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編入生の登場
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喧嘩事件から一夜明けた放課後。
俺とスコーピオは並んで職員室の前に立たされていた。
(……やっぱり、こうなるよなぁ)
昨日の騒ぎは小さくない。校門前で上級生が下級生を囲み、不良が吠えたんだ。教師たちの耳に届かんはずがない。
扉を開けると、待っていたのはジェミニ先生だった。
眼鏡の奥から鋭い視線を投げ、低い声で切り出す。
「……スコーピオ。お前の乱暴な行動は、もう少しで大事になるところだった」
「……あんな奴ら、弱い者いじめとかダセェことしてるからだ」
スコーピオはそっぽを向いて吐き捨てる。
先生は小さく息をつき、それから俺へと目を向けた。
「……アリエス。なぜ庇った」
「え、えっと……」
言葉が喉で詰まる。
本当は「シリウスが殴られるのを見たくなかった」だけ。けれどそんなこと言えるわけもなく。
「……友達やし。ほっとけへんかっただけです」
口にした途端、先生の表情がさらに険しくなる。
「つい昨日言ったはずだ。無理をするな、と」
声は冷たく響いた。けれどその奥にあるのは、叱責ではなく――心配。
俺にはそう思えた。
「……お前が無茶をすれば、周りはどう思う。
心配して駆け寄った友人たちの顔を忘れたか?」
ラスの必死な手。シリウスの叫ぶ声。
思い出すと胸が熱くなる。
「……先生、ほんま優しいな」
俺は思わず微笑んだ。教師として生徒を気にかけてくれる――そう勘違いしたまま。
けれど先生は目を伏せ、心の奥を隠すように言葉を閉じた。
(……俺が案じているのは“お前だけ”なんだ、アリエス)
本音は決して声にされなかった。
⸻
職員室を出た瞬間、冷たい空気が頬を撫でた。
昨日の痛みがまだ残っていても、不思議と足取りは軽い。
「アリー!」
声をかけてきたのはシリウスだった。
彼は俺を見るなり、眉を下げて駆け寄る。
「良かった……待ってたんだ。昨日のこと……どうしてもお礼がしたくて」
「え、お礼? そんな大げさな……」
苦笑する俺に、シリウスは真剣なまなざしを向ける。
「お願い、断らないで。僕の気持ちなんだ」
その必死さに負けて、結局ついて行くことになった。
(……まぁええか。本来ならこれは“スコーピオのお礼イベント”のはずやけど……数値もう高いし、大丈夫やろ)
呑気にそう思い込みながら。
⸻
夕暮れの商店街。
近くの喫茶店でシリウスに食事をご馳走になり、その帰り道。
橙色に染まる通りの文具店の前で立ち止まり、俺とシリウスが並んでショーウィンドウを覗いていたとき――不意に、細い声が耳に届いた。
「……っ」
視線を向けると、道端で本を抱えた少年がよろめき、荷物をばらばらと落としていた。
眼鏡の奥の瞳が怯えたように揺れている。
「大丈夫? ……俺、拾うから」
思わず駆け寄り、本を集めて差し出す。
少年は驚いたように瞬きをして、やがて小さく微笑んだ。
「……ありがとうございます」
少年は慌ただしく本を抱え直し、小さな声で「すみません」と告げて足早に去っていった。
「……繊細そうな子やな」
「でも、いい子そうだったね」
シリウスと顔を見合わせ、ほんの些細な出来事としてその場は過ぎた。
⸻
そして翌日。
「今日から新しい生徒がこのクラスに編入する」
担任の声とともに扉が開く。
入ってきたのは――昨日の眼鏡の少年。
大きな鞄を抱え、緊張した面持ちで前に立つ。
「……キャンサー・ユラークです。よろしくお願いします」
ざわめく教室。
俺は思わず目を見開いた。
(……え、昨日のメガネくん!? まさか、)
そのときだった。
教室の後方、シリウスと視線がぶつかった瞬間――キャンサーの頬が赤く染まり、目を逸らすのも忘れて見つめ続けていた。
分かりやすいほどの「一目惚れ」。
シリウスの胸元のペンダントが、かすかに光を放つ。
【キャンサー・ユラーク 10%】
(……っ! やっぱり! これでキャンサー編入ルート開放や!)
