて、戸惑うばかりで……忘れられた方のことなんて一ミリも考えていなかった。相手の中から自分の存在がなくなるって、考えたらすごく怖くて悲しいことなのに。谷崎さんはそんな素振りを私に見せなかったから、この人は大人だから平気なんだって都合よく思ってた。私を追い詰めないようにって敢えてそうしてくれていたのにね」
私が思いを口にする度、谷崎さんの表情が曇っていくのがわかる。傷つけてごめんなさいって言いながら、今も傷つけている。だけど、これを伝えずに前に進むことはできない。
「事故のことだって……ごめんなさい」
妊婦さんを庇ったという行為は間違いではないけど、無茶しやがってと椎名さんに言われたし、自分でも余計なことを……と谷崎つぐみさんに毒づいたことがある。
広岡のことが影響していると思っていたけど、それは違うと今はわかる。
「あれは、今のつぐみが謝ることじゃないだろ」
絞り出すような声が聞こえた。弱々しい声に事故の日、谷崎さんがどれだけ辛い思いをしていたのか思い知らされる。
「でも……今の私もきっと同じことする」
私だったら、絶対に一人で逃げる。三年後に来た当初はそう思っていた。でも、自分と向き合っていく内にそれは変わっていった。
「あの事故の日……谷崎つぐみさんは、後悔したくないから無茶をしたんです。あのまま一人で避けてたら、きっと妊婦さんを目にする度に悔やむんです。助けていれば……って。そんな自分に耐えられなかった。谷崎さんが悲しむってわかっていても、止められなかったんです。でも、意識が途切れる最後の最後まで、谷崎つぐみさんはあなたのことを思っていました。短い時間の中で、ごめんなさい、ありがとう、愛しているって何度も叫んだはずです」
何て残酷な話なんだろう。
自分で告げながらも、そう思ってしまう。聞かされた方の谷崎さんは大丈夫だろうか……気になって谷崎さんの方を見やると、何かを思い出すような顔をしている。
「……だからか」
「え?」
谷崎さんの言葉の意図がわからず聞き返すと、少し寂しげな笑みでこう言った。
「けいさん、ごめん──そう叫んでたって妊婦から聞いた」
やっぱり。
谷崎さんから告げられた事実に胸がぎゅっと痛くなる。だけど、納得もした。
事故にあった時、谷崎つぐみさんの頭の中にあったのは谷崎さんのことだけだったんだ、と。
「多分、それで私の頭の中から谷崎さんの記憶が飛んでしまったんだと思います」
今更だってわかっている。
「ごめんなさい。谷崎つぐみさんがどう思ったとしても、谷崎さんの心の痛みは消えないですよね。私から逃げてもよかったのに……谷崎さんは私を助けてくれた。それなのに私は……。仕事だって……いきなり復帰しろって言われて、何を言い出すんだこの人? って思ったけど、復帰してみたら大丈夫で……記憶喪失なのに私って凄いって自惚れかけてた。裏で谷崎さんが色々な人にお願いしてくれたからできたことなのに……そんなことにも気づけなかった。谷崎つぐみさんがいなくなって一番辛かったのは谷崎さんなのに、誰よりも柏原つぐみのことを考えてくれた。でも、私は谷崎さんと結婚しているという現実と向き合おうとしなかった。谷崎さんが淡々としているのをいいことに曖昧のままにしようとしていた。谷崎さんが私を前に進ませてくれたのに、私は谷崎さんのことを置き去りにしていた。谷崎さんは私にたくさんのものをくれたのに、私は何一つ……返せなかった。自分のことばかりで……あなたの苦しみすら見ようとしなかった。本当にごめんなさい」
さっきまでどう言おうと迷っていたのに、いざ口を開いてみると堰を切ったみたいに言葉が出てきた。それと一緒に涙も零れていく。
涙で霞んでいる視界に見える谷崎さんは悲しそうな顔をしている。
……。
しっかりしろ!
