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4th play
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「……くん!」
「んん……」
「こーだいくんっ!」
「んあ」
自分でも驚くくらい間抜けな声が出てしまった。チェアにもたれた体制でいつのまにか寝てしまっていたようだ。
航大は口元をごしごしと拭き、PC画面を見る。
「おはよう、航大くん」
そこにはいつもの笑顔で微笑むミザリがいた。先ほど負った傷も治っており、乱れた髪も汗で滲んだメイクも全て元通りになっていた。
「ミザリ……」
「航大くん」
「ミザリ、だいじょ」
「航大くんありがとーっ!!!」
「……へ」
ミザリは自分にケガを負わせた航大を責める訳でもなく、素直に何度も感謝の言葉を口にした。
『おめでとうございます
バトルモード ステージ1クリア』
そう表示されたポップアップにひとまず安堵の息を落とす。
よかった。もうミザリをあの狂犬と戦わせずに済む。
確認のためバトルモードのメニュー画面に飛ぶと、犬のアイコンにはしっかりと『クリア』の文字が刻まれていた。だが二つ目の人型アイコンはまだクリックできない仕様になっている。親愛メーターがまた一定数まで達しないと次のステージに進めない仕組みになっているのだろう。
「航大くん」
メニュー画面を全て閉じ、ミザリの顔を見る。
「なに?」
首を傾げるとミザリは航大の目を見てにっこりと笑った。ミザリのこの笑顔を見るのは久しぶりだった。
「航大くんがいてくれてよかった。これからも、上手くミザリを使ってね」
使って……
まるでこれからの展開も悲観しているようなそんな台詞だった。自分が痛みに耐える代わりに、なんとしてでもこのゲームをクリアして欲しい……航大にはこう聞こえて仕方がなかった。
「ミザリ」
「ん? なあに?」
「俺は……」
「俺は?」
「あ、えっと……」
言葉に詰まる。
俺は、君を守りたい。
これから先もずっと。
こんなクサイ台詞を言えるわけがなかった。
「いやなんでもない。汗かいたからシャワー浴びてちょっと休むよ」
「ん。分かった。ゆっくり休んで」
ミザリはひらひらと小さく手を振る。
「じゃあ」
ディスプレイの電源を落とすと、疲労と安堵でまた一気に眠気が襲ってきた。
航大はぼんやりする頭でふらふらと立ち上がると、そのままベッドに倒れ込んだ。そして重たくなる瞼をゆっくりと閉じる。
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