俺とスコーピオは並んで職員室の前に立たされていた。
(……やっぱり、こうなるよなぁ)
昨日の騒ぎは小さくない。校門前で上級生が下級生を囲み、不良が吠えたんだ。教師たちの耳に届かんはずがない。
扉を開けると、待っていたのはジェミニ先生だった。
眼鏡の奥から鋭い視線を投げ、低い声で切り出す。
「……スコーピオ。お前の乱暴な行動は、もう少しで大事になるところだった」
「……あんな奴ら、弱い者いじめとかダセェことしてるからだ」
スコーピオはそっぽを向いて吐き捨てる。
先生は小さく息をつき、それから俺へと目を向けた。
「……アリエス。なぜ庇った」
「え、えっと……」
言葉が喉で詰まる。
本当は「シリウスが殴られるのを見たくなかった」だけ。けれどそんなこと言えるわけもなく。
「……友達やし。ほっとけへんかっただけです」
口にした途端、先生の表情がさらに険しくなる。
「つい昨日言ったはずだ。無理をするな、と」
声は冷たく響いた。けれどその奥にあるのは、叱責ではなく――心配。
俺にはそう思えた。
「……お前が無茶をすれば、周りはどう思う。
心配して駆け寄った友人たちの顔を忘れたか?」
ラスの必死な手。シリウスの叫ぶ声。
思い出すと胸が熱くなる。
「……先生、ほんま優しいな」
俺は思わず微笑んだ。教師として生徒を気にかけてくれる――そう勘違いしたまま。
けれど先生は目を伏せ、心の奥を隠すように言葉を閉じた。
(……俺が案じているのは“お前だけ”なんだ、アリエス)
本音は決して声にされなかった。
⸻
職員室を出た瞬間、冷たい空気が頬を撫でた。
昨日の痛みがまだ残っていても、不思議と足取りは軽い。
「アリー!」
声をかけてきたのはシリウスだった。
彼は俺を見るなり、眉を下げて駆け寄る。
「良かった……待ってたんだ。昨日のこと……どうしてもお礼がしたくて」
「え、お礼? そんな大げさな……」
苦笑する俺に、シリウスは真剣なまなざしを向ける。
「お願い、断らないで。僕の気持ちなんだ」
その必死さに負けて、結局ついて行くことになった。
(……まぁええか。本来ならこれは“スコーピオのお礼イベント”のはずやけど……数値もう高いし、大丈夫やろ)
呑気にそう思い込みながら。
⸻
夕暮れの商店街。
近くの喫茶店でシリウスに食事をご馳走になり、その帰り道。
橙色に染まる通りの文具店の前で立ち止まり、俺とシリウスが並んでショーウィンドウを覗いていたとき――不意に、細い声が耳に届いた。
「……っ」
視線を向けると、道端で本を抱えた少年がよろめき、荷物をばらばらと落としていた。
眼鏡の奥の瞳が怯えたように揺れている。
「大丈夫? ……俺、拾うから」
思わず駆け寄り、本を集めて差し出す。
少年は驚いたように瞬きをして、やがて小さく微笑んだ。
「……ありがとうございます」
少年は慌ただしく本を抱え直し、小さな声で「すみません」と告げて足早に去っていった。
「……繊細そうな子やな」
「でも、いい子そうだったね」
シリウスと顔を見合わせ、ほんの些細な出来事としてその場は過ぎた。
⸻
そして翌日。
「今日から新しい生徒がこのクラスに編入する」
担任の声とともに扉が開く。
入ってきたのは――昨日の眼鏡の少年。
大きな鞄を抱え、緊張した面持ちで前に立つ。
「……キャンサー・ユラークです。よろしくお願いします」
ざわめく教室。
俺は思わず目を見開いた。
(……え、昨日のメガネくん!? まさか、)
そのときだった。
教室の後方、シリウスと視線がぶつかった瞬間――キャンサーの頬が赤く染まり、目を逸らすのも忘れて見つめ続けていた。
分かりやすいほどの「一目惚れ」。
シリウスの胸元のペンダントが、かすかに光を放つ。
【キャンサー・ユラーク 10%】
(……っ! やっぱり! これでキャンサー編入ルート開放や!)
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