自分の心の中のどこかから、私の声が聞こえた。声の元を探ろうとする間にも声は私の中に降ってくる。
涙に溺れている場合じゃない。
この人に会いたくて、ここに来たんでしょ?
何のために会いに来たの?
この人にこんな顔をさせるため?
──違う。
確かに谷崎さんに会って謝りたかった。だけど、伝えたかったのはそれだけじゃない。
指で涙を拭い、口角を上げて笑みを作った。
「……でも、ありがとう」
「……」
谷崎さんは黙ったままだけど、少しだけ驚いた顔をしている。
多分……私はこの人の前でちゃんと笑えているはずだ。
「ごめんなさい」も大事だけど、それ以上に「ありがとう」を伝えたい。泣いている顔よりも笑った顔を見せたい。
それが今の私にできることだ。
「私に過去じゃなくて、今を追いかけさせてくれて……。谷崎さんが前に歩かせてくれたから、今の私はこうして笑えている。だから、本当にありがとう」
「そんな……大げさだ。俺はきっかけを作っただけだよ。つぐみが笑えているのは、つぐみが頑張ったからだ」
そう言って谷崎さんは私から視線を逸らした。その頬は少し赤くなっているように見える。この人でも照れたりするんだ。どうやら、私の気持ちは少しは伝わったらしい。でも、まだ足りない。
「いえ、谷崎さんがいてくれたからです。三年後に来る前の私は、色々なことが上手く行かなくて……やさぐれていました。好きだった人への未練とか、公認会計士試験の勉強とか……頑張ってるのにって、余計なことを考える暇があるなら勉強しろって自分に言い聞かせましたけど、あの頃の自分は好きじゃなかった。そんな時に、いきなり記憶喪失だって言われて……三年も時が進んでいて、頑張っていた試験はダメで、身に覚えのない結婚をしていて……悲劇のヒロインぶっていました。世界中で私だけが不幸って思っていました」
「いや……記憶喪失で、三年も時間が進んでいるって言われたら、誰でもそう思うんじゃないか」
「そうかもしれないですけど、私の場合は特にひどかったと思います。色々なことに失望してたし。でも、ここでの生活とセットで仕事復帰が降ってきて、怒涛の日々が始まって……」
「周囲からはもっとゆっくりさせてやれって言われたけどな……きつかったか?」
「きついとか考えている余裕なんてなかったです。だけど、そのおかげでネガティブなことを考える暇が無くなりました。日々を追うのは大変だけど、できることも一つずつ増えていって……。記憶を失ったけど、できることはたくさんあるって明るい方に目を向けることができたんだと思います」
「でも……」
そう言って谷崎さんは俯いた。いい話をしたはずなのに、この沈んでいる感じは何だろう……不安に思いつつ谷崎さんの言葉を待つ。
「俺が前ばかり向かせたせいで、つぐみが苦しむことになったのも事実だろ。俺がもう少し過去の話をしていれば」
あの日の夜のようなことにはならなかった。言外に谷崎さんはそう言っているような気がした。
「いえ、あれは中途半端に日記を読んじゃったから」
「日記を書いていたのか?」
日記というワードに谷崎さんは怪訝な顔をした。
コイツは日記を書くようなタイプじゃない──そう思われている気がする。それはちょっと複雑だ……否定はしないけど。
「っていうか……闇ノートなんですけど」
「闇?」
「嫌だったことや、ムカついたこととか、反省ずべきことを書き殴っているんです」
「……日記を書かない俺が言うのもなんだが、普通は嬉しかったこととかを書くんじゃないか?」
「だと思います。でも、私は嬉しかったことは何度も頭の中で反芻して、忘れないようにしようって思ってたんです。日記に書くと嘘くさくなるような気もしたし、書いたことで忘れてしまうって思ってたから。記憶喪失になるなんて想定していなかったし」
「それはそうだよな。で、その闇ノートとやらはどうしたんだ?」
「全部読みました」
「……大丈夫なのか?」
闇ノートなんて言っちゃったから、心配させてしまったみたいだ。まだまだ、話したいことがある。
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