黒い影(1)

うぐいす・マニー

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黒い影 4~6

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4.恐ろしい計画

機械というものは、恐ろしい面もあり、素晴らしい部分もある。でも、ミースト星の者たちは、恐ろしい使い方をしようとしていた。宇宙船ジュリエクター号がミースト星を出発して、約60年立ったある日。ガイストは、全員を集合室に集め、自分は、舞台の上においてある、煌びやかな椅子に座ると、演説を始めた。
「エー、皆ノ者。私ハ、マダミンナニ教エテイナイ計画ヲ50年前カラ練ッテイタノダ。今カラ発表スル。」会場がざわついた。
「静カニシロ!イラナイ会話ヲスルナ!話ヲ聞ケ!」流石に喋る人はいなかった。「ソノ計画トハ…人間ヲ支配スルコトダ!」
ウォォォーーー!と歓声があがる。しかし、一人だけ手を挙げている人がいた。
「ナンダ?ベンベト博士。」
「黒イ影様。コレハ質問デスガ、ナゼ、人間ヲ支配スルトイウオ考エヲ?」
「フン、マ、ヨク聞イテクレタ。人間ハ影ヲ奪ウト、魂ノ抜ケ殻ニナルノダ。ソレハ最近ノ研究デ分カッタ。ツマリ、影ヲ奪エバ、人間ヲ支配スルコトガデキル。チョウドヨイ家来トシテ使エルノダ!」
ウォオオオオオオオオオオ!とさっきよりも大きな歓声が響く。
「ヤッパリ、黒イ影様ハ、賢イ!素晴ラシイオ考エダ!」
みんなみんな、ガイストを褒めまくった。
椅子に座りながら、ガイストは、心の中で呟いた。
人間を支配してしまえば、もう、私たちが最強…、いや、私が宇宙一最強な生物となる。人間はただの影をかぶった生き物に過ぎない、と。
ガイストの計画は、見れば完璧に見えた。でも、地球には、神様という素晴らしい生き物もいたのだ。神様はいつだって、人間の見方をしているわけではない。数百年前の地球温暖化の時は、人間を見捨ててやろうと思った。でも、悪い人間だけではないのだ。海辺のゴミを拾う人、エコな活動をする団体を作る人。人間は一つとなって、地球温暖化を防いだ。神様からみれば、とても遅かったし、絶滅してしまった動物も数えきれない。でも、やっぱり人間を生み出したのは、神様なのだ。やっぱり、人間は好き。だから、今回も…。
地球温暖化問題は、人間の力でやることだ。でも、今回は違う。全然違う。人間だけじゃできない。神の力を借りないといけない。
だから、神様たちは動き出してきた。人間、他の動物…、そして地球を守るために。
「ソシテ、コレヲ開発シタノダ!」ガイストが作った機械は、紺色で、大きく、銃のような形をしていた。
「ソレデ倒スンデスカ?」
誰かが質問した。
「馬鹿ダナ!人間ハマァマァ強インダゾ!影サエ吸イ取レバ、殻ダ!ツマリ、影ヲ吸イ取ル機械ダ!」
ウオオオオオオオオオオオ!スバラシイ!
今までにない、素晴らしい歓声が響いた。

5.過去の出来事

「どんなことなんですか?天乃様。」鈴童が尋ねる。
天乃神は、ゆっくりと話始めた…。
「あれがあったのは、地球の昔の住民、ドングスたちのころの出来事だったわ…。ドングスは、人間よりも遥かに賢く、木の実や草などを食べていた。でも、ドングスは、人間より痩せていたわね。きっとそれは、肉などを食べてなかったからだと思うけど。ドングスは、メディアスという、大地の神を信じており、毎日、神に祈り、木の実や果実をお供えしていたの。宇宙は無限のパワーで溢れているという噂があるけど、あれは本当よ。始まりは、黒色の雲だったの。雨雲かなってみんな、私も思っていて、何にも疑問に思っていなかったけれど、日に日に大きくなって、行方不明者が出たり、建物がきれいさっぱりなくなったり…とかが続いて、不思議に思ったドングスのリーダー、が、黒い雲のような物体を調べてくるって言って、出かけてそれ以来、亜身之を見た人はいなかったの。後になって、予想したことだけど、きっとブラックホールみたいな物だったんじゃなかったて考えてる…。そんなこと、どうでもいいんだけどね。あのころの私は若かったし、なんていうか…、怖いもの知らずだったんのよね。自分が一番すごい神様だから、そんなの余裕でしょ、みたいな考えで…。でも、全然違うかった。私の予想は大外れ。ブラックホールのような雲は、とっても大きくなっていって、一番大きな山が吸い込まれてしまったの。そこには、草一つ生えていない、土の土地が広がっていた…。あれを見たとき、とっても怖くて。今までの人生で一番怖かったかもしれない。ブラックホールは、日に日に大きくなるだけじゃなくて、勢いも強くなっていた。雲を見つけて、2年後には、村がまるまる消えちゃった。人も。」
鈴童は、そんなこと知らなかったし、聞いたことなかった。
「天乃様…そ、そんなことが…。あったんですね…。」天乃神は、話を続ける。
「私たちは、どうにかしてあれを止めようと、必死に頑張ったけど、やっぱり、無理だった。地球は大きいけど、宇宙から見たら、砂粒なのよね。いや、砂粒より小さいかもしれない。膨大なパワーを持つ宇宙の何かに、勝てるわけがない。自分の弱さに打ちのめされた。ある日、不思議な人に出会った。ドングスたちじゃないのは、見てすぐに分かった。その人は、こう聞いてきたの。「影トハ?」カクカクした、変なしゃべり方だったけど、私はなぜかなにも疑問に思わず、答えたの。「魂です!」って。今思えば、とっても馬鹿らしいし、もしかしたら、宇宙人とか、ブラックホールを操っていた人かも知れない。でも、なぜかっ、なぜかっ、昔の私はなにも疑問に思わなかった。ブラックホールのようなものは、ついに、空が見えないほど、大きくなった…。でも、次の日、何もなかったように、ブラックホールのようなものは、消えていたの。」

