短編集

オレオレオ

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眼を開けると青い空と大きな門が見えた。
仰向けの身体を起こすと門の向こうに白が見えた。
3つの塔の上に国旗のような旗(遠くてがらを判別するのは難しい)をつけた、典型的な城。

なるほど、ゲームの世界に入ったな。
ご都合主義の如く、自分のパーソナルな情報は覚えていなかった。名前、出自、性別さえ思い出せない。しかし、ゲームの世界に入った、とわかるし自分はそういう世界がわかる人だったんだな、と思いを巡らせる。
身体をさぐると腰には鞘があり、剣が刺さっている。剣を抜くと太陽に刃がキラリと反射する。切れ味の良さそうな眩しさに眼を細める。
剣に反射して整った顔のイケメンが眼を細めて見つめていることに気づいた。
要するに、これが自分の顔ということである。
本能がうっすらと嫌悪感を覚え悲しくなる。イケメンに嫉妬するやつなのか俺は。
剣は見た目に比べ軽く、簡単に振り回すことができた。というか腕は筋肉隆々で引き締まっていた。
なんとなく過去の自分に予想がついてきたが、これ以上の考察をやめる。明るい過去はありそうにない。
服装は、長いGパンにTシャツだった。…世界観に対してやけに現実的というか、カジュアルというか、手抜きのゲーム感のある服装だった。

うおぉぉぉ

変な格好に戸惑っていると、城の方向から獣の様な咆哮が聞こえ、それを合図とする様に、急に辺りが人で溢れる。
「魔王が出た」「魔王に攻め入られた」「王様が危ない」「城はメチャクチャだ」
方々に口に出されているはずの言葉でも聞き取りづらくなく、クリアに耳に入る。聖徳太子になった気分だ。

ここまでお膳立てされれば、何をすればいいかは明らかだ。
剣を鞘に戻し、立ち上がる。心持ち身体が軽い。かなり早く走れそうだ。
城へは門をくぐって一直線だ。
走る、走る、走る。胸は痛くならない、息切れもしない、景色がぼやける。
城の前の階段もスピードを落とさず登る。城の扉は開いたままで、そのまま城の中に入った。
「ギャハハハ、きたか勇者」
城に響き渡る声、頭が5mはありそうな天井にたどり着きそうで、顔や手、足といった部位が自分と変わらないサイズで極端に大きい。
三角形の顔はおどろおどろしい紫色で目には何重もの輪があった。びっくり箱のピエロの様な風貌だ。
こいつが魔王か。
お互いに睨み、沈黙の時間も束の間、魔王はハエがいたかの様に腕を横に振り払う。
咄嗟に後ろに下がった、というか驚いて尻餅をついた。ブンッと鼻先に風邪を感じた。

「お前では勝てない」
魔王はそう言うと口を開けた。
何かがくる、避けなくては、立つ時間がない、どうする?剣はで防げないか?
あたふたする思考の中で唯一の武器を防具として選択する。
魔王の口から出たのはビームだった。ビームがどんな成分で構成されているねか、そんなのは知らないが、誰がどう見てもビームだった。
顔の前に突き立てた剣など、簡単に打ち砕き、ビームは身体全体を包んだ。

身体がバラバラになる。10cm、1cm、1㎜…。身体は破片となりカケラとなり、粒になり、消滅した。



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眼を開けると青い空と大きな門が見えた。
仰向けの身体を起こすと門の向こうに白が見えた。
3つの塔の上に国旗のような旗(遠くてがらを判別するのは難しい)をつけた、典型的な城。
魔王に消滅されたはずの身体を起こす。
腰の剣と筋肉隆々の身体、イケメンの顔。

え、待って、どういうこと?








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