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第2章・新たな拠点
23.根拠
しおりを挟む「さてと、どうしたもんか……」
ギルドでの換金作業を終え、適当に夕食を済ませてから数時間ほどが経った。精神的にも疲れが溜まっていたのだろう、リアはベッドに入るとすぐに眠りについた。
俺とレイアスはリビングでこの後についてを話し合っている。
「このまま放っておくわけにもいかないだろうな。一度は手を差し伸べたのだ」
「それは分かってる。リアは何とかしてエルフの森に返してやりたい」
とはいえ、それだけじゃダメな気がする。今回の件に関しては俺たち人間側に非があるが、このままリアを森に返すだけじゃエルフと人間の関係は改善されない。せっかく同じ世界に住んでるんだから、お互いに協力できる部分は協力して共存していくべきだ。
「となればまずはリアの故郷の場所を聞き出さなければならないな」
「まあそうだが……話してくれると思うか?」
俺たちに多少なり心を開いてくれているのは分かる。だからといって、自分を攫った奴らと同じ種族の俺に家族や仲間が住む森の場所を教えてくれるだろうか。リアはまだ小さいがしっかり者だ。その辺の危険性は分かっているはず。
そんな俺の心配を、レイアスは軽く笑った。
「話してくれるさ。あの子はきっと、話してくれる」
「根拠はあるのか?」
「帰り道、3人で話した時にな。私と同じ目をしていたんだよ。森であなたと出会った時の私と同じ目だ」
森でレイアスと出会い、助けた時。レイアスは驚いたような目をした後、柔らかな笑顔を浮かべていた。今でも覚えている。
「リアはもう、自分がやるべきことに気付いている。心配はいらないさ」
レイアスの方こそ、まるであの時のようだった。この柔らかな笑顔を疑う気になんてなれない。
「お前が言うなら間違いない、か」
小さく笑うと、レイアスが向かいのソファから俺の隣へと寄り添ってきた。他人の体温というのはどうしてこうも安心するのだろう。
「大丈夫さ。2人ならきっと、なんだってできる」
その通りだ。
「どこへだって行ける」
俺は、お前がいてくれれば。
「あなたがいれば、私は……」
「レイアス……?」
言葉が途切れたレイアスの方を見ると、すうすうと気持ち良さそうに寝息を立てていた。
どうやら人間化の魔法は俺が思っている以上に魔力を消費するようだ。魔力が減ると眠くなるのは俺にも分かる。そこからそれ以上無理して魔力を使うと、頭痛や体調不良を引き起こす。俺が森でスティアの魔法を使った時のように、だ。
レイアスをお姫様抱っこする。俺の筋力がどのくらいになっているかは分からないが、人間の姿をしたレイアスはそれほど重くは感じなかった。幸せそうなその寝顔はなんとも愛おしい。
ーーーまずは資金集めだな。
エルフの森がどこにあるかにもよるが、何の備えも蓄えもない今の状態で向かうのは得策じゃない。せめて銀貨数十枚分は用意しておきたい。本音を言えば汎用性の高いポイントの方を集めておきたいが、入手条件がはっきりしないポイントよりも時間が無い今は依頼を受けて金を集めた方がいい。
寝室に入り、レイアスをそっとリアの横に寝かせる。2人して気持ち良さそうに眠る様子は、見ているこちらも思わず頬がゆるんでしまう。
ベッドに潜り込んで一緒に寝たいと言う自分を押さえ込みながら、軽く頬をパチンと叩く。
ーーーよし、やるか。
リビングに戻り、スマホからステータス画面を開く。ここ数日あまり確認をしていなかったし、ここからは少し無茶をすることになる可能性もある。やれることはやっておきたい。
ユウスケ・ツキシタ
レベル 無し
感情 ・冷静 ・安堵
健康状態 良好
割り振り可能スキルポイント 15
物理攻撃 110 (うち魔剣グラムの物理攻撃力 100)
魔法攻撃 42
物理防御 241
魔法防御 240
体力 30
精神力 17
魔力 120
スキル
神眼 レベル2
創造神の加護 レベル4
意志薄弱 レベル2
希望 レベル2
隠密行動 レベル2
星神の加護 レベル1
魔剣使い レベル1
「けっこう増えてるな……」
前にエンハ村で確認した時よりも、スキルがいくつか増えている。元々あったスキルもレベルが上がっているのもあるし、確認しておこう。
神眼レベル2
相手が自分に敵対しているかどうかを見極めることが出来る。また、自動発動スキルとして周囲から自身に殺気を含んだ敵意を向けられた場合察知することが出来る。
隠密行動レベル2
自動発動スキル。姿勢を低くする、もしくは敵対している相手が周りに複数いる場合に発動し、足音や気配を察知されにくくなる。
星神の加護レベル1
星の力を持った魔力をその身に宿すことで、神性魔法を使うことが出来るようになる。闇の力を持つ敵対生物から受けるダメージが減少する。
魔剣使いレベル1
魔剣、聖剣を使うことが出来るようになる。剣技スキルレベル5相当の剣技を使うことが出来るようになり、武器に流れる魔力のコントロール精度が少し上昇する。
新しいスキルの詳細はこんな感じだ。神眼レベル2の敵意察知や魔剣使いレベル1の剣技レベル5相当の剣技発揮はかなり使えそうだ。グラムの攻撃力も相当なものだ。
割り振れるポイントはあるが、不安なステータスも特にない。強いて言うならば精神力だが、下手にポイントを増やして自己中心的になっても困るからやめておこう。
その後俺は可能な限りエルフに関する情報を集めた。
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