6.見えない邪魔者

ガイストは、イライラしていた。誰か知らないが、何者かが邪魔をしようとしている。分かるのは、そこだけ。
オビバに、水晶玉を覗いてもらうと、嫌な未来が見えた。地球の神々が、自分たちの計画の邪魔をしようとしている!ガイストの怒りは普通ラインを超えていた。「ナゼ…ナゼ邪魔ヲスル?」ガイストが、一番嫌いなこと。それは、邪魔だ。自分の完璧なはずの計画に、穴が一つでも開いていると、怒りが積もる。それに、最近は研究も上手くいかない。はやく、寿命伸ばしの薬を作ってもらわないと。ゴビード人の寿命は、平均1000年だ。ガイスト自身も、年を取ってきてしまった。昔より、歩くのも遅くなり、生気も失ってきてしまったような気がする。今、学者たちは寿命伸ばしの薬の研究をしている。今のままだと、ガイストが生きているうちに地球にたどり着くことは無理そうだ。でも、その薬さえできれば!永遠の命は難しいが、何度も処方すれば、ほぼ永遠に近いだろう。なのに。薬の開発も、機械の開発も、すべてうまくいっていない。わざわざ失敗のレシピを作っているような気分だ。「本当ニ。最近ノ学者ドモハ。」ガイストは、長い廊下をわたっていた。窓からは、沢山の星が見える。青、赤、黄色、緑、黒、灰色。宇宙日記には、こう書いてあった。「地球ハ他ノ星ト比ベモノニナラナイホド青ク美シイ。」と書いてあった。
ガイストは、まだ見ぬに、少し期待していた。自分たちの星より強い星は、どんな星なのだろうか。でも、すぐに潰してやる。私が一番なのだ。自分より強いヤツは認めない。許さない。でも、消してしまえば、私が最強になる。ガイストは、知らない。宇宙が広いことも。
とある部屋では、親子が話していた。ゴビード人のカクカクした喋り方とは違い、なめらかで、美しい声だった。「お父さん。なぜ僕たちは影を奪うの?なぜ、必要なの?」「だまれ!そんなことばれて生きて帰れると思うのか?私たちのご先祖様は、隠れて、かくして生きてきたんだ。でも、地球に帰れるんだ。よくわからないけど、懐かしい気がするよ。とても」「お父さん!質問に答えて!なぜ僕たちは影を奪うの?」「分かった。でも僕たちはやめてくれ。私たちとは違うんだ。あの人たちにしてくれ。」「なんで?」「それも話すよ。実はあの人たちと私とお前は違うんだ。私たちはれきっとした人間なんだよ。。とある事件で、私たちはミースト星に行くことになってしまったんだよ。でも、私は、なぜか分からないけど、地球に帰りたいっていつも願ってるんだ。いつもは、ガイストに従っているけど、心の中では、いっつも、なぜこんなことをするのか、気になってるんだ。別に初めは地球に帰ろうなんて思ったことはなかったさ。でも、もう昔とは違うんだよ!昔はもっといい星だったんだけどな、変わっちまったんだよ。ミースト星は。」
「どんなのだったの?お父さん。」お父さんは深いため息をついた。
「みんな、今みたいに研究ばっかりじゃなくて、周りの人を大切にしていたよ…。お金持ちな人は、貧乏な人に食べ物をやり、貧しくてご飯が買えない子には、魚を恵んであげたりしていた。でも、今は違う。自分さえ、よかったらいい、ってみんな考えているんだ。別にお父さんは地球に期待していない。でも、もし、ミースト星よりもいい星なら、そこに住んでも…。」
「僕、よく分からないけど…。ミースト星変わっちゃたんだね。」
「でも、このことは絶対誰にも言うな。誰も信用したらだめだ。」

「分かったお父さん。僕、ヒミツは守るよ。」
「約束だ。」
お父さん―が、自分の部屋を出て、作業室にむかっているとき。
ガイストに声をかけられた。「ドウシマシタ?黒イ影様」鮠都は、いつもとは違い、カクカクした言葉で喋った。「ハヤト。オ前ハチャント言ワレタ通リニスルシ、期限モ守ル。私ハオ前ヲ少シ信用シテイル。優秀ナ君ニ頼ミタイコトガアル。デキルカナ?」鮠都にとって、それは一世一代の大チャンスだった。返事は決まっていた。「モチロンデス。ヤリマ、ジャナクテヤラセテクダサイ。」
「頼ンダゾ。ハヤト。」ガイストは去っていった。
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