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平和な1日
しおりを挟むエネルギーや食糧、人が必要とするものが永久的にまかなえるようになり、人々は争うことに意味を見出せなくなった。
人種がなくなり、国がなくなり、宗教がなくなった。ついでに労働もなくなり
人々はお互いを差別する理由をなくし、世界は受容と寛容に包まれた。
人は好きに生きるようになった。趣味を追求し、欲を満たした。
やがて、世界は、人は、競争を忘れ、平和が浸透した。
ジリリリリリ
12歳になった時、僕はけたたましい目覚ましの音で目を覚ました。
左手首に付けているウェアラブルデバイスを右手でそっと触ると音は止み、部屋は静寂に包まれる。
寝ぼけなまこをこすりながらベッドから起きる。まだ頭はうまく起きてないものの体はルーティーンを覚えていて、勝手にリビングへと足を進める。
リビングのドアを開けると、テーブルにはすでに朝食が用意されていた。僕の体調と好みに栄養面が考慮された結果、梅粥と目玉焼きに野菜ジュースというメニューが今日の朝食になっていた。
モソモソと口を動かしているうちに頭が目覚め、思考が働きだす。今日の時間割を頭の中で確認する。
朝食を食べ終わると、歯を磨き、服を着替える。服を選ぶのが面倒でGパンに胸に小さなロゴのあるポロシャツというラフな格好に落ち着く。
通学カバンを背負い、ドアを開ける。
「レイ、おはよう」
全く同じタイミングで向かいの家から出てきたリオが朗らかな顔で僕に挨拶してくる。
「リオ、おはよう」
同じように挨拶を返す
「レイ、リオ、おはよっ」
リオの隣の家から出てきたユリが快活に挨拶する。ユリの隣には僕の隣の家に住んでいるミキが微笑みながら控えめに僕たちに向かって手を振る。
「「おはよう」」僕とリオの声が同時に発せられ、4人は一緒に笑った。
「かつて、人類は土地を奪い合い、争っていた。」
授業は興味に合わせて好きな科目が取れる。
僕は歴史が好きで歴史をメインにとっていたが、面白かった近現代史に比べて古代史は共感できず退屈だった。
「土地のために争うとか意味わかんねぇな、広い土地持ってどうすんだよ」
隣で授業を受けてたリオも訳が分からないというようにボヤく。全くの同感だった。
人類はやがて宗教や国といった共同体を形成する。
先生は「この時代には食糧やエネルギーが有限で、だからこそ争ったのだ」と説明を加えるが、何故共存でなく争いの方向へと舵とられるのか理解できなかった。
人を傷つけることに何の意味があるのか。
「歴史の授業どうだった?」
ユリはトレーを置くと、開口一番聞いてきた。
食堂の4人席に、僕とリオ、ユリ、ミキが座る。各々の昼食メニューがテーブルに並べられ、色彩鮮やかな食卓ができあがる。
「古代史が共感できなくてダメだった、な、レイ」
リオはミニトマトを口に放りながら僕に話をふる。
「うん、やっぱり昔の人の考えってよくわからないね」
僕も茶碗を持ちながら同意する。
「へぇ、ミキは?心理学だっけ?」
ユリは食べる手を進めながらミキに聞く。
「面白かったよ、まだそんなに深い内容はやってないけど」
ミキは上品に口を押さえながら返事をする。
「へぇ、今度受けてみようかな」
ユリは箸を宙で振りながらひとりごつ。
「お前はどうなんだよ、栄養学?」
リオがつまらなさそうにユリに聞くと、ユリの目が輝く。
「めっっっちゃ面白いよ、考えながら料理するとやっぱり違うね、美味しいもの作れる。」
ユリはそう言ってマシンガンのように話を進める。リオの振らなきゃ良かった、というげんなりした顔が印象的だった。
午後の授業が終わり、4人で帰宅する。
「じゃあね」なんて言って、自宅のドアを開ける。
部屋着に着替えて、テレビを見ながら夕食を食べる。お風呂に入って、ベッドに入る。
1日は争い無く終わり、また次の日がやってくる。
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